
7月3日に公示された第27回参議院議員通常選挙はきょう投開票日を迎えた。3連休の中日にあたるため、期日前投票を利用した有権者は、前回2022年の選挙に比べて大幅に増加した。
投票所でお菓子がもらえる? 「子連れ投票」を促すユニークな取り組み
20日に投開票日を迎える参議院議員選挙。各地の自治体がさまざまな選挙啓発活動に取り組むなかで、近年特に増えているのが「子連れ投票」を促す施策だ。
公職選挙法の一部改正により、2016年6月から投票所に同伴できる子どもの年齢が「幼児」から「18歳未満」に拡大された。これを受け、投票所を訪れた子どもにシールやカードを配ったり、子どもも投票できる子供専用の投票箱を用意したりするなど、工夫を凝らした多様な取り組みが全国で行なわれている。
長野県の池田町では、今回の参院選で初めて「期日前投票限定ガチャ」という取り組みを実施した。期日前投票所にカプセルトイの機械を設置し、明るい選挙のイメージキャラクター「選挙のめいすいくん」がデザインされたオリジナルピンバッチをプレゼントするというものだ。
「お子さんを連れて投票に気軽に来てもらえるよう、カプセルトイの機械を投票所に設置し、18歳未満のお子さんを対象にオリジナルのピンバッチをプレゼントするという取り組みを実施しました。機械が1台しか用意できなかったため、1か所の投票所のみで行なう期日前投票限定としました」
役場の担当者によれば、ピンバッチは『選挙のめいすいくん』をご当地風にアレンジしたもので、全9種類。デザインは職員が行ない、「思っていたよりも子どもたちは喜んでいました」という。
栃木県の那須町では、お菓子の「たべっ子どうぶつ」を記念証とともに子どもたちに配布したという。
「保護者とともに投票所に来た18歳未満のお子さんへ、『記念証』と一緒にお菓子をお渡ししています。
今回用意したお菓子はおよそ500個。数に限りがあるが、20日当日も配布予定だという。投票率の上昇につながれば、今後もこうした取り組みを検討したいと担当者は話した。
独自の「投票証明書」を発行する動きも
選挙の普及啓発活動は18歳未満の児童を対象にしたものばかりではない。近年は独自の「投票証明書」を交付する動きも広がっている。
静岡県沼津市では、今回の参院選で「ラブライブ!サンシャイン!!」デザインの投票証明書を発行。大きな反響があったという。
「投票を終えて希望された方に『ラブライブ!サンシャイン!!』デザインの投票証明書をお渡ししています。投票証明書を新デザインにするという案は昨年度くらいから出ており、今回の参院選で実現しました。期日前投票では以前よりも若いかたが増えたように感じます。当初は1万枚を用意していましたが、期日前投票で多くのかたが受け取っておられ、急きょ2万枚を増刷しました」
投開票日の約1週間前時点で、投票率は前年比1.38倍。投開票日当日でも希望すれば投票証明書をもらえるようだが、数に限りがあるため、なくなり次第終了となる。また、譲渡やオークションサイトへの出品は控えるように注意を呼び掛けていると担当者は話した。
また東京都品川区では、しながわ観光大使も務める人気キャラクターの「シナモロール」をデザインした投票証明書を発行している。
同区では、2022年10月の品川区長選挙・品川区議会議員の補欠選挙の際に、啓発キャラクターとして「シナモロール」を起用。23年4月からは、しながわ観光大使“見習い”の「ハタチの龍馬 with クロフネくん!」というキャラクターとともに、投票証明書にデザインしているという。
「もともと投票証明書は、職場を離れて投票に行く有権者のなかで、会社から提出を求められたかたのために各自治体で発行しているものです。公職選挙法に規定がないので、交付してない自治体さんもあります。証明書扱いになりますので、『配布』ではなく、ご希望の方に証明の一つとして交付させていただいております」
このように話す同区選挙管理委員会事務局長によれば、キャラクターをデザインした証明書の発行による投票率の変化についてはまだ検証できる段階ではないが、家族連れで投票に来る有権者などには好評だという。
「親の投票についていったことがある人は、有権者となった際に投票に行く割合が高い」
全国に広がる選挙の普及啓発活動について、「明るい選挙推進協会」の担当者に話を聞いた。
「投票に向けたさまざまな取り組みは、予算面も含めて、各選挙管理委員会の判断で行なわれています。特定の候補者が連想されるようなものはやめるなど、各選挙管理委員会において配慮等はされているかと思いますが、何を配布するかも各選挙管理委員会の判断によります」
また同協会の担当者によれば、「子連れ投票」については、2016年の公職選挙法改正以前も認められていたものの、同伴できる子どもの範囲が「幼児その他」とされていたという。
2016年の法改正で選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられたことに合わせて、子どものうちから選挙や投票所を身近に感じてもらうことを目的に「幼児、児童、生徒その他の年齢満18歳未満の者」と、同伴できる子どもの範囲に具体的な年齢が加わったようだ。
最後に担当者はこのように付け加えた。
「協会が行なった調査では、小さい頃に親の投票についていったことがある人は、有権者となった際に投票に行く割合が高いことが示されています。
きょうは投票日。一人でも多くの有権者が投票に参加することが、子どもたちに明るい未来を託すことにつながるのではないだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班