別府競輪(大分県別府市)
「令和7年度 施設整備等協賛競輪 GⅢナイター」
10月16日(木)~ 19日(日)開催
別府競輪(大分県別府市)で10月16日、4日制ナイターのGⅢ「施設整備等協賛競輪」が開幕する。GⅠ寬仁親王牌の出場選手は不在だが好メンバーが集結。特に九州勢は層が厚い。
■阿部将大 エース復活へ反撃開始
2022年3月、高知GⅢ施設整備等協賛競輪でS級初優勝を飾った阿部将大
この地元GⅢから勢いを取り戻す。近年の大分勢の原動力となっているのは阿部将大なのは間違いない。2020年にデビューすると、22年1月にはS級へ昇級。若手エースの期待を背負う出世街道だった。
その後も結果を残し続けた。昇級後わずか2カ月、高知でのGⅢ施設整備等協賛競輪でS級初V。さらに昨年はGⅢで3回の優勝(4月高知記念、6月函館万博協賛、7月別府記念)を飾った。
特に7月の地元別府記念は、古性優作らS級S班を蹴散らしての4連勝完全V。23年ぶりの地元勢による別府記念制覇で、スタンドを沸き立たせた。
2024年7月、別府GⅢ開設記念の表彰式を終えてガッツポーズする阿部将大
だがその年の秋にマイコプラズマ肺炎を患ったあたりからやや失速。今年はまだ優勝を手にしていない。復活へ、まだ手探り状態が続いている。
3児の父。全員がまだ幼児で、手のかかる年頃だ。「育児もやっていて忙しさはあります。なので練習も量より質を心がけています」と良き家庭人でもある。
今年9月のGⅡ共同通信社杯で、約2年半ぶりのビッグレース1着だった阿部将大
それでも家庭を言い訳にはしない。愛妻の献身的なサポートで復調の手応えもある。「最悪の状態は脱している。でも昨年のいい頃にどうしたら戻れるのかは分からない。
GⅠの常連となりつつあったが、今年の出場は5月のダービーだけ。この地元GⅢでファンの歓声とカクテル光線を浴びて、昨年の勢いを思い出したい。
■大西貴晃 昨秋は歓喜のGⅢ制覇
昨年10月、別府でのGⅢ万博協賛競輪で優勝してトロフィーを手にする大西貴晃
大西貴晃にとって、昨年のこの時期に行われたGⅢ万博協賛競輪は忘れられない4日間となった。番手回りの番組を生かしてGⅢ初決勝を手にすると、決勝では日出暘谷高の後輩で大師匠(師匠の師匠)が同じでもある阿部将大の番手。先行する阿部後位から抜け出して、S級初Vを飾った。
その優勝で手にした出場切符で、今年11月の競輪祭で初めてGⅠの舞台を踏む。競走得点にも大きく影響したことで、今期は初のS級1班に格付けされた。
昨年のVでは「番手を回らせてもらって、九州一丸となって優勝させてもらった。
昨年10月、別府GⅢ万博協賛競輪の決勝で先頭でゴールし、坂本亮馬(ピンク)に手を掲げられる大西貴晃(白)
昨年までGⅠやGⅡといったビッグレースに出場したことはなかった。だが、7月にGⅡサマーナイトフェスティバルの補充で玉野(岡山県)まで駆けつけた。「10月の地元GⅢと11月の競輪祭に向けて走っておこうと思った。玉野までの移動は大変だったけど、いい経験になりました」。初戦の3日目、いきなり3着と確定板に載るなど結果もまずまず。何より9車立ての大舞台で2走して、雰囲気を肌で感じたことが大きい。
8月、四日市(三重県)でのレースで落車に巻き込まれた。3場所を治療、回復に充てて、9月の川崎(神奈川県)で復帰。白星こそなかったが、2着2回。最終日は先行も辞さない攻めから1着選手に詰め寄ってゴールしており、レース勘は戻りつつある。
昨年10月、別府GⅢ万博協賛競輪を制してガールズVの石井寛子と写真に納まる大西貴晃
■展望 九州勢が盤石の布陣
今年5月の武雄ミッドナイトGⅢを優勝した山田庸平
九州勢が遠征勢をはね返しそうな布陣だ。今回はGⅠ寬仁親王牌組が不在だが、そのGⅠでも上位争いできる力を持つ山田庸平(佐賀)がここに出走する。直前のGⅢ向日町記念(奈良で代替開催)でも自力戦で決勝進出するなど、やはり九州のトップ級。V最右翼だ。
九州の若手自力型の主力としてビッグ戦線でも活躍中の伊藤颯馬
