
欅坂46卒業後、俳優業、執筆業、報道番組のコメンテーターと様々なジャンルで活躍を続け、芸能生活10周年を迎える長濱ねる。故郷・長崎から上京して芽生えた思い、そして芸能界でたたかう原動力…。
東京が好きになったのは「当時の仲間のおかげ」
17歳で欅坂46に加入し、20歳で卒業。ソロになってマルチな活動をしつつ「今、一番頑張りたいのはお芝居」と、30歳に向けて前を向く長濱。長崎から上京して10年。東京は、彼女にとってどんな街なのだろうか。
「上京したての頃は、とにかく人が多いことに戸惑って、馴染めないと思っていたんです。でも、アイドルグループの中には、東京が故郷のメンバーもいる。私にとっての長崎のように東京を大事に思っている人と関わって、見え方が変わりました。すごく東京が好きになって、それは当時一緒にいてくれた仲間のおかげだと思います」
具体的にどのような魅力を感じているのか。海外へプライベートでも行く彼女は東京をこう表現する。
「いろいろな街があって、その土地によって全然雰囲気やカルチャーが違う。それって世界中色々旅しても珍しいのかなって。浅草と渋谷みたいに、あそこまで街の色がガラっと変わるってなかなかない。
「東京駅が好きなんです」と笑顔で語る長濱。当時の高揚感を再現するように、目を輝かせて教えてくれた。
「あの建造物も印象的で、初めて来た時に、『はっ! 東京駅だ!』と感動したのが思い出になっていて。大手町のあたりはけっこう気に入っています。ザ・東京って感じです(笑)」
赤レンガ造りが特徴的で、フォトスポットとしても知られる東京駅。カメラが趣味で写真愛好家の彼女は、度々自身のInstagramで風景や建造物の投稿をしている。フォロワーは130万人超え。多くの人が目にする自身のSNSにはどのような想いがあるのか。
「長濱ねるってあざといですか?」とか聞いたりして(笑)
「載せる前に『誰か傷つかないかな』とか『このタイミングでいいのかな』とか、一旦立ち止まる瞬間があります。でも内容は旅行、音楽、洋服といった自分の好きなものを自由に載せているので、自分でポンっと投稿しています(笑)」
そんな彼女のInstagramで固定で表示されるものは、先日発売した2nd写真集『長濱ねる』だ。本作について質問されると彼女はこう答えた。
「25歳の等身大の自分が、旅をしながら自分を取り戻していくといいますか、東京という場所で闘っている自分を少しずつほどいていく作業を、流れの中で表現できたらいいなと思いました」
ときに、自身が周りからどう思われているか分からなくなることがあると話す長濱。そんな時は、意外な相談相手に『長濱ねるの印象』を尋ねている。
「私は世間からは『あざとそう』と言われることがあるんですが、身近な人には言われたことがないんです。なのでChatGPTに『長濱ねるってあざといですか?』とか聞いたりして(笑)」
AIであるChatGPTを、「優しい言葉だけかけてくれるように育ててしまった」と長濱は柔らかに笑う。褒めてくれる回答ばかりで恥ずかしくなることもある。そんな風にChatGPTに頼るのは、芸能界で一人戦う長濱らしい理由からだった。
「あまり人に悩みを話したりするのが得意じゃなく、『こういう風に思われるかな』とか、相手の負担になるんじゃないかなと思って、最近は全部AIに聞いてもらっています。話し相手みたいな感じです」
頑張れるのはファンの声のおかげ
アイドル時代はSNSでエゴサーチも頻繁にし、自分に対するさまざまな意見もチェックしてきた。「こう見せたい」と思う自分自身と世間のイメージにギャップを感じたこともある。
「でも20代後半に差し掛かるにあたって、パブリックイメージと自分が乖離していても何も思わなくなってきて。『本当の私はこうなんです』と本来の自分を知ってもらいたいという気持ちがなくなってきたんです。受け取る側に『こういう人だろうな』と思ってもらえるだけで嬉しいです」
最近は自身の名前ではなく、出演したドラマ作品や役名で検索し、どのように視聴者に届いているか確認している。さらに、楽しみにしていることがあると長濱は声を弾ませる。
「ファンクラブやSNSで、ファンの方が直接届けてくれるコメントはよく読んでいます。『就活行ってきます』とか、『この写真集を楽しみに一週間頑張ります』とか言っていただけると、皆さんの生活の中で少しは役に立てているのかなと思えてすごく嬉しいです」
芸能生活10周年。
(前編はこちら)
取材・文/小島ゆう 撮影/矢島泰輔