全国No.1風俗嬢の一日に密着「新規予約は早くて3~4か月先」常連インタビューで見えた客の心をつかむワザ(前編)
全国No.1風俗嬢の一日に密着「新規予約は早くて3~4か月先」常連インタビューで見えた客の心をつかむワザ(前編)

宗教2世の生まれで、元逆ナンパ師で、25歳で風俗店店長を務めるものの、激務のため精神科病棟へ入院。そこから2023年には風俗嬢として全国No.1に輝き、YouTuberとしても23万人の登録者を持つ、まりてんさん。

そんな彼女の新刊『聖と性 私のほんとうの話』が話題になっている。
異色の経歴を持つ風俗嬢の出勤日というのは、どんな1日なのだろうか。まりてんさんの1日に密着すると、そこには想像もできない人間ドラマが広がっていた。〈前後編の前編〉

Googleスプレッドシートに書かれていたのは……

2月某日。朝9時に全国No.1風俗嬢「まりてん」さんの自宅を訪ねた。都内のとある駅から歩くこと10分。閑静な住宅街に、まりてんさんの自宅はあった。

リビングに上がらせてもらうと、デスクトップPCの画面が点いているのが目についた。画面を覗くと、Googleスプレッドシートが開かれていた。

「Googleスプレッドシートでお客さんの予約管理をしてます。お会いする日付、お客さんの名前、何時から何分間の予約か、受けとる金額。それから、初めて会った日付を備考欄に記載して、スケジュール管理をしています」(まりてんさん、以下同)

スプレッドシートの本日の予定のところを見させてもらった。

10:00~12:00(120分) Sさん 五反田
13:00~16:00(180分) Rさん 浅草
17:00~19:30(150分) Kさん 歌舞伎町
20:00~23:00(180分) Tさん 歌舞伎町

朝の10時から23時までの13時間。

計4人の予約が入っているようだった。間の移動時間を考慮すると、とてもタイトなスケジュールだ。4人目のお客さんだけ備考欄に「新規」と書かれていた。

──まりてんさんの新規の予約って取れるものなんですか?

月5,000円のファンクラブに入ってもらうと、3~4か月先の予約を取ることができます。私に会うまでは、ファンクラブの退会は禁止です(笑)。

──今日は13時間の出勤ですが、いつもこんなに働いているのでしょうか?

いつもは1日に1人だけお会いする日が多いですね。一昨日はお客さんとディズニーランドでお泊まりをしました。昨日はまた他のお客さんとプロサッカーチームの試合観戦をしました。だから、今日みたいに立て続けに4人と会う日は珍しいですね。

──まりてんさんとディズニー1泊って、いくらくらいかかるんですか……??

100万円くらいですね(笑)。

一番大事な持ち物は?

リビングでそんな会話をしていると、自宅近くに、まりてんさんが所属するデリバリーヘルス店の送迎車が到着した。1人目のお客さんが待つ五反田のラブホテルまで向かうとのことで、送迎車に同乗させてもらうことにした。

送迎者に乗ると、まりてんさんがダウンコートからスマホを取り出した。

画面を覗かせてもらうと、自身のYouTubeの過去動画をスマホのアプリで切り抜き、Xにその動画を投稿しているようだった。

──移動中はゆっくりしないんですか?

移動中とお風呂に入ってる時間は、SNSの更新をするって決めているんです。

──LINEも返信されているんですね。今から会うお客さんとの連絡ですか?

3人目に会うお客さんからLINEが来てて。今、京都駅から新幹線で東京に向かって来るらしいです(笑)。

──お会いする前からLINEでやりとりもするんですね。

そうですね。あと、新規のお客さんにリマインドの連絡も送ってます。

──なるほど。ちなみに、カバンの中の持ち物はなんですか?

持ち物は、化粧ポーチとお釣りのお金くらいですね。

──もっといろいろあるのかと思いましたが、意外と身軽なんですね。

一番大事な持ち物は、心ですよ(笑)。

そんなやりとりをしているうちに、送迎車が五反田のラブホテル前に到着した。送迎車から降りると、「じゃっ、いってきま~す!」と軽い足取りで、まりてんさんは1人目のお客さんが待つラブホテルの中へと消えていった。

まりてんさんがお客さんと過ごす120分の間、近くの喫茶店で待機することにした。11時50分を過ぎたころ、「そろそろ出ます!」とまりてんさんからLINEが届いた。急いでラブホテルのほうへ戻ると、まりてんさんとお客さんがラブホテルから出てすぐのところに佇んでいた。

「やばいことが判明したんですけど! 私、予約の管理を間違えてて。13時に浅草で会うと思ってたお客さんの予約が、本当は1ヶ月先でした(笑)。だから、めっちゃ暇になっちゃいました(笑)」

こうした予約の管理ミスは珍しいことだそうだ。思わぬ時間ができたので、今プレイを終えたばかりのお客さんにインタビューができないかお願いすると、快諾してくれた。まりてんさんと120分間どのように過ごしていたのか。また、まりてんさんのどこに惹かれているのか。近くの喫茶店に入り、話を伺うことにした。

「プレイの後ですね」

突然の依頼にも関わらず快く取材を受けてくれたのは、関東の某県で小児科医として働く、医者のSさん(50代)だ。

──まりてんさんとは、知り合ってどのくらいでしょうか?

