ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」
『NERD SAVE THE WORLD TOUR 2025』渋谷CLUB QUATTRO公演より Photo:ニイミココロ

Text:ヤコウリュウジ Photo:ニイミココロ



2月26日、新潟発のロックバンド、ザ・シスターズハイが『NERD SAVE THE WORLD TOUR 2025』最終公演を渋谷CLUB QUATTROにて開催した。1月10日の新潟CLUB RIVERSTを皮切りにスタートした本ツアーは挫・人間やトップシークレットマンといったゲストを招いた対バン形式で5本行い、この最終公演はバンド史上最大規模かつ思い入れのある会場でのワンマン。

本人たちの意気込みも相当なモノだったが、同じような気持ちを抱えたファンも大集結し、今現在の勢いを物語るような熱狂に留まらず、バンドとしてネクストステージへ踏み出す姿を見せつけてくれた。



異空間へ誘うファンタジックなSEを背に渡邉九歳(vo/g)、まさやんぐ(g)、カイ(b)、椿(ds)が登場し、割れんばかりの大歓声が降り注ぐ。熱気は申し分なく、そのままの流れでオープニングナンバーへ入るかと思いきや、「やれんのかー!」と九歳が大声を上げ、まさやんぐとカイもフロアへ飛び込まんばかりに前のめり。それを後押しするように椿も力いっぱいスティックを振り下ろし、ただならぬムードが漂っていく。胸に期するモノがあるワンマン、はみ出すぐらいがちょうどいいのだ。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

観客もより期待感をみなぎらせたところ、鳴らされたのが「pink pink vibration」。高揚感たっぷりのギターリフから始まるキラーチューンであり、幕開けにはもってこいの1曲。会場全体からリズムに合わせてクラップも起こり、そのリアクションを受け止めたのか、陶酔して歌い上げる九歳。まさやんぐの見せつけるようなギターソロもいい。最高のスタートダッシュを決めていく。



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渡邉九歳(vo/g)

改めて「オレたちはめちゃくちゃやる気だぞ!」と九歳が絶叫し、さらにギアを上げたのが軽快なポップチューン「天使のごめんね」とキメもキレもマシマシだった「Nちゃんのお願い」。まだまだ序盤だが、予定調和なんてクソ喰らえと、まさやんぐはギターを弾き倒し、カイと椿のリズム隊も強靭なグルーヴを生み出し、そのど真ん中で九歳が感情むき出しの歌声を飛ばしていく。

お互いに気なんて遣わない。それぞれが振り切った先で絡み合うからこそ、目指す極上のアンサンブルがあるのだ。



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まさやんぐ(g)

そこから信じる強さを持てるようにと「ヤりたい半分」、そこから余韻をつなげるようにセンチメンタルな愛を歌い、ビッグコーラスも印象的な「スーパームーン」、怪しげな歌声とギターフレーズに彩られた「リ・ルミナスのじゅもん」とザ・シスターズハイの中では比較的激しさを押さえたナンバーを連投。だが、ハリのあるリズムや歌のアプローチの多彩さで、決して落ち着いた感じにはならないのがザ・シスターズハイの強みに違いない。



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椿(ds)

初めての渋谷CLUB QUATRO、トイレにタッチセンターが備えつけられていることに驚いたと九歳が笑いを誘いつつ、MC中から奏でられていたベースに折り重なり「eんパす・iん・tHe・ルーむ」をプレイ。幻想的な空気と小気味よいリズムが合わさり、力強いサビでグワッと持ち上げ、ギターのフィードバックノイズから今日は特別な日なんだ、と「一生に一度、嘘みたいになろう」へ。スタンダートに構築されたロックナンバーとも言えるが、九歳の歌がありきたりな仕上がりにはさせない。大汗をかきながら歌声を使い分け、グレーのロンTがより色濃く染まっていく姿もまた良かった。



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カイ(b)

厳かな歌いだしから一気にバンドサウンドへ覚醒したのが「nerd nerd serenade」。ザ・シスターズハイらしい煌きがあり、各フレーズがぶつかり合うように交錯し高みへと登っていく様はこの4人だからこそ生み出せる真骨頂とも言えるだろう。九歳が「まだまだやれるでしょ?」と観客を煽り、空間に舞い上がるようなまさやんぐのフレーズで始めったのが激走必至な「真里」だった。サビではぶっ壊れたように<真里真里真里真里真里真里真里真里真里真里真里>と連呼し、観客も拳をおもいっきり突き上げる。

メンバーもいい意味で落ち着きがない。湧き上がるエネルギーをそのままぶちまけ、ステージとフロア、多少とも距離はあるが感覚としてはゼロ距離で言葉と音が飛び込んでくる。その熱をさらに上昇させるように投下したのがダイナミズムに溢れた「超理想暴論」という流れも頼もしかった。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

そして、ひと呼吸おいて、乾きを潤すように水をがぶ飲みし、息を切らせながら九歳が胸の内を語っていく。「渋谷CLUB QUATTRO、ずっと出たくて。僕ら、新潟のバンドで先輩にMy Hair is Badがいるんですけど、12年前ぐらい、My Hair is Badが初めてQUATTROでやった映像をめちゃくちゃ何回も観てて。いいな、いつかはそうなれたらいいな……でも、無理か、と思いながら(バンドを)やってて。2年ぐらい前に上京してきて、QUATTROで挫・人間を観て、同じようにいいな、オレにはできるんだろうか、と。ずっとそう思ってたので、みなさんのおかげでひとつ夢を叶えることができました。本当にありがとうございます」とこの日に懸ける想いを伝え、そこから続けてバンドやる理由がわかったんだ、と話したことはこのライブにおけるハイライトのひとつと言っていいだろう。



