ONE×設楽清人の注目の新作マンガ『バグエゴ』…作品が生まれたきっかけとは?「想像はするけど絶対に実行しないことは世の中にはたくさんある」
ONE×設楽清人の注目の新作マンガ『バグエゴ』…作品が生まれたきっかけとは?「想像はするけど絶対に実行しないことは世の中にはたくさんある」

2025年2月18日、WEBマンガサイト「となりのヤングジャンプ」で連載中の話題作『バグエゴ』のコミックス1・2巻が発売される。原作は『ワンパンマン』『モブサイコ100』などでお馴染みのONE、作画は『忍ぶな!チヨちゃん』『カタギモドシ』などを手掛ける設楽清人だ。


奇抜で斬新な設定、圧倒的な画力で描かれる変幻自在の世界観……。二人の天才はどのように『バグエゴ』を生み出したのか、その創作秘話を本人たちに聞いた。(前後編の前編)

「現実の中で見つけられていないコマンドがあったら…」ウラワザをテーマにしたきっかけ

――『バグエゴ』は「ウラワザ」という方法で現実世界にさまざまな“バグ”を引き起こす高校生たちの物語です。どんなところからこの話を思いついたのでしょうか?

ONE 例えば「この場で突然踊ってみたらどうなるんだろう?」とか、変な行動をとった先の結果を意味もなく想像することが人にはあると思うんです。想像はするけど絶対に実行しないといったことが世の中にはたくさんあって、実行した先の結果は予想できるけど、誰も実際に試すことはない……。

それがレトロゲームなどで普通ならやらない行動の先にある“バグ”というものにリンクして、もしかしたら現実の中で見つけられていないコマンドがあったら面白いかもしれないと考えました。

あと映画『マトリックス』のような世界観がすごく好きなんです。もしも世界が設計されたもので、その設計にほころびがあったら面白いんじゃないか……みたいなことを考えたんです。

それに“ウラワザ”という言葉自体もいろいろ定義できると思っていて、ズルい・ズルくないは別にして、例えば裏口入学とか、正道ではないやり方。そんな一般的なウラワザをさらに超越する、世界のシステムそのものへのウラワザを握ってしまった何の変哲もない男の子がいる、というところから何か作りたいなと……。

――設楽先生はこのお話がきたとき、どんな心境でしたか? またONE先生から『バグエゴ』のプロットをもらったときの率直な感想もお聞きしたいです。

設楽 すごい光栄なことですよね。でもすごいビビりました(笑) ONEさんの作品は大好きなので。

ただONEさんとは以前にお会いしたことがありましたし、共通の友人も何人かいたので、そこまで遠い存在という感じではなく。とはいえお話がきたときには「自分でいいの!?」と思いました。

『バグエゴ』に関しては、まず設定が面白いと思いました。超能力でもないし魔法でもない。現象がテーマっていうのがすごいですよね。そんな日常に潜むバグ、いわゆる“秘密”を共有する高校生という点に共感しましたし、面白くなりそうだなと。描きながらワクワクしている自分がいます。

お互いにファン同士 相思相愛のスーパータッグ結成!

 ――ONE×設楽清人のタッグはどのように実現したのでしょうか?

ONE 知り合う前から設楽さんは個人的に好きな作家さんで、連載もチェックしていましたし単行本も持っていました。そして今回、偶然なんですけど僕の担当編集の大熊さんが設楽さんも担当することになって、増刊号の企画で設楽さんに作画をお願いできる可能性が浮上したので、もしよければ……とお願いしたんです。

――始まる前から実は“相思相愛”の関係だったんですね! ONE先生は『バグエゴ』の話作りにおいて設楽先生の作風やこだわりなどから影響を受けることもありますか?

ONE それはありますね。まず読み切りを作る際、スケジュールにあまり余裕がなかったので、打ち合わせでかなり話し合い、元々のプロットを軸に、設楽さんと作品担当の大熊さんと相談し直して三人で土台の固め直しをしました。

最初に僕はバグに焦点を当てて、ちょっと怖い、どこか不気味な物語というところまでしかなくて、もしかしたらキャラクターは使い捨てのような感じになりかねないな、とも考えていたんです。

でも設楽さんには“友情”とか、そういったものにフィーチャーしたいという気持ちがあることが分かって、確かにバグ自体が無機質な存在なので、人の体温を感じられるようなキャラクターの優しさや、そのときに起きる感情も描いた方が対比が強まるなと思い、意識するようになりました。

――確かに『バグエゴ』は「ウラワザ」を通して繋がった男子高校生コンビ・羊谷&黒堂の友情物語という面もありますね。設楽先生は二人の主人公をどんな感情で描いていますか?

設楽 いつも黒堂にワクワクしています。彼は羊谷を振り向かせたいがためにウラワザを使うんですけど、でもウラワザって危険なものなんですよね。それを分かっていながらも、黒堂には他に友達を作る方法がなかった……というところにゾクッとくるものがあります。

第3話で二人が一緒にゲームをするシーンがあるんですけど、それがすごいお気に入りです。多分これが本来、黒堂のやりたかったことなのかな、と。でも彼はずっと自分に自信がないから、なんとなく楽しめていないような気がするんです。そんな黒堂のキャラとしての成長みたいなものを、ONEさんがどう作っていくのかなというのが楽しみです。

完成原稿を見たとき興奮してます」(ONE)

――キャラクターデザインなどはONE先生が考えたものなのでしょうか?

ONE 関わる作品ごとによって自分の仕事内容や制作環境は異なるのですが、バグエゴに関しては、デザインは設楽さんに全て担当していただいています。キャラデザは明確に「これだ」というものが僕の中になかったので、ほとんど設楽さんにお任せです。

最初に黒堂は身長が低めで、近寄りがたいというか、何を考えているか分からないようにも見えるし、何も考えてないようにも見える、そこに羊谷がズカズカ話しかけていく、みたいなイメージは話していました。

――羊谷をはじめキャラクターの表情がとても豊かなのが印象的です。ONE先生は文章のみのプロットを設楽先生に送っているという話ですが、表情の指定などもしているのでしょうか?

ONE プロットと打ち合わせでキャラの感情や空気感の伝達はしていますが、あまり細かい部分の表情指定まではしていません。

設楽:場合によりますね。例えば「羊谷が口をパクパクさせている」みたいに書いてあるときもありますし。

ONE そういえば「キメ顔で」って書いて、キメ顔とは何なのかを設楽さんの解釈に委ねちゃったりしてます。そうするとめちゃくちゃ「これだ」というキメ顔を描いてくれて、完成原稿を見たとき興奮してます。

後編に続く。ONEさん、設楽さんが少年時代にハマったゲームとは……?

取材・文/集英社オンライン編集部

『バグエゴ』

原作/ONE 作画/設楽清人
ONE×設楽清人の注目の新作マンガ『バグエゴ』…作品が生まれたきっかけとは?「想像はするけど絶対に実行しないことは世の中にはたくさんある」
『バグエゴ』
2025年2月18日
編集部おすすめ