
BunkamuraとK-BALLET TOKYOによるダンスの深層を探るプロジェクト「K-BALLET Opto」の第4弾公演『踊る。遠野物語』が、2025年12月26日(金) から28日(日) まで東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)で上演される。
2022年にBunkamuraとK-BALLET TOKYOが立ち上げた「K-BALLET Opto」は、芸術監督・熊川哲也のもと、現代社会にひそむ「語られざる物語」に身体表現で向き合うことを目指している。第2弾ではプラスチック汚染をテーマにした『プラスチック』を上演し、The Guardian、SCMP、NHK WORLDなどグローバルメディアでも取り上げられた。第3弾『シンデレラの家』では、童話『シンデレラ』を現代のヤングケアラーの視点から読み替え、詩人・最果タヒの詩を取り入れるなど、物語に新たな光を当てている。
今回上演される『踊る。遠野物語』は、日本の独自の美学で表現してきた森山開次の集大成となる作品。特攻隊員とその許嫁の悲恋を軸に、“もうひとつの『遠野物語』”が誕生する。『遠野物語』は、柳田國男が1910年に発表した怪異譚。柳田の生誕150年、戦後80年の節目に、明治の三陸大津波と昭和の戦争、平成の大震災と時代を超えて響き合う「死者との対話」というテーマを、特攻隊員の魂の彷徨いを通して描き出すという。
森山自身も踊り手として参加し、舞踏界の生ける伝説・麿赤兒と大駱駝艦の精鋭たちが、「遠野」の山の異形として幻想世界に命を吹き込む。さらに寺島しのぶを母に、フランス人アートディレクターを父に持つ12歳の歌舞伎界の新星・尾上眞秀が、この世とあの世のあいだに佇む神秘的な少年を演じる。石橋奨也、大久保沙耶をはじめとするK-BALLET TOKYOのトップダンサーたちと共に、バレエ・舞踏・歌舞伎の身体が交錯する競演となる。
物語は1945年8月、戦闘機が墜落した「遠野」を舞台に展開される。「ただ無性にあなたに会いたい」という特攻隊員の遺書との出会いからこの物語は始まる。切ない気持ちを抑えながらも許嫁の幸せを祈る遺書の末尾には、彼のこらえきれない本音が綴られていた。青年は神隠しにあった少年に導かれながら、この世とあの世が交わる幻影の地である「遠野」を彷徨い、オシラサマ、雪女、山姥に出会う過程で、かつて許嫁と歩いた三陸の浜にたどり着く。
『踊る。遠野物語』は東京公演を皮切りに、2026年1月には山形・秋田・青森・岩手の4カ所を巡る東北ツアーも予定されている。また、絵本作家・森洋子による本公演オリジナルの紙芝居イラストも制作され、麿による全編朗読動画が近日公開される予定だ。
【プロダクションノート】
この作品の着想は、一通の特攻隊員の遺書との出会いから始まった。知覧から出撃した実在の東北出身の特攻隊員が許嫁に宛てた「ただ無性にあなたに会いたい」という言葉。その痛切な想いに触れたとき、私たちは『遠野物語』第99話に描かれる物語との不思議な共鳴を感じた。三陸大津波で亡くなった妻の幽霊と浜辺で再会する男の物語が、特攻隊員の想いと重なり合ったのである。
『遠野物語』は明治43年(1910年)、柳田國男が遠野の佐々木喜善から聞き書きし編纂した119編の怪異譚である。
柳田のこの言葉は、刊行から100年後に起きた東日本大震災によって現実となった。津波にさらわれた家族を求め、被災地では幽霊を探す人々の姿があったという。幽霊でもいいから、最後にもう一度会いたい──その切実な願いは、100年前浜辺で妻をみた男のそれと同じだった。しかし現代の私たちは、そうした喪失と向き合いながら、亡き人がふとそこにいるという感覚を手放してしまっている。
「あなたに会いたい」という特攻隊員の切実な願いと、死者に会いたいと願う震災被災者の姿。柳田國男生誕150年・戦後80年という節目に、明治の三陸大津波と昭和の戦争、そして平成の大震災と時代を超えて響き合う「死者との対話」というテーマを、特攻隊員の魂の彷徨いを通して描き出す。遠野の非理性的で圧倒的な呪力により青年が鎮魂へと向かう物語で、観客の眼前に我々がこの100年でなにを失ったか、その遠い過去に忘却したはずの世界を呼び起こすことをこころみたい……。
<公演情報>
Orchardシリーズ
K-BALLET Opto『踊る。
In association with PwC Japanグループ
演出・振付・構成:森山開次
企画:高野泰樹
舞台美術・衣裳:眞田岳彦
音楽監督・作曲・尺八演奏:中村明一
作曲:吉田潔、アーヴィッド・オルソン
箏演奏:磯貝真紀
歌:菊池マセ
宣伝美術:横尾忠則(ポスタービジュアル)、森洋子
出演:石橋奨也、大久保沙耶、他K-BALLET TOKYO、麿赤兒、尾上眞秀、田中陸奥子、森山開次
村松卓矢(大駱駝艦)、松田篤史(大駱駝艦)、小田直哉(大駱駝艦)、奥山ばらば、水島晃太郎、小川莉伯
【東京公演】(全5公演)
2025年12月26日(金)~28日(日)
会場:東京・東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
【東北ツアー】
2026年1月9日(金) 18:30開演
会場:山形・荘銀タクト鶴岡(鶴岡市文化会館) 大ホール
2026年1月12日(月・祝) 15:00開演
会場:秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
2026年1月15日(木) 18:30開演
会場:青森・SG GROUPホールはちのへ(八戸市公会堂) 大ホール
2026年1月18日(日) 15:00開演
会場:岩手・北上市文化交流センターさくらホールfeat.ツガワ 大ホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2516012(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2516012&afid=P66)
公式サイト:
https://www.bunkamura.co.jp/orchard/lineup/25_opto_tohnomonogatari/