雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力
第三十九回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表記者会見より 左から)坂東新悟、坂東巳之助、中村雀右衛門、尾上松緑、坂東亀蔵

2026年1月26日、都内にて行われた第三十九回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表記者会見に、中村雀右衛門、尾上松緑、坂東巳之助、坂東新悟、坂東亀蔵が登壇、こんぴら歌舞伎ならではの体験、上演演目の見どころを語った。



「究極のアナログの世界」で体感する歌舞伎

現存する日本最古の芝居小屋、香川県・琴平町の旧金毘羅大芝居、通称金丸座で毎年春に実施される「四国こんぴら歌舞伎大芝居」。39回目の開催となる今年は4月10日(金) から26日(日)の日程で、第一部では『傾城反魂香土佐将監閑居の場』、通称「吃又」と『身替座禅』、第二部では『妹背山婦女庭訓三笠山御殿』と『鷺娘』を上演する。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

「第39回四国こんぴら歌舞伎大芝居」チラシ

会見冒頭で挨拶をした主催・琴平町の片岡英樹町長は、天保6(1835)年創建の金丸座について、奈落にいる人間が人力でセリやスッポンを上げ下げする「究極のアナログの世界」、舞台との距離の近さから生まれる臨場感などを挙げ、「世界中で琴平の金丸座しかない、唯一無二の世界」とアピールした。今回の演目は第一部が夫婦の愛、第二部は愛と恋心というコンセプトだと述べるとともに、「いま、映画『国宝』が社会現象となっていますが、映画をきっかけに若い世代の皆さんが歌舞伎をご覧になって、期待が高まる中、より多くの方に観ていただきたいと、映画『国宝』にまつわる演目を強くオファーしました。その願いが叶い、映画のクライマックスに登場する『鷺娘』を第二部の締めくくりに上演することに」と明かした。



今回が10回目のこんぴら歌舞伎出演となる雀右衛門は、「39回のうちの10回ですから、ほとんどオリンピックと同じような状態です(笑)。お客さまが近く、魅力的な劇場で、リピーターも多い。松緑さんをはじめ気のおけない皆さまとご一緒させていただくのが本当に楽しみです。『妹背山婦女庭訓』でお三輪を勤めさせていただきますが、父が襲名のときに勤め、私の襲名でもさせていただきました。今回、襲名から10年という節目のときに、こちらの舞台で父にも縁のある演目を勤めさせていただける、こんなに嬉しいことはございません」と語った。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

中村雀右衛門

「令和に入ってからこんぴら歌舞伎に行かせていただくのは初めて、通算4度目となります」と述べたのは松緑。「昼の部では『身替座禅』の山蔭右京を演じます。アットホームで笑えるような舞踊劇。ただ、私の性格はこの山蔭右京という登場人物とは違うので、そこは混同していただかないようお願いしたい」と念を押し、場を和ませる。

夜の部の『妹背山婦女庭訓』漁師鱶七実は金輪五郎今国については、「私ども紀尾井町の家にとって縁の深い役。祖父も得意にしておりましたし、父もやりました。雀右衛門のお兄さんのお三輪とは初めてとなりますので、とても楽しみにしております」。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

尾上松緑

巳之助はこんぴら歌舞伎初出演だが、父の坂東三津五郎が出演した際に金丸座を訪れたそう。「江戸の芝居小屋、その舞台裏を案内していただいた思い出があります。 “これがいまも残っているんだ”という感動からすでに20年近く経っているわけですが、まだまだ現役で公演が行われる、その場に立ち会えることを本当に嬉しく思っております」と声を弾ませる。「『傾城反魂香』は、松緑のお兄さんが初めてこんぴら歌舞伎にご出演なさったときに、私の祖父、九代目の三津五郎が演じていたそうでございます。今後も末永くこんぴら歌舞伎とのご縁が繋がっていくよう勤めさせていただけたら」とも。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

坂東巳之助

新悟は2017年の雀右衛門襲名披露時に出演、今回は9年ぶりの出演だ。「『傾城反魂香』のおとくという役は、(伝統歌舞伎保存会の)研修発表会で1日だけ勤めさせていただきましたが、本興行では初役。若い時分に巳之助のお兄さんと “どんな役をやりたいか”という話題になったとき、おとくに憧れているとお話しさせていただいたことがあります。嬉しさと責任の重さを噛み締めながら、楽しみにしております。

第二部『妹背山婦女庭訓』では橘姫を。以前、雀右衛門のお兄さんに教えていただいて以来ですので、きちっと勤めたいと思います。最後は『鷺娘』という大曲。一人で踊らせていただくこと自体初めてですので、責任を感じておりますが、この金丸座に合った演出を藤間のご宗家(藤間勘十郎)と相談中、金丸座ならではの魅力を心底から感じていただきたいと思っております」



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

坂東新悟

「前の2回は比較的短いスパンで出演させていただきましたが、今回は11年ぶり」と話すのは、3度目の出演となる亀蔵。「4演目中、私も3演目に出演させていただきますが、3演目の3役とも初役、その中の二つは女方です。調べてみたら、なんと16年ぶりの女方。私の女方を見たことのないという方が多いと思いますので、ぜひ楽しみにしていただきたい」と意欲を見せた。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

