〈小1の壁〉「子どもとゆっくりできず正社員をやめた」両立できない子育てと仕事の壁に悩む親、働き方改革の影響で教師の“仕事”も負担
〈小1の壁〉「子どもとゆっくりできず正社員をやめた」両立できない子育てと仕事の壁に悩む親、働き方改革の影響で教師の“仕事”も負担

子どもが小学校に進学するに伴い、共働き世帯や一人親家庭が直面する「小1の壁」。仕事と子育ての両立が難しくなることを指し、長い間、社会問題とされている。

そこで今回、小学校教師や新小学校1年生の保護者たちを取材した。 

「都内の学童はどこも飽和状態」

子どもが保育園から小学校に上がる際に、学校生活のサポートをすることが多くなり、仕事と子育ての両立が難しくなることを指す「小1の壁」。共働き家庭や一人親家庭で多く発生する社会的な問題である。 

神奈川県の公立小学校教諭Aさん(30代男性)は「子育てと仕事の両立が難しいことは重々理解している」と前置きしつつ、現状をこのように話した。

「保護者の中には、『仕事で忙しい』というのを理由に、学校に対して協力的でない方もいます。教員の立場で言うと、持ち物の準備や宿題など家庭ですべき最低限のことは保護者の方にしっかりとお願いしたいです。

毎日の積み重ねが子どもの成長に大きく影響すると思うので、低学年の子どもには家庭でも自分で準備や宿題などができるようになるための支援をしてあげてほしいです」

では、実際に新年度がはじまり、「小1の壁」に直面する保護者たちには、どのような悩みがあるのだろうか? 

30代事務職の女性(小1女児の母)はこう話す。

「近所に私の母が住んでいるから、放課後は娘を預かってもらうことができるけど、近所に身内が住んでいない家庭はすごく大変そう。今の時代、地域で一丸となって子どもたちを見守るような文化はないですし、『学童(放課後児童クラブ)に入れるしか手段がない』と話すママ友も多いです」

一方で、「常にワンオペで子育てをしている」と話す40代自営業、シングルマザーの女性(小1男児の母)は学童についてこう話す。

「最近は学童を利用する共働き家庭や一人親家庭が増えてきているため、抽選に落ちてしまい、利用できないケースも少なくないようです。私が住む区では、シングルマザーの家庭は優先的に学童を利用することができるので助かりました。

でも、都内の学童ってどこもパンパンの飽和状態で、指導員の目も届かず子どもが楽しく過ごせる環境ではないですね」

小学校入学後半年で限界を感じ、正社員をあきらめたママも…

子どもが小学校に上がり学童保育等を利用できない場合、子どもを預けられる時間が保育園などのときと比べて短くなってしまうことも「小1の壁」の要因の一つだ。

公立小学校教諭Bさん(30代女性)も、保護者から「仕事の時間と子どもの登下校の時間を合わせることが難しい」という相談を受けることが多いと話した。

都内で教師をするCさん(30代女性)は、行政の取り組みを評価しながらもこう話す。

「今年度からウチの区では“朝タイム”を設けて15分早く児童が登校できるようになりました。とはいえ、朝の児童を見るのは教師ではなく、年配の外注職員さん。お一人でどこまで子どもたちを見れるかは少し不安ですね」

次に先輩ママの意見はどうだろうか? 小3の息子を持つ40代パートの女性はこう話した。

「息子の小学校入学当初は子育てと仕事の両立を目指していました。しかし、入学から半年後くらいに限界を感じ、正社員から時間の融通が利くパートへ移行することになりました。

『子どものこと』はもちろん大切にしてきましたが、帰宅してご飯つくって、家のことをすると、我が子とゆっくり会話する時間も勉強を見る時間もない。学校が親に求めるハードルをクリアするのはなかなか難しい」

また、前出の女性は子育てと仕事の両立の難しさについてこのように続けた。

「今まで行事や保護者会、PTA活動、子どもの体調不良などでどれだけ有休を使ったか数えきれません。学校行事の多くは平日の昼なんです。子育てする親に特化した有休制度を会社が設けるなど、子育てしやすい環境を社会が作っていけば、子育てを理由に自分のキャリアをあきらめる女性が少なくなると思う」

「学童に行っても乱暴な友だちに馴染めず、高い塾にくら替えした家庭も…」

小3の娘を持つ営業職の女性も「小1の壁」をこう振り返った。

「小学校は保育園の頃に比べて持ち物が多くなるし、家で宿題をさせなければならないので、娘が自分でできるようになるまでは、サポートするのが大変でした。

最近では教師の働き方改革の影響か、宿題のマル付けも親、夏休みのドリルも廃止されて親が全部見ないといけない。

PTAでもこれまで教師の業務だったことをずいぶんとお手伝いさせられています。

今は学年が上がって負担は減ったものの、娘が忘れ物をしたら仕事を抜けて学校に届けに行かなければいけないし、行事やPTA活動はだいだい平日にあるので、今でも子育てと仕事の両立が大変であることに変わりはないです」

慣れない環境から子どもが登校を拒否するケースもある。2年生の息子を持つマスコミ職の男性はこう答えた。

「ウチの息子は小学校に上がったときは友だちがおらず、クラスに馴染めずに、毎日『学校行きたくない』って泣いてましたね。

幼稚園は私立小をお受験しちゃう感じのところに行かせていたので、友だちが皆、お行儀がよかった。でも、今の公立の小学校は『テメー』とか『ぶっ飛ばす』とか平気でキツい言葉を使う子が何人かいて、ドンびいていました。

同じように、学童に行っても乱暴な友だちに馴染めず、高い塾にくら替えした家庭もあります。息子は途中から徐々に慣れていって今では友だちもできましたが…とにかく最初がキツかった」

環境が変わり、保護者も子どもも多くのストレスを抱えている。それでも各家庭に合った方法で「小1の壁」を乗り越えるしかないのが現状だ。 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

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