『ジュラシック・ワールド』最新作いよいよ公開に! 来日した監督&脚本家にそのウラ側を聞く!
監督のギャレス・エドワーズ(左)と、脚本のデヴィッド・コープ(右)

スティーヴン・スピルバーグの『ジュラシック・パーク』が公開されたのは1993年。世界初のデジタル恐竜の登場に世界中が歓喜し、すぐにシリーズ化が決定し、2015年には新シリーズ『ジュラシック・ワールド』がスタートした。

そしてこの夏、通算7本目になる『ジュラシック・ワールド/復活の大地』が公開される。メガホンを取ったのは『GODZILLAゴジラ』(14)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)を手掛けたギャレス・エドワーズ。そして脚本は1作目と2作目『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97)のデヴィッド・コープ。本作のプロモーションで来日したふたりに映画の舞台裏、聞いてみました!



スピルバーグの「また恐竜映画をやらないか」から本作が始まった

――日本は酷暑ですが、それにふさわしい映画ですね。



デヴィッド・コープ(以下コープ) 今回の舞台となるのは赤道直下の地域なんだが、気候的に恐竜が棲息していた6500万年前にもっとも近いというわけで選んだんだ。ハンパなく暑く、酸素も多いからね。だからといって、夏に公開されることを意識しなかったわけじゃないよ。



――最初の2本を監督して以来、すべての作品で製作総指揮を務めているのがスティーヴン・スピルバーグです。彼からはどんなオファーを受けたのでしょうか。



コープ 私の場合はスティーヴンから電話をもらい、「また恐竜映画をやらないか?」と声を掛けられたんだ。「何かいいアイデアはあるのか?」と聞いたんだが、これは私たちのルーティン。これまでスティーヴンとは10本以上で組んでいて、すべてはそういう会話から始まるんだよ。会話だけではなく、アイデアもそう。

いいアイデアがあれば「やろう!」になるし、なければ「どうだろう」になる。



――スピルバーグはどういうアイデアをもっていたんですか?



コープ 彼の最初のアイデアは、モササウルスを海上で使いたいというものだった。そういう話をしているとき、私の頭に浮かんだのは、ユニバーサルホラーの『大アマゾンの半魚人』(54)だったので興味をもったんだ。その後、2カ月くらいかな、スティーヴンとキャッチボールをしながらストーリーを作っていった。私がこだわったのは、ただ単に恐竜から追いかけられるのではなく、もっと意義ある理由があってそういうハメになるというところ。その結果生まれたのが、恐竜のDNAを使って新薬を作るというアイデアだった。



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スピルバーグのアイデアどおり、モササウルスが海で大暴れ!

ギャレス・エドワーズ(以下エドワーズ) 僕とデヴィッドが初めてzoomで会ったときも、モンスターの話で盛り上がった。というのも彼の後ろには『キング・コング』のポスターが貼ってあったので、僕は「彼とは気が合うかもしれない」ってね。彼は恐いんじゃないかと思っていたので本当に安心したよ。



コープ 何で私が怖そうだと思ったの? 



エドワーズ その前に、僕がこの映画のオファーを受けたときの話をするよ。まず脚本が送られてきた。僕はとても疲れていたので、できるだけこの脚本を嫌いになりたいと思いながら読んだにもかかわらず、大好きになっちゃってね(笑)。

これはやらないと絶対に後悔すると思ったし、しっかり演出すれば素晴らしい映画になるという確信もあった。



僕はもう一度脚本を読みながら映像リストを作っていった。このシーンはこういう映像にする、という感じのリストだよ。それを持ってプロデューサーのフランク・マーシャルに会ったら「分かった。じゃあ、同じプレゼンをスティーヴンにしてくれるかい?」と言われて、僕の心臓はバクバクした。「いや、待てよ。スティーヴンって名前はたくさんあるから、このビルの管理人かもしれないじゃないか」なんて逃げてみたものの、やっぱりあのスティーヴン・スピルバーグだったわけで(笑)。



次の日にスティーヴンに会って僕のビジュアルリストの説明をしたら、「凄く緊張しただろうけど、また同じことをデヴィッドにやってほしい」と言われたんだけど、その言い方が「私より大変だから申し訳ないな」のように聞こえて、またも心臓バクバク。でも、『キング・コング』のポスターを見て、ああよかったというわけさ(笑)。



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史上最大級の翼竜ケツァルコアトルスが登場人物たちに襲いかかる!

――その『キング・コング』のポスターは1933年のウィリス・オブライエン版ですか?



コープ そうだよ。ただオリジナルのポスターというわけじゃなく、アールデコ調のスタイリッシュな感じだね。



エドワーズ デヴィッドとモンスター映画で盛り上がった僕は今回、そう50歳にもなって初めて気づいたんだけど、映画を作っている人は誰でも、最高の映画にしたいと思って仕事をしている。

だから、いろんな衝突や食い違いがあったとしても、見ているゴールが同じならいい映画を協力しあって作ることができる。それを今回、身をもって経験したんだ。いろんな意見が出たときも、誰かが「いやいや、みんな最高の映画を作りたいんだよな?」と言い出して譲歩もすれば前進もできる。とりわけデヴィッドとは気があって、1回もイヤになったり言い争いをすることはなかった。こんな超大作でそれができるなんて、びっくりだったよ。



――ということはギャレスさん、『ローグ・ワン』のときはできなかったんですね?



