「私たちは中道だ」と名乗る人ほど、実際には偏っている——。米国のある調査は、そんな意外な事実を示している。
「私たちは中道だ」と名乗る人ほど、実際には…
立憲民主党と公明党、両党が掲げる「中道」という言葉について、少し意地悪な視点、しかし極めて重要なデータを提示しておきたい。
彼らは「右でも左でもない中道」をアピールするが、「中道」と自認する人々の実際の政策志向は、必ずしも自己認識どおり“中間”に位置しているとは限らない、という研究結果が存在する。
実際、自己の政治的立場を「中道」「穏健」と認識する人が、政策態度では明確に一方に寄っている例は、社会科学の分野で繰り返し指摘されてきた
米国の世論調査機関ピュー・リサーチ・センター(Pew Research Center)は、2014年、2017年、2021年と複数回にわたり、政治的立場と政策態度の対応関係を分析してきた。
この調査によると、自称「中道」の人のうち、実際の政策選好では「一貫したリベラル(consistently liberal)」または「一貫した保守(consistently conservative)」に分類される人が過半数を超えていたという衝撃的なデータがある。
つまり、「自分はバランスの取れた中道だ」と認識していても、政策の選好を積み上げてみると、結果として一方に寄っているケースは珍しくない、ということになる。
この視点から見ると、今回の立憲民主党と公明党の合流が掲げる「中道改革」も、理念上は中道を標榜していても、政策の中身を検証すれば、特定のイデオロギーに明確に寄って見える可能性がある、という点には留意する必要がある。
これらを踏まえたうえで、立憲民主党と公明党の新党結成合意を見ていこう。
一見すると奇妙な結合に見える今回の動きだが、そこには選挙戦略上の合理的な計算と、両党が置かれた政治環境の変化が重なっている。
なぜ、長年自民党のパートナーであった公明党が、野党第一党の立憲民主党と組むのか。なぜ、このタイミングなのか。
「なぜ合流したのか」の答えは、極めて単純明快
「なぜ合流したのか」についての最初の答えは、極めて単純明快だ。一人でも多くの当選者を出すためである。
公明党は長年、組織的な集票力を持つ政党として知られており、推薦の有無が選挙結果に影響した例も複数報告されてきた。
具体的な選挙区や年次によって差はあるものの、組織票の動きが数千~数万票規模の違いを生むケースがあったことは、過去の選挙分析からも確認できる。
政治の世界では、理念や思想以上に「数」が物を言う場面がある。2025年10月、自民党総裁選で高市早苗氏が選出されたことを契機に、公明党は連立政権から離脱した。
その背景には、政治資金問題への対応をめぐる不満があり、同時に、公明党自身が今後の選挙戦略の再構築を迫られていた事情も指摘されている。
ともあれ、これまで自民党の強さを支えていた「下駄」を、今度は立憲民主党が履くことになる。単純な足し算と引き算の世界だが、小選挙区制という仕組みにおいては、わずかな票差が勝敗を分ける。
立憲民主党にとって、喉から手が出るほど欲しかった「確実な組織票」が手に入るのだから、手を組まない手はない。
2つ目の理由は、公明党自身の切実な事情だ。
公明党の切実事情、立憲の抱える弱さ
長年、与党として政策決定に関わってきた公明党にとって、権力の座から離れることは組織の弱体化を意味する。自民党と決別した以上、単独で野党に留まっていては、実現したい政策を通す力が失われてしまう。
自民党とはこれ以上歩めない。しかし、孤立は避けたい。生き残るためには、新たなパートナーが必要不可欠だった。立憲民主党との接近は、組織を守るための判断の結果といえる。
3つ目の理由は、立憲民主党の抱える弱さだ。
野党第一党とはいえ、単独で過半数を取る力は現状ではない。支持率は伸び悩み、無党派層の心をつかみきれていないのが実情だ。野田佳彦代表が「一番親和性のある政治勢力」として公明党に秋波を送った背景には、なりふり構っていられない焦りが見え隠れする。
たとえ一部から「野合(やごう=理念なき結合)」と批判されようとも、政権交代を実現するためには手段を選んでいられない。公明党の組織力は、立憲民主党の足腰の弱さを補うための最強の補強材となる。
ただし、両党の上層部が合意しても、支持者レベルで簡単に融合するとは限らない。
現にSNS上では、両党の連携に否定的な意見も一定数観測されており、支持層の温度差が存在することはうかがえる。
また、宗教団体や各種支援団体と政党の関係は、選挙や地域、候補者ごとに異なる。
特定団体が常に特定政党を一貫して支援するとは限らず、支持や距離の取り方は流動的である。
そのため、合流によって「票が単純に足し算される」と考えるのは、現実を過度に単純化している可能性があるばかりか、むしろ、分離しようとする力が組織を内側から壊すリスクさえあるのだ。
公明党という組織が果たしてきた役割
公明党はしばしば現実主義的な調整役を果たしてきたと評価される。
たとえば2015年の安保法制では、連立内で限定的な集団的自衛権の行使を認めつつも、「専守防衛」や行使要件の厳格化を強く主張し、制度設計に影響を与えたとされている。
また、近年の税制改正では、所得税・住民税の定額減税などが導入され、その過程で公明党が減税を主張してきたことも事実である。
こうした公明党の胆力は、今の野党に最も必要な武器といえると、筆者は強調したい。
では、この公明党の現実主義が立憲民主党と合わさることで、成功する道はあるのだろうか。世界に目を向ければ、意外なヒントが見つかる。ニュージーランドの事例だ。
イデオロギーより現実に即した正しい政策
1980年代、ニュージーランド経済は深刻な不況に喘いでいた。その時政権を握ったのは、伝統的に「大きな政府」を志向するはずの左派・労働党だった。
規制緩和、国営企業の民営化、補助金の撤廃、そして減税。
通常なら保守や右派が掲げるような政策を、左派政権が次々と実行していった。既得権益を打破し、市場の競争を促すことで、経済は見事に蘇った。これは「ロジャーノミクス」と呼ばれ、政治学や経済学の教科書にも載るほどの成功例として知られている。
この事例が教えてくれるのは、「政党のラベルや過去のイデオロギーよりも、現実に即した正しい政策を実行することの方が重要だ」という真実だ。
もし、立憲公明党がこのニュージーランドの事例に学ぶなら、日本にも大きなチャンスが訪れる。立憲民主党が持つ情熱と、公明党が証明した「減税を実現する突破力」。そこに、福祉バラマキではない視点が加われば、自民党では成し得なかったリベラルな改革が可能になるかもしれない。
2026年の選挙は、単なる政党同士の陣取り合戦ではない。日本の政治が、古い対立軸を超えて、新しい段階へ進めるかどうかの試金石となる。
立憲と公明党の合流は、確かに選挙目当ての側面を否定できない。
だからこそ、政局の騒がしさに惑わされず、冷静な目で判断を下すことが、私たち有権者の責任である。政治家たちが「なぜ」動いたのかを知った上で、私たちは「なぜ」その一票を投じるのか。自問自答しながら、日本の未来を選び取りたい。
文/小倉健一

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