今江大地×定本楓馬が語る、舞台『いつかアイツに会いに行く』──余命宣告から始まる疾走コメディ
今江大地(右)と定本楓馬(左)

舞台『呪術廻戦』や『パタリロ!』などの話題の舞台を手掛ける小林顕作の演出・音楽・原案によるオリジナル舞台で、今江大地を主演に迎えた『いつかアイツに会いに行く』が10月に上演される。恋人にフラれた直後に余命宣告を受けた男が「死ぬまでにシルヴェスター・スタローンに会いたい!」という夢を抱き、奔走するさまを描くコメディ。

主人公の荒川襷(たすき)を演じる今江とその親友の八千草則人を演じる定本楓馬が本作への意気込みを語ってくれた。



疾走感あふれる舞台。課題は走りながら歌う場面も!?

――ご自身の役どころについて教えてください。



今江 最初は無気力で「寝ていたい」という感じで、しかも彼女にもフラれてしまい、病気も見つかって「もう人生の終わりだ…」という感じなんですけど、いろんな人と出会って「夢に向かって頑張っていこう」となるキャラクターです。あるきっかけで突っ走っちゃう、単純なんだと思います(笑)。



定本 僕は襷の親友という役どころで、親がやっている床屋の跡継ぎなんですけど、戯曲を読んだ限りでは、人のことを大切にしている男ですね。



今江 自分の感情を抑えて他人のことを優先しちゃうところがあるキャラクターだよね?



定本 自分を犠牲にしてでも他人の幸せを願える自己犠牲の気持ちが強い、友達とか大切な人といるのが幸せという人なんだろうなと思います。



今江 (襷に)喝を入れてくれる人だよね。お互いに気を遣っていた部分もあったけど、いろんなことがあって、やっと本音で話せてぶつかり合って成長していくような感じです。



――脚本を読まれて、物語についてはどのような印象を持ちましたか?



今江 「疾走感」というか、駆け抜けてるなと。物理的にも走るんですよね。これはなかなか疲れるんじゃないかなって(笑)。

あとは歌もあって、どんな感じで歌うのかまだわかってないんですけど、大変そうだなと……。



定本 めまぐるしく物語が動くし、理解する間もなく、次々と新しい事件が起きていくんで、そこはお客さんにも楽しんでいただけるかなと思いますね。



今江 あとは、日替わりのアドリブシーンもあるかもしれないんで、楽しめそうです。



今江大地×定本楓馬が語る、舞台『いつかアイツに会いに行く』──余命宣告から始まる疾走コメディ

舞台『いつかアイツに会いに行く』メインビジュアル

――定本さんは、小林顕作さんとは以前からご一緒されていますが、印象は?



定本 何度かご一緒させていただいているんですけど、これまではアニメや漫画の原作ものしかやっていなくて、こういうストレートプレイは顕作さんとは初めてなんです。以前、ご一緒した「呪術廻戦」では、ダークな感じの作品の中にも笑えるところもたくさんあったりして、2時間、3時間を飽きさせないように工夫してくださっているという印象がありました。あんまりガツガツと俳優に言うタイプの方ではないという印象です。



今江 そうなんや? そこにあるものをうまく活かしてくださる優しい方なんや?



定本 そうですね。だからいろんなことを試せる現場だと思います。みんなの素敵な部分を光らせてくれるという印象です。



今江 僕は「はじめまして」になりますけど、いまの話を聞いてちょっと安心しました(笑)。



――襷が、ハリウッドスターのシルヴェスター・スタローンに憧れて突っ走るという物語ですが、スタローンの存在をどんなふうに描くのか楽しみです。



今江 そうなんですよね(笑)。

実際に劇中に出てくるのは、スタローンのモノマネのタレントという設定なんですよね。そこは完全にコメディに振って描くのかな? と思っていますけど…。



――他に戯曲を読んで、どうなるのか楽しみなところはありますか?



今江 走りながら歌ったことがないので、まず「ちゃんと最後までもつのかな…?」というのは不安ですね。結構、ずっと出ているので。汗だくだくになるんじゃないかと思います。そこはリアルな感じで良さそうですけど。



――戯曲には冒頭から「舞台上にランニングマシーンがある」と書いてありました。



今江 おかしいですよね、それ(苦笑)。



定本 初めて見ましたね。台本に「ランニングマシーン」ってあるの。



今江 なんやそれ?って(笑)。その場で走るフリするならわかるけど、ガチで走らなアカンやん!



定本 登場人物がみんなキャラが濃いんですけど、僕はすごく楽しみにしている方がひとりいて...…。

何を言われても「YES!」しか言わないキャラクターがいるんですよ。



今江 いるね! ズルい(笑)。



定本 本当に稽古が楽しみです。笑わずにいられるのか…?



今江 周りのキャラが濃い中で、僕らはちょっと変なところもあるけど、わりと普通の青年なので、周りのみなさんがどういうふうに影響を与えてくれるのか? 怖い部分でもあり楽しみですね。



ふたりにとっての人生を変えた出会い、いま会いたい人は?

――座長としての心構えはいかがですか?



今江 ありがたいことに座長をやらせていただく機会は多いですが、僕は堂本光一くんのような、みんなを引っ張るような座長というよりは「協力してやらせてもらいますのでよろしくお願いします」というタイプなので「座長だから!」とはあまり思ってないですね。みなさんと一緒にという気持ちが大きいです。



定本 コメディということもあって、ひとりがどうってより、みんなで力を合わせてコメディシーンをつくっていかないといけないので(今江に)「一緒に頑張りましょう!」という気持ちです。



今江 頑張りましょう!



