女性が男性より甘いものが好きなのにはワケがある…安易な糖質制限が女性にとって危険である身体の仕組みとは?
女性が男性より甘いものが好きなのにはワケがある…安易な糖質制限が女性にとって危険である身体の仕組みとは?

女性のための栄養学を研究し、体調不良にまつわるお悩みを食事で改善してきた管理栄養士のあこさん。あこさんによると痩せたいからといって、安易にファスティングや糖質制限に手を出すのは“女性”にとっては危険だという。

その理由とは?

書籍『おいしく食べて、体ととのう まいにちの栄養学』より一部を抜粋・再構成しお伝えする。

筋肉量の違いが生む糖質への欲求の差

男性より女性のほうが甘いものが好き。

もちろん男性でもスイーツ好きな人はいますが、チョコレートの催事に女性がたくさん並んでいたり、カフェでスイーツとコーヒーを楽しんでいたりする女性が多い点を見ても何となく頷けることです。実際、体のしくみから紐解いていくと、そこには納得の理由があるのです。

理由の1つは筋肉量の差。筋肉には糖質を貯金する能力があり、運動時に筋肉中の糖質(グリコーゲンと呼びます)が特に利用されます。しかし、女性は男性よりも筋肉量が少ないためグリコーゲンを貯蔵する能力も低くエネルギー切れを起こしやすいのです。

そのため、ハイキングやジョギングをしたり、ウインドウショッピングでいつもより多めに歩いたりすると「お菓子やパンが食べたいな」と感じやすくなります。

鉄が不足するとさらに糖質が欲しくなる

また、女性は月経があるために、鉄の消費が男性より激しいのも大きな理由の1つ。有経女性の場合は1か月で50㎎前後もの鉄を損失することがあります。鉄は糖質をエネルギーに変えるために必須です。

鉄が不足していると食べた糖質から十分なエネルギーを生み出せず、またすぐに糖質を欲するようになります。よって、女性がすぐにカフェでお茶をしたくなるのも、ドラッグストアやコンビニでお菓子をつい買ってしまうのも自分を守るための大切な反応。

とは言え、お菓子を好きなだけ食べるのもまた不調の原因になってしまうので、「男女の体のしくみの差」をしっかりと認識し、適度な運動をしつつ女性に合った食事を身につけていくことが、元気に軽やかに日々を過ごしていくためには必要だと考えています。

「食べない」選択は不調を引き寄せる 女性の健康はまず食べることから

筋肉量や鉄必要量の差の影響もあり、男性と女性は「合う健康法」も異なります。その代表例はファスティングや糖質制限。この2つは、あえて自分に負荷をかける「攻めの健康法」です。

特にファスティングは、一定期間食事を摂らないことによりオートファジー(細胞の中にあるいらない物質を分解するしくみ)を促し、細胞を若返らせるというすばらしい健康法ではあるのですが、この健康法で効果を得られるのは、次のような条件などをクリアした方だけです。

①鉄不足がない
②筋肉がしっかりとある
③日頃から糖質・たんぱく質を適度に摂取している
④BMIが20以上ある
⑤空腹時に手の震えや冷や汗が見られない

この5つだけでも、日本人女性の多くはすべてクリアするのは難しい。

これらの条件をクリアしないままにファスティングをしても、うまく脂肪をエネルギーに変換することができず体は飢餓状態になってしまい、頭痛や吐き気に悩まされたり、ずっと食べ物のことを考えて、つい甘いものに手が出てしまったりします。

また、たんぱく質が不足すると消化酵素※が減少するため、ファスティングによりたんぱく質不足に拍車がかかった場合、食事を再開すると胃が重たい、胃痛がするといった体調不良も出てきます。

そのため、女性がファスティングをする際には十分な体作りが必要で、安易にやるべきではない健康法だと考えています。

※栄養素の分解を促す触媒のような役割を持つ酵素。おもにたんぱく質で構成されるため、たんぱく質が不足すると酵素がきちんと作られず、消化不良を起こします。

糖質は生きるエネルギー源

糖質制限についてもあまりおすすめしません。その理由は、肝臓や赤血球のように「エネルギーとして糖質しか利用できないもの」が存在するから。糖質制限は一気に体重が減る一方で、リバウンドしやすい健康方法でもありますし、糖質制限食を続けると、心筋梗塞による死亡リスクが上がるという研究結果も報告されています。

女性はまず、自分の体に必要な栄養をこまめに取り入れる。

そして何でも食べることができ、がっつり筋トレができてうつくしい筋肉がつくくらいになったらファスティングにチャレンジしてみる。この順序をぜひ覚えておいていただきたいなと思います。

現代人は栄養不足。女性のダイエットは食べたほうがうまくいく

「じゃあ、やせたい女性はどうすればいいの?」

そうですよね。体重を適切に管理して「きれいでありたい!」というのはすべての女性の願いだと思います。

私がおすすめしている体重管理方法の1つが「食べるダイエット」です。特に、40歳を過ぎたら絶対に食べるのがおすすめ。なぜなら代謝が落ちてくる分、食べたものを効率よく代謝させる必要があり、代謝をスムーズに回すために必要なのが栄養素だからです。

食を自分で選んで食べられる時代になった今、私たちは無意識のうちに手軽でおいしいものを選びがちです。そのため、現代人の多くは栄養不足(新型栄養失調)だと言われています。

また、健康意識が高いことで逆に栄養に偏りが出ているパターンも増えています。現代人は特に食物繊維を含めた炭水化物や、ビタミン、ミネラルの不足が目立ち、女性の場合は食物繊維、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ビタミンB群やビタミンDなどが不足しがちだと言われています。

これらの栄養素は代謝と関係しているものが多く、さらには腸内環境や血糖コントロールにも影響を与えます。

不足すると代謝がうまく回らないだけでなく、血糖値が乱高下したり、腸内環境が乱れる原因にもなります。

血糖値や腸内環境は体重管理にも関わっているため、この状態を改善することが女性のダイエットには最適です。

図/書籍『おいしく食べて、体ととのう まいにちの栄養学』より

おいしく食べて、体ととのう まいにちの栄養学

あこ
女性が男性より甘いものが好きなのにはワケがある…安易な糖質制限が女性にとって危険である身体の仕組みとは?
おいしく食べて、体ととのう まいにちの栄養学
2024/12/171,694円(税込)256ページISBN: 978-4816376498

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それだけで、おのずと不調がやわらぎ、体がラクになっていきます。

女性のための栄養学を研究し、体調不良のお悩みを食事で改善してきた管理栄養士のあこさん(「あこの栄養学」YouTube登録者数23万人/2024年11月時点)。
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