
グラフィックデザイナーの田中義久(1980年生まれ)と彫刻家の飯田竜太(1981年生まれ)からなるアーティストデュオ「Nerhol(ネルホル)」の個展『Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness』が、7月12日(土)~10月13日(月・祝)、埼玉県立近代美術館で開催される。
2007年に結成されたNerholは、昨年、千葉市美術館で開催された個展が高い評価を受け、令和6年度芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞するなど、その活動に注目が集まっている。

Nerhol《Piano sonata 01》2025年 ©Nerhol Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery
連続撮影した写真の束を彫り刻むという手法を構築し、写真と彫刻、平面と立体の境界を超えるような表現をつくり出してきたNerhol。造形のみならず、自然環境と人間社会、見えるものと見えないものなど、複数の観点から制作を通じて思考を深めてきた。
近年では、街路樹や珪化木(地中で⾧い時間をかけて珪酸が浸透し石化した植物)、ストーンペーパー(石灰石を原料とする高強度の紙)など、さまざまな素材にも挑戦。本展ではそれぞれの素材を新たなアプローチによって作品化する。作品同士が素材の違いを超えて呼応する展示構成も見どころだ。

Nerhol《connecticut》2025年 ©Nerhol Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery
また、国内外を旅し、あるいは身近な場所で、その場所に固有のものをリサーチするうちに、外から移動して来て形を変えて根づいているものにも着目。帰化植物(本来の自生地から人間の活動によって他の地域へ運ばれ、野生化した植物)を主要なモチーフとする中で、今回はハナミズキを取り上げている。その歴史的背景や土地との関係へのリサーチをふまえ、新たな手法で大型インスタレーションを制作する。
なお、展覧会タイトルの『種蒔きと烏 Misreading Righteousness』とは、撒かれた種がその場で育つことと、掘り返されて運ばれどこか別の地で芽吹くこと、どちらもある面では正しく目的を遂げていると同時に、見方を変えれば失敗や過誤にもなるという両義性を表す。複層的で複雑な世界をそのまま掬い上げ、問いを投げかける作品群。展示空間の中でそれらを体験した後は、日常の見え方にもささやかな変化が訪れるだろう。

Nerhol《Canvas (Oasa)》2025年 ©Nerhol Courtesy of Yutaka Kikutake Gallery
<開催概要>
『Nerhol 種蒔きと烏 Misreading Righteousness』
会期:2025年7月12日(土)~10月13日(月・祝)
会場:埼玉県立近代美術館
時間:10:00~17:30(展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜(7月21日、8月11日、9月15日、10月13日は開館)
料金:一般1,400円、大高1,120円
公式サイト: https://pref.spec.ed.jp/momas/2025nerhol