
世界的振付家、アクラム・カーンによる『ジャングル・ブック』が、今週末6月20日(金) に埼玉で開幕、その後愛知で上演される。原題は“Jungle Book reimagined”。
『ジャングル・ブック』といえば、古いアニメのイメージ、またキプリングの小説は児童向けの古典童話シリーズにおさめられた美しい挿絵の本が記憶に残る(木島始 訳、石川勇 画 福音館書店、1979)。2016年のディズニーの実写映画に親しんだ人も多く、世界中で世代を超えて愛されている作品だ。カーンは、狼に育てられた少年モーグリの物語にあらためて向き合い、彼ならではの物を語るダンスと、アニメーション、美しい音楽をもって新たな舞台作品として編み上げた。初演は2022年、英国・レスター。

(c) Ambra Vernuccio

(c) Ambra Vernuccio
ロンドン生まれ、バングラデシュ系イギリス人のカーンは、幼少期より北インド古典舞踊のカタックを学び、コンテンポラリーダンスとカタックを融合させた作品を発表、世界各地の観客を魅了している。たとえばシディ・ラルビ・シェルカウイと創作した『ゼロ度 Zero Degrees』は、自らのアイデンティティに真正面から向き合った鮮烈なデュエットだったし、女優ジュリエット・ビノシュとのコラボレーション、また百年に一人の天才と讃えられたバレエダンサー、シルヴィ・ギエムとの共演も、圧巻の舞台で強烈な印象を残した。2012年夏のロンドン・オリンピック開会式にも登場し、話題に。その独特のリズム感と力強いステップ、雄弁な語り口は、まさに唯一無二の存在だ。
幼い頃から才能を発揮してきたカーンが、インド舞踊の作品で『ジャングル・ブック』の主人公、モーグリを演じたのは10歳の時。彼にとってこの物語は常に身近なものだったそう。

(c) Ambra Vernuccio

(c) Ambra Vernuccio
舞台となるのは、気候変動により海が陸地を覆いつくした世界。人々は生き延びるため次々と祖国を去り、荒れ果てた街は動物たちの縄張りに。そこに辿り着き、動物たちと暮らすのが、この作品の主人公の “少女”モーグリだ。「気候変動の問題に対して、直接的な行動をとることに決めた」というカーン。身軽にツアーができるよう、大掛かりな舞台装置は用いず、映像などのテクノロジーを活用したことも、“直接的な行動”のひとつだ。美しい音楽と、ダンサーたちの身体、アニメーションによって表現される動物たちの姿とその世界、その迫力に夢中にさせられるとともに、私たち自身の物語、その未来を考えるきっかけの場ともなるだろう。
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』トレイラー
文:加藤智子
<公演情報>
アクラム・カーン『ジャングル・ブック』
演出・振付:アクラム・カーン
クリエイティブ・アソシエイト&コーチ:マーヴィン・クー
脚本:タリク・ジョーダン
ドラマトゥルギー・アドバイザー:シャロン・クラーク
作曲:ジョスリン・プーク
音響デザイン:ギャレス・フライ
照明デザイン:マイケル・ハルズ
舞台美術:ミリアム・ブーター
アート・ディレクション&アニメーション・ディレクター:アダム・スミス(YeastCulture)
ビデオデザイン・プロデューサー&ディレクター:ニック・ヒレル(YeastCulture)
ロトスコープ・アーティスト&アニメーター:
ナーマン・アザリ、ナターシャ・セトナー、エドソン・R・バザーリン
出演:アクラム・カーン・カンパニー
【埼玉公演】
2025年6月20日(金)~6月22日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2507906(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2507906&afid=P66)
公式サイト:
https://www.saf.or.jp/stages/detail/103429/
【愛知公演】
2025年6月28日(土)
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2502938(https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventCd=2502938&afid=P66)
公式サイト:
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/20250628.html