坂東亀蔵

普通では感じられない、ミラクルな世界

日本最古の芝居小屋・金丸座での公演は、観客にとって特別な空間での歌舞伎体験となるが、俳優たちにとってもここでしか体感できない何かがあるようだ。



「前回は宙乗りをさせていただきましたが、普通の劇場と違い、身近にお客さまを感じ、普通ではあり得ないような趣がありました。襲名のときはスッポンを使わせていただきました。普通は機械式ですが、ここでは人がよいしょと上げてくださる。他の劇場では味わえない、素晴らしい、いい思い出に。仮花道を使ったときは、衣裳の裾がお客さまの肩に当たり、これは良くないなと思ったら、逆にそれが思い出になって良かったというお話も聞いたことがございます。

本当にアナログの中のアナログ、普通では感じられない、ミラクルな世界をお客さまに感じ取っていただける劇場だと思います」(雀右衛門)



「『吉野山』(『義経千本桜』)の忠信をさせていただいたとき、人力でスッポンから上がってくるわけですけれども、もちろん人力ですから、ガタガタとなったりしますが、逆に風情があり、人間味が感じられる。今回の『妹背山婦女庭訓』のような演目でも、お客さまとの近さによって、お三輪さんの哀れさのようなものが、より生々しくダイレクトに伝わることが非常に楽しみです。芝居小屋は日本の大事な文化。次代に残していかなければならないと感じますし、数年に一度のことではありますが、その舞台に立たせていただけるのは、とてもありがたいことです」(松緑)



雀右衛門は、『妹背山婦女庭訓』お三輪への取り組みについて、あらためてこう述べた。「お客さまと近いところで舞台を勤めさせていただき、お三輪の心情が直接お客さまに伝わるのではないかなと思うと、こんなに嬉しいことはないですし、もっともっと、強く強く伝わるように舞台を勤めていきたいと思います。父からも、“役者の思いがなかったら、お客さまにはなかなか伝わらない。そういった思いをどんどん持たなければ”と言われておりました。精一杯、直接お客さまに感じ取っていただける舞台にしていきたいと思います」。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

今回、地元琴平町の強いオファーにより上演が実現する『鷺娘』。初役で取り組む新悟が意気込みを問われると、「いろんな先輩方の舞台を拝見し、憧れの演目でもありました。今回は皆さんがよく目にされる演出とは違ったものになると思っておりますが、いろんな仕掛けのある演目ですので、間近でご覧いただくことによって、臨場感をもって、ダイナミックに感じていただけるのではないかと思います。楽しんでいただけるよう、のびのびと勤めさせていただきたいなと思います」。



『身替座禅』の見どころ、取り組みを尋ねられた松緑は、「楽しく観ることができる舞踊劇。第一部は『傾城反魂香』がグッとお腹に溜まるようなヘビーな題材ですが、その後に気分良く明るく終わって帰っていただけるような演目です。私が勤めます山蔭右京は、いわゆる浮気者。そこをぜひ、お客さまに笑って許していただけるよう、楽しく演じたい」。では奥方は?との質問に奥方玉の井を勤める亀蔵は、「16年前、巳之助さんのお父さまが巡業で『身替座禅』をなさったとき、巳之助さんとともに千枝、小枝をやらせていただいたのが最後に勤めた女方でした。次に『身替座禅』に出させていただくなら多分太郎冠者だろうな、と思っていたら、いきなりの奥方。少し戸惑いました(笑)」。さらに、「『傾城反魂香』のおとくはすごくいい奥さまで、しみじみいい夫婦だな、というお話ですが、こちらの奥方は本当に右京のことを愛しているからこそ、嫉妬心が芽生え、ちょっと怖い奥さんになる。自分の気持ちを大切に演じていきたいと思っています」とも。



『傾城反魂香』又平役は、巳之助。2017年の「新春浅草歌舞伎」以来二度目の取り組みとなるが、「『新春浅草歌舞伎』で初めて歌舞伎を観に来てくださるお客さまにも、しっかりとお話が伝わったという実感がありました」と明かす。「又平という男が抱えるハンディキャップと、それによるコンプレックス、フラストレーションを描き、重たい部分もありつつ、途中には亀蔵さんが勤めてくださる颯爽とした雅楽之助の注進の場面もあり、最終的には一つの奇跡をきっかけにハッピーエンドへ。

1時間ちょっとの中で、しっかりとカタルシスを味わっていただける作品です。『国宝』効果で初めて歌舞伎をご覧になる方も来てくださるかと思いますが、そうした方々にも楽しんでいただけるよう、物語の輪郭をしっかりと伝えていけるよう、勤めさせていただけたらと思います」と意気込んだ。



雀右衛門、松緑、巳之助、新悟、亀蔵ら集結 金丸座でしか味わえない「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の魅力

取材・文:加藤智子




<公演情報>
第三十九回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」



【演目】
■第一部 11:00~
一、『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)土佐将監閑居の場』
二、『新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)』

■第二部 15:00~
一、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)三笠山御殿』
二、『鷺娘(さぎむすめ)』

2026年4月10日(金)~26日(日)
会場:香川・旧金毘羅大芝居(金丸座)



関連リンク

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2546961(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2546961&afid=P66)



公式サイト:
https://www.konpirakabuki.jp/schedule/



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