
4月9日からショートドラマアプリ「BUMP」にて配信が開始されたショートドラマ作品「Scooper」で、主演の週刊誌記者役を演じた阿部顕嵐(あべ・あらん)氏(27)。今年5月31日には所属グループ「7ORDER」を卒業することも発表している。
過去の経験が活かされた、週刊誌記者の演技
――今回主演を務めた「Scooper」で、阿部さんは新人週刊誌記者役を演じています。まずは率直な感想をお聞かせください。
阿部顕嵐(以下、同)いちばん感じたのは、自分とは立場などがまったく正反対だということです。ただ、役として体験してみると、仕事として純粋に楽しい一面もあるのだと強く感じました。
たとえば、スクープが撮れる瞬間。あれは演じていて本当に楽しかったですし、もし自分が本物の記者だったら、絶対に気持ちいいだろうなと思いました。
先ほどは「正反対」と言いましたが、この世界とは実はかなり密接な場所で生きているとも感じました。だからこそ、“リアル”を追求して演じようと、撮影に臨みました。
――リアルさを追求するために、具体的にどういったことをしましたか?
その世界を知るのは当たり前ですが、そのうえで記者という仕事の魅力を見つけ出すことを意識しました。
今回、僕が演じたのは「(出版社で)文芸の道に進みたかったけれど、週刊誌に配属された記者」という役です。自ら望んで記者になった方もいると思いますが、そうではない人もきっといますよね。
僕も普段は近い業界にいますが、記者の方とは敵対することも多くて、裏側まではなかなか知ることができません。でもだからこそ、記者という職業についてしっかり学び、その中にある魅力を自分なりに見つけ出しました。
――実際に記者という仕事に魅力は感じましたか?
そうですね。やっぱりスクープ記事を出すことで、記者は編集部で表彰されたりするじゃないですか。そうやって会社に認められたり、世間がその記事でざわついたりすることで、どんどんハマっていく職業なんだろうなと感じました。
ただ、その一方で、もしかしたら自分が世論をコントロールしている様な感覚に陥ったり、ちょっと勘違いしてしまう部分もあるのではないか……とも思いましたね。
――もし阿部さんが実際に記者として働いたら、編集部のエースになれると思いますか?
自信はあります(笑)。正直、僕も過去にタレントとして週刊誌に追われたことがあるので、どうすれば記者に撮られないか、少しはわかっている部分があるんです。だからこそ、その“逆”の視点も見えるんじゃないかなと思います。
週刊誌に掲載後の影響「“対策”を考えるようになった」
――阿部さんは過去にパパラッチされたことがありましたね。そのときはどう思いましたか? 追われていることには気付いていました?
いつからかはわかりませんが、最後のほうは追われていることに気付きました。コンビニから出るときに怪しい車が停まっていたり、すれ違う人に違和感を覚えたり……。
でも、実はこの経験は今回の作品にすごく活かされていて、ドラマでも同じようなシーンがあったんですよ。僕はそれをタレントの立場でリアルに体験しているので、演じるうえで臨場感を出せたのかもしれません。これはもうフィクションではなく、本当に“張り込み”ってあるんだなと、自分の中で現実としてわかっているので。
――週刊誌に掲載されたときに周囲からは怒られましたか?
めちゃくちゃ怒られました(笑)。本当に、ものすごく反省しましたね。
当時周りの方に言われて、いちばん心に残っているのが「ダサいことだけはしないで。それだけだから」と僕を支えてくれたある方からの言葉です。当時はまだ未成年だったこともあり、その言葉がすごく心に響きました。
真意はわかりませんが、たぶん「品性を欠くようなことや、世間に見せられないようなことはするな」というメッセージだったのかなと思います。今でも強く印象に残っている言葉です。
――記者に張り込まれたり、週刊誌に掲載されたりしたことは、今の阿部さんにどういった影響を与えていますか? とても追いづらかった印象です。
週刊誌に報じられたことで、今回の作品でも僕にしかできない演技ができたと思いますし、プライベートにも大きな影響がありました。
後ろめたいことをしてなくても、尾行されるのは決していい気持ちではない。誰かに追われているように感じたときは、振り返るのではなく車のミラーで後ろを確認したり、出口が多い建物に入ったり、そのままエレベーターに乗って別の出口から出てみたり(笑)。
あと、昔何かの作品で、記者をまくために楽屋で知人の俳優と服を交換するというシーンを観たことがあったんです。それを参考にしてみるなど、いろいろな“対策”を考えるようになりましたね。
「ビジネスマナーが、まったくわからなかった」
――5月31日付で所属グループ「7ORDER」を卒業されます。7ORDERは、それまでの所属事務所を辞めたあとに結成・活動されていますが、タレントさんがご自身で社会に出ていくということはいろいろ大変だったのでしょうか?
大変というよりも、学ぶことのほうが本当に多かったですね。事務所のサポートなしで活動するのは、やっぱりすごく難しいことなんだと実感しました。同時に、前の事務所に所属していたときの環境がいかに素晴らしかったかということも、あらためて理解しました。
もちろん、当時もそのありがたみはわかっていたつもりでした。それでも、外に出てみて初めて気づくことって本当にたくさんありましたね。たとえば、以前はすべて事務所が環境を整えてくれていて、タレントは本当に現場に行くだけでよかったんです。
それが、外に出たらまずは環境作りから始めなければならず、自分たちだけではどうしても難しいことも多くて……。事務所って、これまでの長い歴史の中でその土台を作ってきたんだなと、あらためてすごさを感じました。
――独立する際は、やはり不安でしたか?
そうですね。ただ当時は、不安よりも「やってやるぞ」という野心のほうが強かった気がします。ある意味、冒険に出るような感覚でした。
たとえば、事務所に所属していたときと比べても、取材していただく機会は減りましたし、なかなかお世話になったメディアの方々と会えない寂しさもありました。「これが現実なんだな」と直面した瞬間でもありましたね。自分の実力はまだまだなんだ、と痛感しました。
――いちばん苦労したのは、具体的にどんな部分でしょう?
今でもまだ勉強中ですが、当時はビジネスマナーが全然身についていませんでしたね。
たとえば、クライアントさんとやりとりをする中で、急な変更があったときに、どう連絡すればいいのかといった感覚もわかっていなかったんです。いつまでに変更点を修正すればいいかを確認し忘れて、対応したときにはもう締め切りが過ぎていた、なんてこともありました。
それから、相手の方が会社勤めの場合、土日は連絡が取れないことが多いというのも、今さらながら理解しました。今までは、こちらの要望に当たり前のように応えてもらっていましたが、それってまったく普通のことじゃなかったんですよね。どれだけ自分が特別な環境にいたのか、あらためて実感しました。
後編では、7ORDER卒業後の活動やメンバーとの関係について深掘りする。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/村上庄吾