〈千葉ラブホ殺人〉逮捕された女(32)は11歳年下のネパール人恋人に別れ話をされ号泣…兄は「弟は日本のアニメが好きで日本を愛していた」「日本が怖くなりました」
〈千葉ラブホ殺人〉逮捕された女(32)は11歳年下のネパール人恋人に別れ話をされ号泣…兄は「弟は日本のアニメが好きで日本を愛していた」「日本が怖くなりました」

ラブホテルで交際相手とみられるネパール国籍の男性を殺害したとして、千葉県警は28日、アルバイトの浅香真美容疑者(32)を殺人容疑で逮捕した。被害者の男性は2024年に来日し、都内の語学学校に通うチャンタール・バダルさん(21)。

バダルさんの兄が集英社オンラインの取材に応じ「弟は日本のアニメが好きで、日本をとても愛していた」と胸のうちを120分にわたって語った。

「彼氏と一緒に死のうと思い……」

事件の舞台となったのは、JR船橋駅から徒歩5分圏内にあるラブホテルの一室だった。県警によると、浅香容疑者は10月5日午前4時35分ごろから同日8時15分ごろまでの間、持参した包丁でバダルさんの胸部などを複数回刺すなどして、殺害した疑いがある。

浅香容疑者は5日午前8時5分ごろ、「男性の意識や呼吸がない。自ら胸に包丁を刺して、出血がある」と自ら119番通報した。駆けつけた救急隊員が客室のドア付近でうつぶせの状態で倒れているバダルさんを発見し、その場で死亡が確認された。

「現場にかけつけた警察官が、室内で見つかった2本の包丁について浅香容疑者に尋ねると、万引きしたと供述しました。そして、『彼氏と一緒に死のうと思い、どうせ死ぬなら盗んでしまってもいいと思った』と語り始め、その日にまずは窃盗の容疑で逮捕されました」(捜査関係者)

県警は現場や遺体の状況から、浅香容疑者が殺人事件にも関与した可能性が高いと判断し、浅香容疑者を殺人の疑いで28日、船橋警察署内で逮捕した。

ある捜査関係者は「殺人の逮捕状を見せた瞬間、浅香容疑者は『間違いです』と言い始め、容疑を否認。それっきり、黙秘を続けています」と明かす。

「29日午前に浅香容疑者は地検へ送検されましたが、この日も留置所から出ることを頑なに拒み、複数の警察官が時間をかけて説得する形で、ようやく留置所を後にしたんです」(同前・捜査関係者)

バダルさんはJR津田沼駅から徒歩15分のアパートに兄や親族などと複数人で住んでいた。10月29日、集英社オンラインはバダルさんの兄に話を聞いた。

「歳上の人だけど、若く見えるって言ってました」

――バダルさんが日本に来た経緯を教えてください。

バダルさんの兄(以下同) 弟(バダルさん)は、日本がとっても好きで。

特にアニメとかが好きだったから。ChatGPTにも「どうすれば日本のアニメの仕事に携われるか」ときいていて、日本のアニメが好きで仕事にしたかったんだと思います。

日本人は優しいし、ルールを守る人が多い。日本はめっちゃ良い国だとも言っていた。好きな国に来て、自分の夢を叶えたかったと聞いています。日本で頑張って働いて、ネパールにいる父母に家を買ってあげたいと話していました。

日本に来る前から日本語の勉強は始めており、とても熱心で、参考書がボロボロになるほど使い込んでいました。

弟は2024年に日本に来て、新宿区にある2年制の専門学校へ通い始めました。今年で2年生になり、来年3月に卒業予定でした。卒業後は、「ビジネスを学びたい」ということから、千葉市内にあるビジネス系の専門学校へ進学を考えており、願書はすでに提出していたそうです。
今月11日に面接の予定だったのですが……。

――浅香容疑者について、お兄様は面識がありますか?

会ったことはありません。

ただ、去年11月から弟がアルバイトしていた習志野市にある運送業の工場で、浅香容疑者と出会ったと聞いており、今年4月に弟から「年上の彼女ができた」と報告を受けました。「10歳上の人だけど、若く見える」って言ってました。身長も低くて、小柄だって。

私は「好きならいいんじゃない」と言いました。国籍とか関係なく、自分で決めればいいと。ここ1カ月は彼女と毎週土曜の夜から日曜の夕方にかけて会うことが多かったです。これまでトラブルの話は聞いてません。だけど10月2日夜に弟らと自宅で飲んでいると、「彼女と別れる話をした」と弟が言いました。電話で別れ話を切り出したら、「相手がすごく泣いてた」と。

――その後はどうなりましたか?

