新国立劇場「バレエ・コフレ 2026」リハーサル中の柴山紗帆、李明賢に聞く『テーマとヴァリエーション』への取り組み
新国立劇場「バレエ・コフレ 2026」リハーサルより 左から)李明賢、柴山紗帆 Theme and Variations Choreography by George Balanchine © The George Balanchine Trust (撮影:奥田祥智)

新国立劇場にてまもなく開幕する「バレエ・コフレ 2026」は、20世紀の珠玉のバレエ作品を集めた宝石箱のような眩いひとときを体験させてくれる公演だ。上演されるのは、オランダの巨匠ファン・マーネンがピアソラの音楽に振付けた『ファイヴ・タンゴ』、英国出身の気鋭ドウソンによる2000年の作品『A Million Kisses to my Skin』と、アメリカ・バレエの父と称されるバランシンの代表作の一つ『テーマとヴァリエーション』。

3つの傑作を通して、20世紀のバレエの豊かさとともに、優れた作品に真摯に向き合い、比類ない舞台をつくりあげるダンサーたちの活躍に熱い視線が注がれる。開幕まであとわずかとなった新国立劇場で、『テーマとヴァリエーション』の2組の主役たち、米沢唯と速水渉悟、柴山紗帆と李明賢のリハーサルを取材、柴山と李明賢に、今回の取り組みや作品の魅力について聞いた。



パ・ド・ドゥのリハーサルに取り組む米沢と速水は、ピアノ伴奏が始まるやいなや、一瞬にしてチャイコフスキーの旋律と響き合い、そのオーラでスタジオを満たす。バランシン独特のエネルギッシュな振付ながら優雅で繊細、一つひとつの動きに丁寧に向き合う二人の姿から、目が離せない。初演は1947年。チャイコフスキーの組曲第3番、第4曲「主題と変奏曲」にのせて主役ペアと群舞のダンサーたちが展開する華やかなバレエは、19世紀ロシアの古典バレエのオマージュとして知られる人気作だ。新国立劇場では2000年にレパートリー入り。以来たびたび上演し、数々のダンサーたちが、その後上演作品に加わった『シンフォニー・イン・C』『セレナーデ』などとともに、バランシン作品の魅力を届けてきた。プリンシパルの米沢唯もその一人。今回は、同じくプリンシパルの速水渉悟とともに繰り広げる、充実の舞台に期待が寄せられる。



新国立劇場「バレエ・コフレ 2026」リハーサル中の柴山紗帆、李明賢に聞く『テーマとヴァリエーション』への取り組み

Theme and Variations Choreography by George Balanchine © The George Balanchine Trust(撮影:奥田祥智)

幕開けの、コール・ド・バレエを従えての堂々たる登場シーン、それぞれのソロ、パ・ド・ドゥと、30分ほどの作品で主役二人は大車輪の活躍。とくにパ・ド・ドゥは、しっとりと優雅な踊りの中にもバランシン独特の手の込んだ動きが散りばめられ、パートナー同士の息の合った演技が求められる。

リハーサルでは、経験豊富な米沢が、速水の立ち位置やサポートのタイミングなど、さまざまなリクエストを提示、速水も即座に対応し、パートナーシップを磨き上げてゆく地道な作業が続く。



最初から最後までずっと踊りっぱなし! 