S(以下同) 7年くらいですね。

──最初の出会いは?

その頃、まりてんさんは池袋で風俗店の店長兼キャストをやっていて。面白い子がいるなと思って、予約して会いに行きました。少し話しただけで、「お医者さんですか?」と職業を当てられたことが、印象に残ってますね。

──今では、どのくらいの頻度でまりてんさんと会ってるんですか?

まりてんさんが失踪して精神科病棟に入ってしまったときや、コロナ禍のときは会えてないのですが、コロナ禍が明けてからは1か月に1度くらいの頻度で会ってます。整体とか美容院に行くみたいな感覚ですね。

──まりてんさんの、どんなところが魅力的ですか?

なんでも開けっぴろげに話してくれるのがいいですね。それが演技なのか素なのかもよくわからない。だからこそ、こちらも話しやすいですね。

──普段、まわりに話しやすい人はいないのでしょうか?

医者という職業柄、プライベートでも医者として相談されたりすることが多くて。リラックスして話せる人ってなかなかいないですね。

──たとえば、今日は2人でどんなお話をしてたんですか?

今日は発達障害についての話をしていました。

──それはどんな話でしょうか。

お互い発達障害みたいなとこあるよねって。なにを持って障害とするかって話はあるんですけど。

“標準偏差”ってわかりますか? 標準偏差で言うと、だいたい100人いたら上の2~3人と下の2~3人を2SDって言うんですけど。検査でも2SD超えると異常値だって言うんですよね。

医者ってたぶん、学校で100人いたら成績がトップ1~3番目くらいじゃないですか。そう考えると医者って2SD超えの集まりだし、まりてんさんも風俗嬢で全国No.1になってるから、業界の中で2SD超えてるから異常者だよね、みたいな話をしてましたね。

──なるほど。そういった話は、プレイの前に話すのでしょうか。

プレイの後ですね。

──つまり、今のは全部ピロートークでの話だったんですね。

そうですね。

小児科医という職業柄か、それとも、プレイの後という状況からか、Sさんは凛とした表情で穏やかにインタビューに答えてくれた。

インタビューを終えて喫茶店を出ると、時刻は13時だった。歌舞伎町のラブホテルで17時スタートの次のお客さんと会うまで、まりてんさんは一度自宅に帰るということだった。

──家に帰ってお昼ごはんを食べるのでしょうか?

まりてん(以下同) 出勤中はご飯を食べないようにしてます。もしお客さんがご飯を振る舞ってくれることになったときに、一緒に食べれるようにしておきたいので。

──では、家に帰ってなにをするのでしょうか?

YouTubeの動画のサムネ作成や、ファンクラブの月1イベントの準備などをしてきます。また17時に歌舞伎町のホテル前で会いましょう!

そう言葉を残すと、まりてんさんは目の前でタクシーに乗りこみ、颯爽と帰宅していった。

#2に続く

取材・文・撮影/山下素童

〈プロフィール〉
まりてん

1990年愛知県生まれ。妹が亡くなった影響で母親が新興宗教に入信したことで、娯楽や交際が制約されていた、いわゆる「宗教2世」。2009年、美術大学のデザイン学部へ進学。大学4年生の冬にデリバリー・ヘルス店に入店し、3ヵ月キャストとして勤める。2013年、美術大学を卒業し、広告制作会社にWEBデザイナーとして就職。3年半で退社。2016年、25歳の時に激戦区東京・池袋にて風俗店を立ち上げる。池袋西口ホテル街を中心にデリバリー・ヘルスを運営。2019年3月、経営のストレスから自殺未遂。休養後に大手事業会社に中途社員として就職し、WEBプランナーを務める。2020年より風俗嬢に復帰し、傍らYouTubeチャンネル『ホンクレch‐本指になってくれますか?‐』を開設。現在登録者23万人突破。

『聖と性 私のほんとうの話』

まりてん
全国No.1風俗嬢の一日に密着「新規予約は早くて3~4か月先」常連インタビューで見えた客の心をつかむワザ(前編)
『聖と性 私のほんとうの話』
2025年1月17日2420円(税込)176ページISBN: 978-4065384411ミスヘブン全国1位!数奇な半生を送ったカリスマデリヘル嬢がはじめて明かす宗教2世、男性観、マーケティング、プロモーション術! 日本最高給の風俗嬢のお仕事は「心の接客」だった――。 なぜ男たちは彼女に惹きつけられるのか? 「まりてん」の秘密のすべてがここにある。 とくにいまの世の中では、ネットリンチのように、「やらかしてしまった人」に対するまなざしが厳しすぎると感じています。清廉潔白さばかりを求められる世情ではありますが、人間らしさとは本来、矛盾を抱えてこそのものではないでしょうか。その人間らしさに触れることができる風俗のお仕事(=とくにピロートーク)が私は好きでたまりません。 過去にいろいろなインタビューを受けてこういう話を繰り返していると、記事につくコメントには決まって「この仕事が楽しいなんて病んでる」と書かれます。 そもそも100パーセント心身ともに健康な人間なんているのでしょうか? 病的な部分こそ人間らしさであり、愛おしいのに。その愛おしさは宗教に馴染めなかった自分を肯定してくれるものだからこそ、なおさらなのかもしれません。 (本文より)
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