若手の伊藤颯馬(沖縄)も参戦。8月の函館GⅠオールスターで準決まで進むなど、このメンバーでは底力上位。上半期に繰り返した落車のダメージも癒えてきた。若手自力型はほかにも阿部英斗(福岡)や青柳靖起(佐賀)がいて、質的にも量的にも十分だ。
今年8月の函館GⅠオールスター5日目に通算300勝を挙げた小川勇介
追い込み勢も豪華。小川勇介(福岡)、塚本大樹(熊本)、渡邉豪大(福岡)らがGⅢ初制覇を狙う。当地GⅠを制したこともある中川誠一郎(熊本)は往年の力こそないが、タテ脚は爆発力を秘める。
2024年7月、別府GⅢ開設記念で完全Vを飾り花束を手にする阿部将大(左) 昨年10月、別府でのGⅢ万博協賛競輪で優勝してトロフィーを手にする大西貴晃(右)
ここに地元の大分勢が加わる。
大会3日目に52歳の誕生日を迎える地元の牧剛央
地元の若手先行型として期待されている甲斐俊祐
ベテラン追い込み型の牧剛央、菅原晃、大塚健一郎らは地元戦で気合が違うはず。今年からS級に上がった若手先行型の甲斐俊祐も、9月岐阜FⅠ準決で逃げ切るなどS級戦に慣れてきた。
昨年7月のGⅢ別府記念では決勝に進出した中釜章成
他地区の筆頭は中近勢。自力型では昨年7月の別府記念で決勝に乗った中釜章成(大阪)、GⅢ2Vなど実績がある南潤(和歌山)、今期初S級ながらGⅢの舞台でも健闘している尾方祐仁(岐阜)らが中心。追い込み勢は山口富生(岐阜)、上田国広(三重)、藤田勝也(和歌山)、元砂勇雪(奈良)、柴崎淳(三重)など強豪が多い。
中四国勢は真鍋智寛(愛媛)が自力型の柱。層の薄さは否めず、堤洋(徳島)、渡部哲男(愛媛)、三宅達也(岡山)ら一線級の追い込み型でも苦労しそう。
東日本勢では関東が一歩リードとみるが、自力型の木村皆斗(茨城)次第。ここ2場所を欠場しており、元気に参戦できたらの条件付き。
今期も決定力を発揮して白星を量産している新田康仁
南関東勢も悪くないメンバー。齋木翔多、渡邉雅也、長田龍拳の静岡トリオが若手の中心。新田康仁(静岡)、鈴木裕(千葉)らと連係する。
北日本勢は厳しい戦い。S1は櫻井正孝(宮城)だけで100点オーバーの自力型はいない。東日本の他地区との連係で上位を目指すことになるだろう。
※9月末日時点での大会展望です
【追加情報】木村皆斗(茨城)が欠場となった。関東勢は今回の若手エースを失って、かなりの戦力ダウンとなる。代わる追加は3節連続でGⅢに出走することになる伊藤稔真(三重)で、中近勢には歓迎材料。(10月9日加筆)
■ガールズ展望 復調した児玉に敵なし
調子を上げてきた優勝候補の児玉碧衣
児玉碧衣(福岡)が断然のV候補。年初までは気持ちの面で盛り上がらず成績も落としていたが、春からは安定。最近は練習にも身が入り、レースではダッシュ力、持久力ともに抜群。ここへも好調をキープして乗り込むはずで、負ける要素はほとんどない。
相手は自力型だと太田美穂(三重)と熊谷芽緯(岩手)か。ただし太田は9月の玉野で2走にわたって児玉に力の差を見せつけられた。熊谷も今年まだ3Vと成長途上。児玉を脅かすまでには至らないだろう。
マーク技術だけでなくタテ脚も確かな那須萌美
9月に2Vと勝負強さを発揮している當銘直美
自在型だと那須萌美(宮崎)、當銘直美(愛知)、石井寛子(東京)が上位。那須は8月の宇都宮のGⅠで落車して、復帰後の3場所ではわずか2勝。調子を戻せるかがカギ。9月の當銘は2Vだが、12走して3勝だけ。勝負強さは認めるが、昨年の安定感はない。石井は6月の岸和田GⅠで落車してから低調だったが、8月の取手でまた落車。そこから9月は3場所欠場した。ここに出場してきても厳しい戦いになるとみる。
地元の大分勢は是永ゆうきと羽田野愛花が出場予定。ともにまずは準決入りを目指す。
※9月末日時点での大会展望です
【追加情報】自力型で今期2Vの畠山ひすいが追加参戦する。地元の川崎からの慌ただしい日程となるが、好走して勢いをつけてくるなら上位争いも。(10月7日加筆)