ROTH BART BARON 塩塚モエカ(羊文学)、Salyuら4組をゲストに迎え、過去最大の動員数を記録した『BEAR NIGHT 5』をレポート
『ROTH BART BARON

Text:金子厚武 Photo:Daiki Miura



8月4日、ROTH BART BARON(ロット・バルト・バロン)がLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)で『BEAR NIGHT 5』を開催した。『BEAR NIGHT』は三船雅也いわく「手作りのフェスティバル」であり、このイベントだからこその大編成、尊敬するミュージシャンやゲストボーカリストとの共演が見所。

また、会場ではフォトブース、スタンプコーナー、フリーマーケット、「くまみくじ」といった多数の催しが行われ、この企画・運営にバンドのコミュニティ「PALACE」のボランティアチームが積極的に関わっていることも大きな特徴だ。今も大規模な再開発が進む渋谷の一画に突如現れたお祭り空間、その一部始終をレポートする。



ROTH BART BARON 塩塚モエカ(羊文学)、Salyuら4組をゲストに迎え、過去最大の動員数を記録した『BEAR NIGHT 5』をレポート

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開演前には『BEAR NIGHT』3回目の出演となる水野蒼生のクラシックDJがフロアを彩り、開演時刻にロットのメンバーがステージに登場すると、ライブは「MΣ」からスタート。この日のロットはボーカル&ギターの三船、キーボードの西池達也、ギターの西田修大、トランペットの竹内悠馬、トロンボーンの大田垣正信、トロンボーン&ギターのKOTETSU、キーボードのRyu(Ryu Matsuyama)、ベースのザック・クロッサル、ドラムの工藤明という総勢9名で、「MΣ」では『BEAR NIGHT』の幕開けにふさわしい祝祭感のある音が鳴らされ、西田がエネルギッシュなギターソロで早速見せ場を作り出した。



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音源ではタイのSafeplanetとコラボレーションをしている「BLOW」では手拍子が起き、ザックのベースラインが耳に残る「Ghost Hunt(Tunnel)」では体を揺らしたりと、ロットのライブはオーディエンスも自由にその場を楽しんでいることが伝わってくる。パーカッションが打ち鳴らされ、サンバ的なニュアンスもある「TAICO SONG」、青い照明とともに、文字通り清涼感のある風を場内に吹き込んだ「KAZE」あたりは、「夏に聴きたいロット・ナンバー」といった感じだし、〈よく晴れた夏の日に〉〈今日こそが 全てなんだ〉〈お祭りが終わってしまうのを 止めてやろう〉と歌う「Innocence」も『BEAR NIGHT』にピッタリで、この日ならではのセットリストも実によく考えられている。



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デザインされた美しい照明の中で「ひかりの螺旋」をしっとり歌い終えると、ここからはゲストコーナー。最初にアコギを持って登場したのは崎山蒼志で、ロットの代表曲のひとつである「極彩| IGL(S)」を三船とともに歌唱。楽しそうに飛び跳ねながらアコギをかき鳴らす崎山の姿はなんとも痛快だ。さらにはアニメ「呪術廻戦」のテーマ曲として、崎山の名前を海外にも広げることに繋がった「燈」をロット・バージョンで披露。ストリングスとトラップビートを組み合わせたオリジナルのアレンジもロットっぽいのだが、温かみのあるホーンを交えた生演奏とともに歌われる「燈」は原曲に新たな視点を加え、伸びやかな崎山の歌声も素晴らしかった。



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続いて2月に行われたHedigan’sのツアーでも共演を果たしているYONCEが登場し、自ら「歌いたい」と選曲したという「ATOM」を披露。

YONCEの声が持つスケール感はロットの楽曲が持つ雄大さとバッチリはまっていて、激しく体を揺らしながら音に乗るその姿はやはり絵になる。MCでは、YONCEがイギリス土産にテディベアを買ってきたという微笑ましいエピソードも披露されつつ、今度はHedigan'sの「論理はロンリー」を演奏。三船の歌い出しから始まったこの曲は、インディフォークな曲調からしてまるでロットの曲のようであり、両者の好相性を強く感じさせた。



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3組目のゲストは羊文学の塩塚モエカ。ロットとはもともとレーベルの先輩後輩にあたり、三船が手がけた「BLUE SOULS」のSTUTSによるリミックスで塩塚が歌唱していたり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『プラネットフォークス』に三船と塩塚がそれぞれ参加していたりと、何かと縁のある組み合わせだが、この日披露された羊文学の人気曲「1999」のロット・バージョンは抜群に素晴らしかった。そもそもはクリスマスソングなので、「真夏に聴く『1999』ってどうなのかな?」とも思ったが、イントロの三船によるギターがスレイベルのようだし、ホーンが加わることでパーティ感が増し、ゴスペルコーラスも大編成ならでは。アンプの上に置かれたYONCE土産のテディベアを指差しながら、〈テディベアとお話できそうだよ〉と歌ったシーンなんて、ちょっとしたミラクルだ。さらには、「作ってて、塩塚モエカの声が浮かんでしまった」という新曲「Crystal」が初披露され、この曲での塩塚のディーバ感も非常に印象的だった。