――襷はシルヴェスター・スタローンとの出会いによって人生が大きく変わりますが、おふたりにとって人生を変えた出会いがあれば教えてください。



今江 身近で言うと、WEST.の重岡大毅くんかな。最近、すごく仲良くさせてもらっていて。僕結構、“落ちる”ことがあったんですよ。「もうこの仕事、全部やめたい」となった時があって、そこで救ってくれたのが重岡くんだったんです。焼肉行って、ラーメン行って、ハンバーガーショップに行ったんですよ、一晩だけで(笑)。

それが僕にとってはすごく幸せな時間で……。日常的にも連絡をくれるし、丸山(隆平)くんからいただいたという木の机があって、重岡くんが新しい机を買うから「いる?」と連絡をくれて「ほしいです」ともらって、一緒にその机にワックスを塗ったり、磨いたりして、いまも僕の部屋にあります。物を大切にして、同じものを使うという生き方もすごく好きで、僕も部屋に物が少ないので似ているところもあるし、カッコいい先輩やなと思います。



定本  僕は専門学校時代の先輩ですね。僕はお芝居を学ぶ専門学校に通って、そこで初めてお芝居に触れたんですけど、入ったきっかけは「なんとなく」で、どんな仕事なんだろう? と思いながら、やらない後悔よりもやる後悔だなと思ったからなんです。高校生の頃とは全く違う環境で「こんなに必死になるってかっこいいんだ!」と思えたんですよね。それまで高校の部活もそこまで前のめりになれなかったし、何かをやり切るという経験をしたことがなかったんですけど、学校の先輩は夜11時くらいまで稽古して、それを当たり前のように楽しんでいて、「こんな生き方があるんだ」と思えて、人生観が変わったと思うので、その出会いには感謝しています。



――本作は「会いたい」シリーズの幕開けとなる作品ですが、おふたりがいま「会いたい」と思っている人を教えてください。



今江大地×定本楓馬が語る、舞台『いつかアイツに会いに行く』──余命宣告から始まる疾走コメディ

今江 いま生きている人ですか? 架空の人でもいいですか? 僕は人に憧れたことがあんまりないんですが、初めてちゃんと憧れたのが漫画「宇宙兄弟」の難波六太です。兄弟で宇宙飛行士を目指していて、弟は宇宙飛行士になるけど、兄(=六太)は挫折して一度、あきらめるんです。でも、そこから踏ん張ってもう一度、夢を目指すんです。いつもムチャクチャ良い言葉を言ってくれて、その言葉は僕の中にずっとあるんです。

落ち込んだり苦しい時に思い出したり、メモってある言葉を見て「頑張ろう!」ってなるんですよね。僕の支えというか「こうありたい」と思える人です。



定本 僕は会ってどうしたいってわけではないんですけどバスケがすごく好きなので、河村勇輝選手(シカゴブルズ)の試合を観に行きたいです。いま、すごく活躍されていますけどすごく魅力的なので、いつかお会いしたいです。



“推し”に熱狂する気持ちは「めっちゃ理解できます」

――本作は“推し”に動かされ、人生を変えていく者たちの物語と言えます。おふたりは普段、ファンから推される側ですが、人生の支えになり、こころが潤うような“推し”の存在に熱狂するという気持ちは理解・共感できますか?



今江 めっちゃできます! 役と似てるなと思った部分でもあるんですけど、僕はハマったらとことん!というタイプなんです。最近だとラーメンとかパンとかベーグルとか、小麦ばっかり食べてるんですけど(笑)。アニメも春夏秋冬と毎期あって、この夏だけで40~50作くらい見ていて、1年を通して160作くらい見るんです。ラーメンも自分で寸胴鍋を買って、しょうゆも蔵から70種類くらい取り寄せて、試飲して好きなのを見つけてラーメン屋に持って行くくらい、ハマったらとことんハマるんで、めっちゃわかります!そこは襷と似てるので「あれ? これは俺のこと知ってて書いたの?」と思ったくらいでした。



定本 僕はいまのお話を聞くと、どれだけ自分が浅かったのか……と思ってしまったんですけど(笑)、「ハマったらとことん」というよりも、いろんなことへの興味があって、知らないことに出会うのが好きなんですよね。いろんなことを知りたくて、こないだは「この歯医者さんで流れてるBGMの楽器は何なんだろう?」と思って、似ている音を探したら、カリンバという楽器でした。いろんなことを知るのが好きです。



――もしおふたりが「余命1年」と告げられたらどうしますか?



今江 お仕事のやり方はたぶん変わらないけど、金遣いは100%、荒くなると思います(笑)。ちょっと良い牛肉を買ったり……。



定本 僕は、いろんな場所に行きたいですね。旅行したいです。「ハリー・ポッター」が好きなので、イギリスも行ってみたいし、前作の舞台の作品がフランスの話なので、フランスも行ってみたいし、見たことのない景色を見て「もう満足!」と思って逝けたらいいですね。



取材・文:黒豆直樹




<公演情報>
舞台『いつかアイツに会いに行く』



演出・音楽・原案:小林顕作
脚本:渡辺雄介 木乃江祐希

出演:
今江大地
定本楓馬 陳内将 寺本莉緒 守屋茜 小柳心
伊東征哉 白河ななみ 中村哲人 福永マリカ

【東京公演】
2025年10月10日(金)~20日(月)
会場:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA

【大阪公演】
10月25日(土)
会場:COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール



チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2534284(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2534284&afid=P66)



公式サイト:
https://event.1242.com/events/itsuai/



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