エドワーズ いやあ、あの映画では本当にあちこちから声が飛んできて、それをまとめるのがめちゃくちゃ大変で……。



コープ 私も経験がある。『スパイダーマン』(02)のときも、出版社のマーベルとプロデューサーの意見が合わなかったり、監督とスタジオの意見が対立したりと本当に大変だった。でも、出来上がった映画は素晴らしかったから、そういうことはどうでもよくなる。『ローグ・ワン』だってそうだろ?



――はい、そうですね。



『ジュラシック』シリーズに絶対に外してはいけないものとは?

――ところで、そのモンスター系の質問なのですが、本作ではマハーシャラ・アリ演じるダンカンの拠点のテレビに、レイ・ハリーハウゼンがモデルアニメーションを担当した『恐竜100万年』(66)がチラリと流れて嬉しくなりました。これはどういう意図で登場させたのでしょうか?



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傭兵ダンカンを演じたマハーシャラ・アリ

エドワーズ 映画における恐竜のスタート地点は、絶対にハリーハウゼンなんだよ。

だから「出さなきゃ!」という気持ちに駆られたんだ。担当の弁護士に「『恐竜100万年』の映像を使いたいんだけど使用料、かなり高額になるんじゃないかなあと相談したら、「いや、どんなに金がかかってもそれはやらなきゃいけない」と言ってくれた。ね、だから、みんな同じゴールを目指しているってことなんだって(笑)。



――それはすてきです!



エドワーズ 実は僕、まだ監督をしていない頃、ハリーハウゼンに会ったことがあるんだ。BBCの友だちのプロデューサーが「ハリーハウゼンに会うんだけど、一緒に来る?」って誘ってくれて、彼の家に行ったんだよ! オスカー像(1992年に贈られたアカデミー賞特別賞)を触らせてもらったりして、インタビューにも同席した。



その日はちょうど、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』(05)の予告編が解禁になったときだったので、まだ観ていないというハリーハウゼンに観てもらって、感想を聞いたんだ。その話が素晴らしかったのでピーターに会うことがあったらぜひ話したいと思っていたら、そのチャンスが巡ってきたんだよ。もうピーターは前のめりで「で、彼は何て言っていた? どんな反応だった?」って。だから僕は「意外なことにデジタルには理解があって、まずそれに驚いた」といい、さらに「予告編はとても褒めていたよ」と伝えたら、ピーターはとても喜んでいたね。



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撮影中のギャレス・エドワーズ監督。監督は1975年生まれの50歳

――ギャレスさんは本作をフィルムで撮影しています。あなたにとっては初のフィルム撮影だと聞いていますが、フィルムのプロ、スピルバーグに助言を頼んだりはしなかったんですか?



エドワーズ 大作はデジタルで撮影するのがハリウッドの常識なんだ。

それでも僕がこの作品をフィルムで撮りたかったのは、最初の『ジュラシック・パーク』や『ジョーズ』(75)のような質感が欲しかったから。でも、そう簡単にはいかなかった。最初はみんなに反対されたよ。



ハリウッドでよく言われるのは“どれを闘うかを選べ”なんだけど、僕はこれこそが本作での闘うべき事案だと思い、覚悟を決めてスティーヴンに電話したんだ。電話をかけちゃダメって言われていたんだけど、その約束を破ってかけた。「どうしてもフィルムで撮りたいから助けてほしい」と言ったら、彼はダメな理由と、それをクリアする方法を教えてくれた。「予算がオーバーするからダメであって、他の部分で予算を調整すればいい」ってね。



その後の1週間は予算の調整に費やし、やっとフィルムのお金を捻出することができた。僕はスティーヴンがサポートしてくれないはずはないと確信して電話をしたんだ。だって彼、2作を除いて全部フィルムで撮っているんだから!



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『ジュラシック』シリーズといえばTレックス! 本作でもちゃんと暴れてくれます

――最後の質問です。『ジュラシック』シリーズは世界中で大人気ですが、それを手掛けるときに絶対に外してはいけない要素は何だとお考えですか?



コープ 1作目のとき言われたのは、恐竜はモンスターではなく動物だということ。それには常に敬意を払っていて、本作でも守ったつもりだ。

今回は、動物である恐竜に加え遺伝子操作で生まれたモンスターの恐竜も出てくるけどね(笑)。でもこれは、このシリーズを手掛けるときの私の指針であることには違いない。



エドワーズ ほら、昔からキャンプファイヤーの火を囲んで大人が子どもたちにいろんな経験談や寓話的な話をするだろ? 思わぬ動物に襲われたけど、どうにか生き延びたんだよ……なんて感じでさ。そういうのは子どもにとってとても刺激的で、さまざまなことを考えるきっかけになる。とりわけ、今のように自然から離れている場合はね。



僕が最初の『ジュラシック・パーク』を観たときは「あ、僕が観たかったのはこれだ」って感じたんだけど、それはそういう話を聞いていたからだと思うんだ。今はもう年を取って、子どもたちにこの物語を語る立場になったから、そういう感覚を大切にしたいと思いながら作っていったんだ。もうひとつは恐竜に対する畏怖の念。恐ろしさと同時にこの巨大な動物に対する敬う気持ちを忘れないことだと思う。



<作品情報>
『ジュラシック・ワールド/復活の大地』



8月8日(金)公開



(C)2025 Universal Studios. All Rights Reserved.



取材・文:渡辺麻紀



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