“支持率下げるぞオジサン”は時事通信社のベテランカメラマン…会社は謝罪、他社は「ウチも気を付けて」問われるオールドメディアのモラル…「でも論調を左右するほどの権限は現場にありません」
“支持率下げるぞオジサン”は時事通信社のベテランカメラマン…会社は謝罪、他社は「ウチも気を付けて」問われるオールドメディアのモラル…「でも論調を左右するほどの権限は現場にありません」

またもや「オールドメディア」が集中砲火を浴びている。女性初の自民党総裁となった高市早苗氏。

その高市氏の自民党本部での囲み会見を前に『事件』は起こった。党本部で待機中の報道陣から漏れた、「支持率下げてやる」「支持率下げる写真しか出さねえぞ」といった暴言が日本テレビのライブ配信に拾われ、ネット上で猛批判を浴びているのだ。「高市新総裁」の誕生を読み切れなかった総裁選報道の直後での問題発言だっただけに、メディアへの風当たりはさらに強まった格好だ。独特の人間関係が形成される政治取材の現場では「もっとひどい悪口が飛び交っている」とも。ドロドロな永田町取材の内幕とは。

時事通信のベテランカメラマンが…

「中立であるべき報道機関がこんな事言って恥ずかしくないんですかね?」
「報道じゃなく妨害だな!!」

Xには、こんなマスコミ批判があふれかえっている。

自民党総裁選での小泉進次郎氏との決選投票を制し、7日に新総裁として公明党の斉藤鉄夫代表との会談に臨んだ高市氏。会談後の高市氏の肉声を引き出そうと東京・永田町の自民党本部4階のフロアには報道陣がひしめき合っていた。

長引く会談にしびれを切らしたのか、その場に集まったカメラマンや記者らの間には弛緩した空気が漂った。問題発言が飛び出したのはその時だ。

「支持率下げるぞ」「支持率下げる写真しか出さねえぞ」。中年男性のものとみられるこのつぶやきが、日テレのYouTube配信で流れ、Xのトレンドになるほどの大炎上となった。

「幹事長の執務室がある自民党本部の4階には、自民党・公明党の与党の動きを追う番記者が集まる平河クラブがあります。

赤じゅうたんが敷かれたエレベーターホールは、幹事長をはじめとする党幹部が囲み取材に応じる場所となっていて、大型選挙の後にはここで選対委員長や幹事長がコメントを出すのが通例となっています。

取材対象を待つ間の番記者同士の軽口も、いつもの風景。正直、もっとドぎつい軽口や冗談を言うこともあり、今回はその一コマが出てしまったわけですが、タイミングとしては最悪でしたね」(全国紙政治部記者)

今回、動画配信され、マスコミ批判の俎上に上がった発言は複数ある。「裏金と、靖国と、なんかでしょ?」といった高市氏の政治姿勢を揶揄するかのようなものや、「巻き込むな」「必然的に巻き込まれるから」などの軽口のようなものまでが拡散し、発言者の犯人探しがなされる事態にまで発展していた。

「『マスゴミ』だの『オールドメディア』だのと、ただでさえ世論の批判を浴びやすくなっている中での騒ぎだっただけにマスコミ各社も事態の収拾に躍起になっています。各社が聞き取り調査を実施、結果、時事通信社のカメラマンだということが判明しました。そのかたは大ベテランのかたなんですよね…」(同前)

10月9日、時事通信はHPに、「雑談での発言とはいえ、報道の公正性、中立性に疑念を抱かせる結果を招いたとして、男性カメラマンを厳重注意しました」「自民党をはじめ、関係者の方に不快感を抱かせ、ご迷惑をおかけしたことをおわびします」「報道機関としての中立性、公正性が疑われることのないよう社員の指導を徹底します」という謝罪文を掲載した。

永田町は閉ざされた世界、化石のようなおじさんも…

今回の炎上を受け、多くのメディアでは「ウチの社ではないですが気を付けてください」と記者や現場に異例の“通達”をしたという。

某民放の30代の政治部記者がこう内実を明かす。

「うちを含むテレビや新聞の記者を揶揄する声がSNSでよくありますが、そもそもあの位置はカメラマンさんやテレビカメラがスタンバイしてるところです。ネットでは、記者やカメラマンの傲慢さを指摘する声も見られますが、そもそも現場のカメラマンにも記者にも論調を左右するほどの権限はないですよ。

さらに今回の会見場は党本部ですから、平河クラブに所属する記者だけではなく、フリーの人も来ている。

今回は時事通信社のかたでしたが、フリーの記者やカメラマンでも暴言を吐いたりと、かなりマナーの悪い人がいます」(民放の政治部記者)

狭い永田町で日々同じ対象相手を追っかけている政治の現場では、妙な仲間意識が芽生えやすいという側面がある。取材の待機中には、身内同士で口が軽くなり、ついつい冗談や軽口をたたいてしまうことも珍しくない。

なかでも、「昭和世代」のベテランのカメラマンや記者の口の悪さは際立っているという。

「オジサンカメラマンは昔からとにかく、口が悪い人が多いですね、これは政治部だけでなく事件現場や芸能でもそうです。下ネタは多いし、若い女性記者にセクハラ発言するし、道端でタバコ吸ったり暴言も吐いたりする。送検の現場で車内の被疑者の姿を捉えようと、車両に無謀な“アタック”をするのもたいていこの世代の人たち。

もっとも、最近はいつでも誰でも、カメラに捉えられ、SNSにアップロードされてしまう時代。さらされるリスクがわかっているだけに、あまりに非常識な行動はなくなり、現場のマナーは随分とよくなった印象です。

そういう意味では、永田町はいまだにクローズドな閉ざされた世界だから、時代に合わない化石のようなオジサンも残っているんだとおもいます」(週刊誌デスク)

そもそも永田町は、昔ながらの長時間労働やセクハラ・パワハラが横行する古い「昭和」な体質が今も色濃い取材現場だ。コンプライアンスが叫ばれる昨今の風潮を受けて、いくぶん改善の兆しもあるとはいえ、その気風はいまだに根強く残っている。

前出の週刊誌デスクは、「昭和のオジサンカメラマンって横柄な人が多いですが、腕がめちゃくちゃ良くて、その人じゃないと撮れないものもある。なり手不足の業種だし、若い子は腕も根性もない、だから結局頼ってしまうんですよ。

今後同じことがないように『たとえ冗談でもそんなことを言わないでくださいよ』とキツく言うと、スネて仕事してくれないので優しくクギを刺すしかできませんね」とため息をついた。

個人的な好悪で、意図的に誰かを貶めるような報道はあってはならない。マスコミ業界全体の人材不足も、ガラパゴス化した「昭和」で偏向的なカメラマンや記者をはびこらせる要因にもなっているのは間違いなさそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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