弟はすでに運送業の工場でのアルバイトを辞めており、私が紹介した居酒屋でキッチンのアルバイトをしていました。事件が起きた前日の4日、私もシフトに入っており、弟も出勤していました。夜10時半に仕事が終わり、弟に「今日は家に帰るでしょ? もう別れたんでしょ?」って言ったんです。

でも弟は「今日だけ最後に1回会って、話したい」って言ってました。弟は誠実な性格でしたし、ちゃんと話して終わらせたかったのかもしれません。

――それが弟さんとの最後の言葉だったのですか?

はい。事件が起きた5日、私は居酒屋のアルバイトに午後4時から出勤でした。弟とは位置情報を共有しており、携帯のGPSを見たら、弟の位置が「東船橋」にあって動かない。何かあったんだろうな。最後だし、なんか喧嘩になったのかなとか思いながら仕事をしていました。

ところが、午後6時を過ぎても弟の位置情報が同じ場所にあったので、「おかしいな」と思い、警察に電話しました。「弟の携帯が東船橋にある。何かあったかもしれない」と相談したんです。

警察に電話すると、担当が3人替わってようやく、「弟さんは今日の朝8時15分に死亡が確認されました」と言いました。

ただ、信じられなかった。

その後、警察に行きました。弟の顔写真を見せられて、「この人で間違いないですか」と。間違いなかった。

それで、とにかく「弟の顔だけでも見せてほしい」って頼んだら、「顔だけなら見せてあげるけど、体には血がすごい流れてるから、ちょっと…」って言われて。

だから、「じゃあ、顔だけでお願いします」と言って顔を見ました。顔の頬がとても冷たかった……。

「部屋から8本のロングアルコール缶が出てきてた」

――ご両親は事件をどう受け止めていますか?

父と母はネパールにいます。電話すると、母はずっと泣いてました。父は言葉も出ない。
来日する予定はありません。

――お兄様自身は?

働こうとしても、その気が起きない。仕事にはいま、行けていません。

本当は行きたいんだけど。行っても職場が一緒だったし、行ったことで弟のそういう悲しい出来事を、仕事中に思い出してしまうんですよ。

「バダルがここで働いていたな」とかね。そういう悲しいことが頭に浮かび上がってしまうんです。

――弟さんはどういう性格でしたか。

本当に優しいんだ。「今日休みなんだから掃除してご飯作って、それから買い物してきて」とか、色々お願いしても、それをちゃんと全部やってくれるの。「今日トイレ掃除してね」って言ったら、それもぜんぶやってくれるタイプ。いままで、嫌な顔をされたことは一度もない。とても家族思いだった。

仕事も真面目だった。ギターが好きで、ネパールの歌を弾いてよく動画を撮影し、TikTokにあげていました。

「あなたは本当に優しい」というのが、弟の好きな言葉。友人とよく、その言葉を言い合っていました。

――事件を受けて今、何を思いますか。

今は捜査中だから、これからどういう情報が入るかもわからない。いったん、待つしかないんです。このあと何をすればいいのかわからないし……。私は、日本が好きです。でも、この事件で怖くなりました。弟がこんな死に方をして、警察も最初は自殺を疑っていて。もう誰を信じたらいいかわからない。

司法解剖が終わり、弟が無言のまま家に帰ってきたとき、体には傷がいっぱいありました。10カ所くらいです。腹には切り傷があり、太ももには刺し傷、そして左手には刃物が貫通したような傷がありました。「自分を守ろうとしていたんだな」と感じました。

弟はホテルの入り口付近で倒れており、周りには血溜まりができていたと聞いています。(ホテルの)部屋から8本のロングのアルコール缶が出てきていますが、弟は酒が弱いので自らこんな飲むことはありません。二人のあいだで何が起きたのか、とにかく真実が知りたい。捜査が進むことを願うばかりです。

兄の無念はいかばかりか。警察の真相解明が待たれる。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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