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最後のゲストは2021年にコットンクラブで行われた『HOWL SESSION』以来の共演となるSalyu。合唱団にいたことがボーカリストとしてのルーツになっていて、「声」そのものに強烈な記名性を持つSalyuもまたロットとの相性は抜群で、「HERO」での力強い歌唱はそれを改めて実証するもの。さらにはタイトルからしてどこかロットっぽい『Android & Human Being』の収録曲である「THE RAIN」が、力強く打ち鳴らされる手拍子とバスドラとともに高揚感たっぷりのアレンジで披露される。その歌声と演奏からは時代がどんなに変化しても変わることのない、人間の持つプリミティブなパワーを強く感じさせた。



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再び9人での編成に戻ると、昨年発表の最新作『8』からシンセポップな「Closer」、イントロのRyuによるプリズマイザーを用いた歌唱、曲中のKOTETSUによるソウルフルな歌唱と、いくつもの声が混ざり合いながら世界を作り上げた「赤と青」、曲タイトルの繋がりにニヤリとさせられる「BLUE SOULS」と続き、ラストはこちらも『8』から、ダンサブルなモード全開の「MOON JUMPER」で、この日一番の一体感を作り出す。様々なゲストを招き、様々な年代の曲を披露しながら、最後はしっかり現在のモードで本編を締め括ったのもとても良かった。



ROTH BART BARON 塩塚モエカ(羊文学)、Salyuら4組をゲストに迎え、過去最大の動員数を記録した『BEAR NIGHT 5』をレポート

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華やかだった本編に対し、アンコールではアンビエントなサウンドとリリカルな歌世界で魅了した「けもののなまえ」、ジワジワと熱を帯びていく演奏に心が揺さぶられた「陽炎」と、没入感たっぷりの楽曲が演奏されたことも、バンドの懐の広さを改めて感じさせた。MCではこの日が『BEAR NIGHT』過去最大の動員となったこと、レコードデビューから10周年を記念したツアーが開催されることが発表され、バンドの状態の良さを伝えるとともに、オーディエンスに感謝を伝えると、この日最後に演奏されたのは「鳳と凰」。明るくなった場内に三船とオーディエンスの歌声が響き渡るその光景は、「自分が自分でいることを許し、解放できる本当の居場所」という『BEAR NIGHT』の理念を見事に体現していた。



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<公演情報>
『ROTH BART BARON "10th ANNIVERSARY”~BEAR NIGHT 5~』



2024年8月4日(日) LINE CUBE SHIBUYA
出演:ROTH BART BARON/塩塚モエカ(羊文学)/Salyu/崎山蒼志/YONCE(Suchmos・Hedigan's)



セットリスト

01. MΣ
02. BLOW
03. Ghost Hunt
04. TAICO SONG
05. KAZE
06. Innocence
07. ひかりの螺旋
08. 極彩| IGL(S)(feat.崎山蒼志)
09. 燈(feat.崎山蒼志)
10. ATOM(feat.YONCE)
11. 論理はロンリー(feat.YONCE)
12. 1999(feat.塩塚モエカ)
13. Crystal(feat.塩塚モエカ)
14. THE RAIN(feat. Salyu)
15. HERO(feat. Salyu)
16. Closer
17. 赤と青
18. BLUE SOULS
19. MOON JUMPER
EN1. けもののなまえ
EN2. 陽炎
EN3. 鳳と凰



<ライブ情報>
『ROTH BART BARON 10th Anv TOUR 2024-2025 / Ice Age : Melt and Blooms』



■2024年
11月16日(土) 北海道・モエレ沼公園"ガラスのピラミッド ~with Strings~
11月17日(日) 北海道・モエレ沼公園"ガラスのピラミッド ~with Strings~
11月21日(木) 東京・COTTON CLUB ~with Strings~
12月7日(土) 京都・ロームシアター・ノースホール ~バンド編成~
12月8日(日) 石川・RED SUN ~バンド編成・Magical Colors Night~ Guest Act : noid
12月14日(土) 静岡・space-K ~バンド編成~
12月22日(日) 宮城・retro Back Page ~バンド編成~



■2025年
2月8日(土) 愛知・THE BOTTOM LINE ~バンド編成~
2月9日(日) 岡山・YEBISU YA PRO ~バンド編成~
2月22日(土) 鹿児島・Caparvo Hall ~バンド編成~
2月23日(日) 福岡・BEAT STATION ~バンド編成~
2月24日(月・祝) 熊本・早川倉庫 ~バンド編成~
2月28日(金) 北海道・cube garden ~バンド編成~
3月1日(土) 北海道・モエレ沼公園"ガラスのピラミッド" ~バンド編成~
3月2日(日) 北海道・モエレ沼公園"ガラスのピラミッド" ~三船雅也 SOLO~
3月15日(土) 大阪・BIGCAT ~バンド編成~
3月22日(土) 東京・Spotify O-EAST ~バンド編成・TOUR FINAL~



【チケット情報】
■オフィシャル先行受付:8月19日(月) 23:59まで
https://w.pia.jp/t/rothbartbaron(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2453162&afid=P66)



ROTH BART BARON公式サイト:
https://www.rothbartbaron.com/



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