
創業50年を超える「天下一品」。スープが独特の「こってりラーメン」で多くのファンを持つ有名ラーメンチェーン店だが、最近では「天下一品で食べる動画はバズる」と話題になっている。
「天下一品」の動画がバズる理由
「天下一品」(通称、天一)は1971年に京都で屋台から始まったお店で、いまや全国221店舗(2023年9月1日現在)を展開する大人気チェーンだ。

創業の地、京都にある天下一品総本店
特に「こってりラーメン」は、その濃厚なスープと旨味の虜になるファンが続出。1日16,000kgも使う鶏がらと十数種類の野菜などでじっくりと炊き上げたスープは他では食べられない唯一無二の美味しさだ。
有名人にも熱狂的なファンが多く、過去には「アメトーーク!」(テレビ朝日・ABC系)の特集「天下一品芸人」で多くの芸人が天下一品愛を語った。今年1月に放送された「マツコの知らない世界」(TBS系)ではLUNA SEA、X JAPANなどで活躍するギタリストSUGIZO氏が出演し、そのこだわりの食べ方を熱弁するなど、これまた話題となった。
また、YouTubeでは数多くの動画がアクセスされている。
・【キラー蕎麦屋】後藤の止まらない天下一品愛(ざっくりYouTube):480万再生
・SugizoTube「天下一品 in 京都」(SUGIZO):106万再生
・【明日からマネできる】FUJIWARA流の天下一品の食べ方(FUJIWARA超合キーン):102万再生
・【ひとりラーメン】どうしても天下一品が食べたかったので…。(中川翔子の「ヲ」):88万再生
・師走の京都、天下一品総本店(徳井video):54万再生
・ママ念願の【天下一品】初こってりラーメンすする(はなわチャンネル):40万再生
(再生回数は2023年9月1日時点)
なぜこれほどまでに「天下一品」の動画がバズるのか。今回はその理由を解説していきたいと思う。
バズる天一動画の火付け役は……
「天下一品」は看板メニューである「こってりラーメン」の唯一無二の美味しさから、圧倒的なファン数を誇る。他に替えのきかない一杯を提供しているということもあり、そのファンの熱量も高い。天下一品に関する動画がバズっていることについて、広報担当者も喜びを隠さない。

こってりラーメン 撮影/井手隊長
「率直にファンの方々の熱量が絵として伝わって嬉しいです。皆さんの思いやこだわりが強いことがポイントだと思います。
同社が運営する公式の「天下一品ファンメディア」のほか、非公式ファンクラブ、そしてエリアごとのファンの集いなど、全国に熱狂的なファンがおり、各店舗ごとに少しずつラーメンの個性が違うことから、おすすめの食べ方、サイドメニューやトッピングの研究など、常に新たな情報がアップデートされている。
そんななか、バズる天一動画の火付け役といえばギタリストSUGIZO氏のYouTubeだった。2018年夏、京都総本店に長年通い続けるSUGIZO氏から、「自身のYouTubeで撮影したい」と問い合わせが届いた。公開された動画は一気に火がつき、すぐに社長(現会長)の目にも留まったという。

YouTube「SUGIZO」チャンネルより
「あまりにもすごい反響だったので、それをきっかけにSUGIZOさんをCMキャラクターに抜擢させていただくことになりました。異色なキャラクターということで話題になり、その後YouTuberからの問い合わせが増えてきました。
今では有名になったラーメンYouTuberの『SUSURU TV』の記念すべき第一弾の動画も実は『天下一品』だったんです」(天下一品グループ・広報担当)
おすすめの食べ方がないから生まれたブーム
店舗の壁におすすめの食べ方を貼り出すなど、お店側がお客に対して食べ方を指南するところも多いが、「天下一品」では特におすすめの食べ方を提示せず、お客に任せている。動画を見ていると、いろんな好みの食べ方があり、千差万別で見ていて楽しい。前出の広報担当がいう。
「お客さまがそれぞれの食べ方、好きな食べ方を披露して、ブームの広がりを感じます。また、お客さまがお気に入りの店舗である“MY店舗”を持っていらっしゃるのも特徴です。
『天下一品』は動画がバズり始めた、はるか昔からこういう広がり方をしてきました。
・単品か定食かを決める
・スープを決める
・麵の固さを決める
・トッピングを決める
・サイドメニューを決める
これだけでもさまざまな食べ方が考えられるが、さらに卓上調味料やサイドメニューの食べ方など、細かなこだわりも含めていくと可能性は無限だ。
「天下一品」歴30年以上のSUGIZO氏は「マツコの知らない世界」でこだわりの食べ方をこう紹介した。
・スープ多め
・麺バリカタ (写真撮影をしている間に麺がベストの固さになる)
・ねぎ大盛り
・胡椒バシがけ
・食べる前に底から混ぜる
・トッピングは味玉とキムチ(キムチは途中で味変に使う)
・京都総本店限定の「コロッケ」と一緒に食べるのもオススメ

総本店に来店した際のSUGIZOさん 天下一品公式インスタグラム@tenkaippin_jpより
筆者が実際に見て驚いた食べ方だと、餃子をラーメンスープに浸けながら食べているお客もいた。
裏メニューから商品化したメニュー
「こってりラーメン」の熱狂的な人気から、そのスープを使った派生メニューがたびたび発売されていることも面白い。
歴史を紐解くと、これまでにも「超こってり」「コップdeこってり」「スープライスセット」「全力!脱力こってりチーズパンラーメン」などが一部店舗で発売されてきた(※「超こってり」は発売終了)。

「コップdeこってり」
また、今年1月に発売された「こってり天津飯」には驚いた。天津飯の餡の代わりに自慢のこってりスープを回しかけた、今まであるようでなかった斬新な一品。これも実は利用客からの要望で裏メニューとして提供したことがきっかけだった。

「こってり天津飯」
さすがに人気の「こってり」のスープは天津飯にもよく合っていて美味しい。ラーメン以外で味わうことで、改めてスープの魅力を感じることができる。単品で570円(税込 ※価格は店舗によって異なる)という破格の安さで提供しているのもポイントだ。
そして 極めつけは6月に発売された「こってりMAX」だ。
しかし、「天下一品」の究極のこってりと言われては食べないわけにはいかない一杯だ。スープにレンゲが立つレベルの濃厚さから、ネット記事やYouTubeなどでも話題で、バズる動画の一つのネタになっている。

「こってりMAX」 撮影/井手隊長
こういった絵力の強い商品は、見た目だけで内容が伴っていないという場合も少なくない。しかし、「天下一品」はこうした話題が先行しがちなメニューもしっかり美味しい。大量の鶏がらと野菜をじっくり煮込んで作ったオンリーワンのこってりスープは、濃度をMAXにしてもやはり美味しい。
「『こってりシリーズ』は、お客さまのアレンジレシピや食べ方から商品化するといった流れもあります。『こってり鍋スープ』もお客様の要望から商品化に至りました。これからもお客さまの自由な食べ方、ご要望やアイデアとともに成長させていただいています」(広報担当)
「天下一品」のこってりラーメンは創業者である木村勉会長が試行錯誤して作った、いわば発明品だ。発売当初は好き嫌いがハッキリ分かれたラーメンを、今日までブレずに続けてきたこともすごい。
取材・文/井手隊長