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「今回のツアーで観に来てくれる人たちに何がしたいんだろう、とずっと考えてて……さっき、わかりました。オレ、みなさんのことを肯定する気も否定する気もないんですよ。

でも、何か頑張りたいこと、大事にしたいこと、ある人もいると思う。もし、そう思うならオレは背中を押してあげたい。そういうモノに縛られて、その場から逃げてしまいたいなら、手を差し伸べて引っ張ってあげたい。オレがロックバンドをやりたい理由、ずっとそれだったな、と。心から抱きしめたいと思って、ここに立っております」――渡邉九歳



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

決意と心情を吐露した後、奏でられたのが苦悩をオブラートに包むことなく綴ったバラード「C#memorial」だった。九歳の心の奥底にある、他人が触れていいのかどうか迷ってしまうほどの言葉が並び、歌声も切ない。あのMCの後だからこそ、掠れた声も余計に胸を打つ。グッと会場が引き締まった瞬間にもなった。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

「ライブの醍醐味は、オレもみんなも大人になっていって、小さいころにあったと思うんですよ、なりたかったモノとか。でも、現実があって。どんどん変わっていってしまう、忘れてしまいそうになるでしょ。オレが音楽を続けてるのは、あのころの気持ちなんて憶えてないのに、それでも忘れたくなくて。

みんなもそうなんじゃないかと信じてます」と九歳が口にし、繊細に奏でていったのが在りし日に思いを馳せる「聞こえる」。スローナンバー調に始めながらガツンと踏み込む衝撃が秀逸な曲だ。このドラマティックな切り替えもザ・シスターズハイならではと言えるであろう。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

九歳が「伝えたかったこと、勢い余ってさっき言っちゃったんで」と自嘲しつつ、「今、決めました。渋谷CLUB QUATTROでワンマンできたこと、めちゃくちゃうれしいけど、ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい。死ぬ気で続けるので、死ぬ気でついてきてください」と口にし、アカペラ調から突如とし激しいバンドサウンドへ移行する「愛の無能戦士」を投下。<“世界を変える”を信じて>という歌詞を<“世界を変える”を信じろ>と語気を強めて九歳が歌い、まさやんぐもギターを振り回し、カイも上半身をのけぞらせフレーズを弾き、椿にいたってはヘッドを突き破るんじゃないかと思う勢いで爆発的なショットを繰り返す。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

ラストスパートに入ったザ・シスターズハイ。あとは踏み込んでぶっ倒れるまでだ、と言わんばかりに「メシアになった」を暴発気味にドロップし、本編ラストとして「絶望MAQUIA」を盛大に鳴らしていく。ワンマンで、自分たちのことを愛してくれる人たちだけの空間をイメージして作ったというこの曲。ステージとフロアが一体となり、どこまでも広がる歓喜の輪。素晴らしい景色だったと断言したい。



鳴り止まなぬ歓声で再びステージに姿を現し、「ダメでもともと。オレたちと同じように挑戦して欲しい。この距離感で応援するから」と九歳が観客へ語りかけてから「才能」をプレイした後、盛大に「タンジェリン」と「シスター」を放っていく。再び最高潮を迎えたフロアからは大合唱も起こり、まさしく大団円かと思いきや、再びステージに呼び戻されたザ・シスターズハイはダメ押しのように「絶望MAQUIA」をラストナンバーとしてセレクト。本日2回目となったが、それだけの気持ちがある。痛快かつ極上のフィナーレとなった。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

アンコールで発表されたように、ここでひと休みすることなく、6月からは兄弟のような関係を作りたいバンドをゲストとして招く自主企画ツアー『N曜日の姉妹 2025』を開催。すでに大型野外フェスにも出演を果たし、ライブハウスにとどまらない熱狂を生み出しているはいるが、今年はさらなる活躍、そして進化が期待されることは間違いなく、その動向にもぜひ注目してほしい。



ザ・シスターズハイ、リリースツアー最終公演レポート「ここにいる全員とすげえバカみたいにロマンティックな世界をもっと観たい」

<公演情報>
ザ・シスターズハイ『NERD SAVE THE WORLD TOUR 2025』



2月26日 東京・渋谷CLUB QUATTRO



【セットリスト】
01. pink pink vibration
02. 天使のごめんね
03. Nちゃんのお願い
04. ヤりたい半分
05. スーパームーン
06. リ・ルミナスのじゅもん
07. eんパす・iん・tHe・ルーむ
08. 一生に一度、嘘みたいになろう
09. nerd nerd serenade
10. 真里
11. 超理想暴論
12. C♯memorial
13. 聞こえる
14. 愛の無能戦士
15. メシアになった
16. 絶望MAQUIA



■en.1
17. 才能
18. タンジェリン
19. シスター



■en.2
20. 絶望MAQUIA



<ツアー情報>
『N曜日の姉妹 2025』



6月13日(金) 宮城・仙台FLYING SON
OPEN 18:30/START 19:00
出演: ザ・シスターズハイ ほか



6月25日(水) 広島・広島ALMIGHTY
OPEN 18:30/START 19:00
出演: ザ・シスターズハイ ほか



6月26日(木) 兵庫・神戸太陽と虎
OPEN 18:30/START 19:00
出演: ザ・シスターズハイ ほか



7月4日(金) 愛知・名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
OPEN 18:30/START 19:00
出演: ザ・シスターズハイ ほか



7月10日(木) 東京・新代田FEVER
OPEN 18:30/START 19:00
出演: ザ・シスターズハイ ほか



【チケット情報】
前売:3,800円(税込/ドリンク代別)



ザ・シスターズハイ オフィシャルサイト
https://thesistershigh.ryzm.jp/





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