
SNSでの投稿がきっかけとなり、多くの人々の注目を集めた一室がある。広島県に建つ築50年のアパート。
「玄関から入れない」衝撃の部屋
9月12日、Xに投稿された写真には、玄関から部屋へと続くスペースに積み上げられた大量の残置物が映っていた。足の踏み場はなく、モノを踏みつけなければ先に進めないほど。ダンボールやビニール袋がぎっしりと空間を埋め尽くしていた。
それでもヨッシー工務店さんは「これはたまげた、買うけど」と購入を表明。SNSには「買うんかーい笑」「地獄って現世にあったんだ」「逆に綺麗になるのが楽しみです」といったコメントが寄せられた。
彼が購入を決めたのは、この一室を含むアパート全体だ。間取りは2Kが6室。築年数はおよそ50年で、所在地は広島県。売主は「親から引き継いだものの手に負えない」という高齢の女性で、知人を介して紹介されたという。購入価格は計31万円。中古不動産としては極めて安価だった。
アパートの中で異質な存在だったこの部屋を初めて訪れ、足を踏み入れたときのことをヨッシー工務店さんは「残置物が多すぎて汚いので、最初は買いたくないと思いました」と振り返る。
玄関を開けても残置物が溢れ、内部に入ることさえ難しい。かろうじて踏み入れても、床はゴミで覆われており、足の踏み場がなかった。
極めつけはトイレだ。「どうやったらこうなるのか検討がつきません」と語るように、タイルが貼られた和式トイレは、土なのか錆なのか、それとも排泄物なのか……、一部分を残して真っ茶色に染まっている。そして、大量のトイレットペーパーの芯が片隅に積まれている。
通常の片付けを業者に依頼すれば100万円近くかかるだろうと見積もる。現在は手付金を納め、10月中に正式に購入を完了する予定だ。
いったいこの部屋にどんな人が住んでいたのだろうか。
住んでいたのはどんな人?
ヨッシー工務店さん自身も詳しくはわからず、聞いた話によると、高齢の女性のようだが、残置物から人柄を察しようとしても、「生活のイメージはできませんでしたね。昭和にタイムスリップしたような感じでした。ゴミが捨てられない人だったのだな、という印象しかないです」と語る。
一方で、その女性は亡くなる直前に警察の面倒になっていたという。
現代の暮らしから切り離されたような部屋。きれいに整えられた他の住戸と比べても、その異質さは際立っていた。
これまでに数多くの物件を見てきたヨッシー工務店さんだが、今回のようなケースは初めてだった。「清掃した後にどうなるのか楽しみです。実際にこうした特異な物件を目にして、テレビでしか見られなかった世界に直接触れたような気分でした」と話す。
築50年のアパートの一室に残されていたのは、玄関から足を踏み入れることも難しいほどの大量の残置物と、昭和の暮らしを思わせる光景だった。ある人とともに長い時間を過ごしてきたこの部屋は、清掃を経て新たな人に引き継がれ、これからまた別の人生を見守っていくだろう。
取材・文/集英社オンライン編集部