
いよいよ大谷翔平の2025シーズンが開幕する。昨年の50―50を経て、今季は二刀流が解禁となるが、チームメイトやスタッフたちは、これをどのように受け止めているのか。
現地のドジャース番記者が綴った『SHOーTIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇』より一部を抜粋、再構成してお届けする。
「強いていえば、盗塁が減るくらいじゃないかな」
驚くべきことに、ドジャースのアシスタント打撃コーチであるアーロン・ベイツによると、大谷は2024年に入るに際して、打者としてのルーティーンを変えるつもりはないと言ってきたという。ブルペンに行く必要がないため余計に時間ができたはずなのだが、その時間を打者としての練習などに加えることはなかったというのだ。
「ショウヘイは同じルーティーンを守ると自ら宣言していたし、投手として登板しつつ打つときと同じような時間の使い方をしているね。今は投手として時間を使う必要がないからといって、打撃に関して何か余計なことをしているというわけではないんだ。
だから、来年もスムーズに投手として復帰できると思う。肉体的に、今年よりは少し疲れるかもしれないけど。でも同時に、来年は投手としても調整するからね。だから打撃成績がそれで大きく落ちるとかは心配していないよ。強いていえば、盗塁が減るくらいじゃないかな」
これはドジャースのスタッフチームの共通認識である。大谷は2024年に59盗塁を記録して衝撃の史上初の50-50を達成したが、2025年はそれほど積極的に盗塁を試みることはないだろう。フレディ・フリーマンはこう話した。
「ヤツに限っては何をやらかしてもオレはいっさい驚かないよ。
仮に今年の成績から多少落ちたとしても、まだリーグ最高の選手のままなんだぞ。それを成績不振という言葉で表すこと自体が間違いだよ。毎年状況も違うわけだし。われわれ打者は、誰でも打率.320とか、.315とか、.330とか打ちたいと思っている。
それでも選手生活の間には絶対に波もあるし不調もあるんだ。それでも選手生活は続いていく。そして持てるものすべてを発揮しようと力を尽くすだけさ」
ドジャースのベテラン投手、クレイトン・カーショーは、大谷が2025年に投手として復活することを「ワクワクしている」と言う。
「つねづね、いい投手だとは思っていたよ。オレだけではなくチーム全体が願っているのは、投手を再開するからといって、攻撃面の破壊力がなくならないでほしいということだよ。とはいえ、多少は打撃成績も落ちると思うけどね」
「僕はまだ打者として成長が続いていると思います」(大谷)
ロバーツ監督の見解としては、大谷は「極度に打撃のみに集中した」からこそ、2024年の圧倒的な数字が出せた。逆にいえば、この集中力さえ維持できれば、2025年に二刀流に戻っても高い次元での活躍が期待できるのだという。
「もっといい打者になりたいとつねに貪欲で、あとはストライクゾーンの管理だけなんだ。来年どこまでいくかな。同じマインドセットで、投手としてもやっていけるとしたら、今さら言うまでもないが、一世一代の名選手ということになるよ」
大谷も同じような目論見を立てているようだ。投手に復帰したからといって、せっかく2024年に打者としてつかんだ手応えや技術向上分は手放したくないということだ。
大谷自身もこう語った。
「今年は運動量が少ないですから、回復しやすかったというのは疑問の余地がないと思います。加えて、毎年技術は高まっているわけで、僕はまだ打者として成長が続いていると思います」
打撃コーチのロバート・バンスコヨクは、大谷が二刀流に復帰することにより、打撃面でどのようなインパクトがあるか現実的な見解を示してくれた。
「誰もと同じように、私も試合で勝ちたいし、ショウヘイが投手として登板すれば、リーグ有数の名投手なわけだ。だから、われわれが試合に勝つことがいちばんなんだ。彼の打撃がどうなろうと、そのときはわれわれ全員で対処すればいいだけだ。だが、投手として登板してくれれば、われわれチームにとってはメリットしかないと思うよ」
大谷のキャリアはすでに唯一無二の軌道を辿っており、今後、二刀流選手としてどうなっていくのかは誰にもわかるはずがない、とブランドン・ゴメスGMも強調する。
「ショウヘイが10年間連続で50-50をできるのか?そんなバカな賭けは、相手がカーショーだろうとショウヘイだろうとする気はない。
「大谷が投手として初登板する日は、全米が祝日になるぞ」(ベッツ)
アンドリュー・フリードマン編成本部長は、大谷がプロスポーツ史上最高額の契約をしたからといって、無理に二刀流選手を続けなければならないとか、今後10年の大部分を投手としてやってもらわなければならないといった考えを完全に否定した。
大谷がべつに7億ドルの「DH」になってもかまわないし、いつか投手を断念することになってもかまわないと、フリードマンは考えているという。
「もちろん、ショウヘイが投手として大活躍しつつ打席でも打ちまくってくれると私は確信しているよ。単純に『Xイニング投げてくれたからいい投手だ』といった見方で評価しているわけではないんだ。毎年状態は変わってくるし、そのときそのときでショウヘイは必ずできることを全力でやってくれる。今こうして座っていて、期待しているのは、とにかくできることをやってほしいというだけだよ。
もしわれわれ全体で調整が必要なら、一緒に調整していけばいい。仮に投手断念の日が来たとしても、私はあの契約を結んだことを後悔することはないという確信だけはある。
あと何年、二刀流を続けられるのかは私にもわからない。だが、かつては遠くから見守っていて、今はこうして毎日間近に見ているわけだけれども、私は絶対にショウヘイが挫折する方向に賭けることはないよ。
今後も長くやっていく決意を固めているし、私のほうから短期間で終わるということはありえないよ」
ムーキー・ベッツとしては、単純に二刀流のチームメイトがいて間近で目撃できることが楽しみなのだと、自身のポッドキャストで明言した。
「オレはマジでワクワクしてるんだ。あいつがドジャースの投手として初登板する日は、全米が祝日になるぞ」
文/ビル・プランケット 訳/タカ大丸
SHOーTIME 3.0 大谷翔平 新天地でつかんだワールドシリーズ初制覇
ビル・プランケット (著)、タカ大丸 (翻訳)
しかし、開幕早々に襲いかかった悲しい大事件――。
いったい、大谷翔平は、どのようにしてメンタルとフィジカルを保ち、50―50というMLB史上初となる歴史的偉業と、悲願のワールドチャンピオンを獲得するに至ったのか。
現地のドジャース番記者が、かずかずのチームスタッフ、選手たちの証言によって明かす、生きる伝説・オオタニショウヘイの真実の肖像!