【漫画あり】料金は60分18000円、事前カウンセリングは3000円…障がい者専門の風俗店オーナーが葛藤する料金事情
【漫画あり】料金は60分18000円、事前カウンセリングは3000円…障がい者専門の風俗店オーナーが葛藤する料金事情

自身で射精するのが難しい障がい者を専門に、性風俗サービスを展開する小西理恵さん。自身もキャストとして働き、今年2月には、その経験談をベースにしたセミフィクション漫画『障がい者専門風俗嬢のわたし』も発売された。

世間では見過ごされがちな障がい者の性事情や、支援を続ける家族の実態を聞いた。〈全2回のうち2回目〉​

月々の利用客はわずか10人

──小西さんが運営している障がい者専門の風俗店では、利用前に1時間3000円のカウンセリングを設けているそうですね。一般的な風俗店にはない制度かと思いますが、一体なぜですか?

小西理恵(以下同) 障がいをお持ちの方だと、性風俗の利用経験や異性との関わりが薄い傾向にあり、利用に対しての不安や恐怖も大きい傾向にあります。

なので事前に利用意向があるのか、具体的にどんなプレイをしたいのか、カウンセリングですり合わせして懸念を取り除く必要があります。

あるいは重度の知的障がいの方で、家族から依頼をいただいた場合、周辺の方々にもプレイ内容を納得してもらう必要があります。

もちろん、息子さんに性風俗のサービスを施すことに対して、過敏になるお母さまは多いです。「息子が性的なことを覚えたら、のめり込んで暴走するのでは」と敬遠されるのです。

お母さまからすれば長年、介護してきた息子を、他人に施してもらうことに抵抗を持つのは当然です。利用者の大半に満足していただいている自負があるとはいえ、第三者が家族の関係に踏み込んで、一方的に利用を勧めることはできません。

──そのあたりは当然、慎重にならざるを得ないですよね。

もっと直接的なことで言えば、お値段の兼ね合いもあります。我々のサービスは、公的な支援を受けられないため、価格帯は一般的なデリバリーヘルスと近い60分18000円となります。

利用者の方に生活状況を聞くと、多くは一般企業の障がい者枠で雇用されていたり、就労継続支援B型で働いていたり、生活保護を受けている方が大半なので、金銭的負担は小さくないはずです。

実際に、我々の性風俗を利用する方は月10人程度。利用頻度が年1回というリピーターの方もいます。

だからこそ貴重な機会を無駄にしてほしくない。そうした想いからもカウンセリングを設けています。事前に、収入など金銭面の確認をしつつ、プレイではどんな服装や下着を身につけてほしいか、どんな設定のプレイをしたいかなど、赤裸々な内容にも踏み込んでいきます。

障がい者が巻き込まれる性犯罪の実態

──具体的なカウンセリングの内容を教えてください。

まず身体障がいをお持ちの方は、どの範囲であれば身体が動くのか、逆にこちらでどれほどサポートする必要があるのか確認します。

そこから先ほど話した、具体的なプレイ内容について話していきます。それぞれの性癖を聞きつつ、可能な範囲で要望に応えています。

プレイ内容について口頭で伝わりづらい場合は、男女2人が抱き合っているイラストを見せて説明をすることもあります。

──障がい者の方々に性的サービスを施されてきたなか、どのような点に難しさを感じられますか?

障がいを持っていることに引け目を感じて、自己肯定感が低い方に対して、どう接していいかは常に葛藤しています。当事者の生育環境や辛い経験は人それぞれなので、カウンセリングやプレイ中の短時間で、利用者の心を解きほぐしていくのは簡単なことではありません。

当店では女性も対象とさせていただいてますが、性行為に応えられないことで自信を無くしたり、男性から嫌われてしまうんじゃないかと葛藤する女性は少なくありません。

実際に私自身が女性の相手をしたこともありますし、信頼できる女性用風俗店を紹介することもありますが、本番行為は禁止されているため、女性のセックスの願望を実現するのはハードルが高い課題も残っています。

──性風俗店とは別に、障がいと性に関するカウンセリングなども行なわれているとか。

はい。「輝き製作所」という一般社団法人を立ち上げ、カウンセリングや講演、性教育も行なっています。女性の悩みについては、そうした活動を通して寄せられた声が多いです。

啓蒙活動では、障がいの有無にかかわらず、一人の人間として性欲や性を享受する権利は平等にあるとお伝えしています。

一方で、障がいがあることで、望まない妊娠につながってしまったり、気づかぬうちに性被害に巻き込まれたりするケースもある。そうした注意喚起も行なっています。

──気づかぬうちに性被害に巻き込まれているケースとは?

知的障がいのある方に起こりがちな事例ですが、男性だとSNSや出会い系サイトを通じて知り合った業者に、先に金銭を要求されて詐取されてしまうケース。あとはアダルトサイトに高額課金してしまう事例は多いです。

女性の場合だと、裸の写真を送ってほしいと要求されて応じてしまい、その後に脅されて金銭を要求されてしまうパターン。あとは詳細な契約内容を知らされていないまま、アダルトビデオに出演させられてしまう事例です。

いずれにしても根底には、当事者が性を謳歌したいという気持ちや、性生活を充実させて満たされたい願望があると考えています。

だからこそ、障がい者の性を頭ごなしに否定するのではなく、周囲が障がいに理解を持ち、節度ある関わりを保ち続けることが重要だと感じています。

障がい者を少数派として見るのではなく、社会全体が配慮を持ち、性を楽しめる世のなかになるためには何が必要かを一度考えてみてもらいたい。我々の活動がそのきっかけになってくれれば幸いです。

取材・文/佐藤隼秀 写真/本人提供

障がい者専門風俗嬢のわたし (シリーズ立ち行かないわたしたち)

あらい ぴろよ (著)、小西 理恵 (企画・原案)
【漫画あり】料金は60分18000円、事前カウンセリングは3000円…障がい者専門の風俗店オーナーが葛藤する料金事情
障がい者専門風俗嬢のわたし (シリーズ立ち行かないわたしたち)
2025/2/191,485円(税込)176ページISBN: 978-4046843227

もう見ないふりも関係ないふりもできない――

長い間、蓋をされてきた「障がい者の性」の現実や偏見に立ち向かう――。

『マツコの知らない世界』などを手掛けてきたディレクター三谷三四郎氏によるYouTube番組「街録ch あなたの人生、教えて下さい」に出演し800万回再生を記録した一般社団法人「輝き製作所」代表で現役風俗嬢の小西理恵氏と『虐待父がようやく死んだ』『女性の死に方』など、センセーショナルなテーマを描いた作品に定評のある漫画家・あらいぴろよ氏によるセミフィクション。

【あらすじ】デリヘルで学費を稼ぎ、念願の看護師になった主人公つくしは、ある動画配信で「障がい者専門の風俗嬢」の存在を知る。そこで語られていたのは、あることがないことにされタブー視される「障がい者の性」の実態だった。自分の体験とも重なり奮起した主人公は、その世界に飛び込むことを決めるが――。知的障害の弟を持つ姉からの相談、ヘルパーによる介護が必要な20代男性、メンタル不調で治療中の女性……つくしは、様々な立場のお客さんに向き合い、先輩しずくに支えられながら前に進んでいく――。

【解説】坂爪真吾(ホワイトハンズ・NPO法人風テラス創業者)

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