「クラシックのベーシックな部分から、少し飛び越えて身体を使うのがバランシンの振付の特徴。ダイナミックなテクニックがたくさん詰まっていて、見せ場が多く、観客として観ていても“沸く”感じがあります」と話すのは、4年前の上演時に初めてこの作品に挑戦したプリンシパルの柴山。輝くような笑顔と躍動感あふれる踊りから、踊る喜び、表現する楽しさが滲み出てくるよう。彼女と初めてパートナーを組む李明賢は、パリ・オペラ座バレエの短期契約や韓国国立バレエ、ユニバーサル・バレエを経て2024年に新国立劇場に入団した期待のダンサー。「ストーリーがないバレエですから、演技だけのシーンがなく、最初から最後までずっと踊りっぱなし! 踊りが好きな人は本当に楽しめると思います」と本作の魅力をアピールするが、踊り手としては、クラシックとはまた違った難しさに悩まされる。「たとえば、腕を柔らかく上げるところを、一旦ピンと伸ばしてから動きに入るとか、腕をクロスしてから上げるとか、クラシックの動きに細かい動きが少しずつ加わっていたりするんです。大きなアクセントも入ったりしますよね」。柴山も、「バランシンならではのスタイルですね。クラシックの形をさらにオーバーにやる感覚ですが、フォーサイスの振付や、今回上演するドウソンの『A Million Kisses to my Skin』などは、それをさらにオーバーに動く感じで、バランシンの振付は様々な作品に影響を与えていると感じます」と、ダンサーとしての実感を言葉にする。



新国立劇場「バレエ・コフレ 2026」リハーサル中の柴山紗帆、李明賢に聞く『テーマとヴァリエーション』への取り組み

Theme and Variations Choreography by George Balanchine © The George Balanchine Trust(撮影:奥田祥智)

彼らの指導を担うのは、バレエマスター・森田健太郎とバレエミストレスの遠藤睦子。翌週には、世界各地のカンパニーでバランシン作品の指導を手がけ、新国立劇場でも幾度も指導を担ってきたベン・ヒューズが来日、彼が求めるであろうバランシンの動き、ニュアンスを厳密に表現すべく、力を合わせ、よりよい方法を探っていく。森田からたびたび、「タイミングが早すぎる」、「パートナーと近づきすぎる」と指摘を受ける李だが、バランシン作品の主役は初めてだけに、「不安でつい先に先にと出てしまう」と自己分析。

「バランシン作品で大切なのは、クリーンさだと思うんです。綺麗に、クリーンに踊りたいと思います」と、目標を掲げる。その発言を受けて柴山も大きく頷き、「それと同時に、最後までエネルギーを途切れさせないように踊りたい。休む時間がない分、これまで踊った役の中でも上位にランキングされるほど、体力、持久力が求められる作品ですから」と気を引き締める。



ソロの場面のリハーサルに入ると、速水が躍動感たっぷりにダイナミックな技を繰り出し、場の空気を大きく動かす。李も、伸びやかで音楽性あふれる踊りで個性を発揮するが、「いろんなダンサーの踊りを映像で見ているのですが、人によって“味”が違いますよね。だから僕も、バランシンのバレエに僕の“味” をつけて、お客さまにお届けしたいなと思っているんです」と高みを目指す。20世紀バレエの歴史に名を刻む3人の振付家の傑作が揃う本公演。柴山は「いろんな魅力が詰まった3作品が集まった公演なので、ぜひ、それぞれの魅力、その違いを楽しんでいただきたいです」と呼びかけた。



取材・文:加藤智子




<公演情報>
新国立劇場バレエ団「バレエ・コフレ 2026」



出演:新国立劇場バレエ団
指揮:冨田実里
管弦楽:東京交響楽団
芸術監督:吉田都



『A Million Kisses to my Skin』
振付:デヴィッド・ドウソン
音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
美術:デヴィッド・ドウソン
衣裳:竹島由美子
照明:バート・ダルハイゼン



『ファイヴ・タンゴ』
振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:アストル・ピアソラ
美術・照明:ハンス・ファン・マーネン
衣裳:ジャン=パウル・フローム
※録音音源で上演。



『テーマとヴァリエーション』
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術:牧野良三
衣裳:大井昌子
照明:磯野睦



2026年2月5日(木)~8日(日)
会場:東京・新国立劇場 オペラパレス



The Performance of Theme and Variations, a Balanchine® Ballet, is presented by arrangement with The George Balanchine Trust and has been produced in accordance with the Balanchine Style® and Balanchine Technique® Service standards established and provided by the Trust.



関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509127(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2509127&afid=P66)



公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/coffret/

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