プロ野球界で活躍めざましい1998年生まれの選手たちが、いまや「山本由伸世代」と呼ばれることに異論はない――そう語るのは同級生でもあるDeNAの牧秀悟だ。対戦相手として、侍ジャパンの仲間として見つめてきたからこそわかる、山本由伸の凄みと素顔、そして同世代に与える特別な刺激を追った。
新刊『証言 山本由伸』より一部抜粋・再構成してお届けする。
同級生・侍戦士が見た素顔の山本由伸
山本由伸と牧秀悟。
今では気心の知れた仲だが、牧にとって山本は、プロ入り前から追いかけるべき大きな背中でもあった。入団会見で対戦したい投手として名を挙げた山本との対戦は、1年目のオープン戦でさっそく訪れる。念願の対戦は2打数1安打だった。
翌22年のオープン戦も中前打と三振の2打数1安打。牧は、この時の対戦で山本のさらなる進化を感じ取ったという。
「この時は、前の年に投手4冠の大エースですから、まっすぐを打てたらいいなくらいの気持ちで、もう、何も考えずにいきました。正直、まっすぐも変化球も、どんな球を投げるんだろう? っていう、好奇心のほうが勝っていましたよね。結果はヒットを打ちましたけど、まったく手が出なかった印象しか残ってないです。シーズンに入ったら、いったいどんなピッチングをするんだろうと思いながら打席に立ってました」
打者として対戦したときの強烈なインパクトがあるからこそ、牧は山本がチームメイトになったときに心強さを実感したという。WBCで山本の背中を見ながら二塁の守備についたときのことを、こう振り返る。
「味方として守っているときは、頼もしいですよね。
グラウンドでの山本は、時に近寄りがたいほどの威厳を放っている。打者を冷徹に追い込み、150キロを超える速球と精密な変化球で翻弄する姿は、まさに「孤高のエース」そのものだ。牧も以前は、山本にある種の先入観を抱いていたという。
「正直、もっと尖っているのかなと思っていたんです。これだけ若くしてタイトルを総ナメにしているし、自分にも他人にも厳しくて、近寄りがたい雰囲気があるんじゃないかって。でも、実際に23年のWBCで一緒に過ごしてみたら、思ったより、ずっと〝普通〟の人でした(笑)」
二人の距離が急速に縮まったのは、このWBC期間中だった。いまや「黄金世代」とも称される98年生まれ組だが、このときの侍ジャパンのメンバーには牧、山本と宇田川優希の3人しかいなかった。自然と、気心の知れた同級生同士、行動をともにするようになったという。
「よく一緒にご飯を食べに行きました。そこで野球の話はもちろん、本当に他愛のない世間話もたくさんしました。気づいたら下の名前で呼び合うようになっていた。
素顔の山本はどんな人物なのだろう?
「すごくフレンドリーです。自分から壁をつくるようなところがなくて、周りを巻き込んで会話を広げていく。いるだけで、その場の雰囲気が自然と和むんですよね。マウンドではあんなにすさまじいボールを投げているのに、ベンチに戻れば冗談を言い合える。そのギャップが由伸の魅力です」
松坂世代を凌駕する濃いメンバーが終結した「山本由伸世代」
80年度生まれが「松坂世代」と呼ばれるように、プロ野球界では世代を象徴する選手の名前を冠して「〇〇世代」と呼ぶことがある。
98年度生まれには山本、牧をはじめ、今井達也、藤平尚真、佐藤輝明と才能がひしめくが、やはり「山本由伸世代」と言われることが多い。その呼び名について、牧はいっさいの迷いなく首を縦に振る。
「今はもう、間違いなく『由伸世代』なんじゃないですか。あれだけの大舞台で、堂々と活躍している同級生は他にはいませんから。僕自身もそうですし、他の選手たちも、そう呼ばれることに異論はないと思いますよ。彼が先頭を走ってくれていることは、僕らにとって刺激にしかなりませんから」
牧は〝世代の象徴〟としての山本を認め、野球人として同じ時代を生きることを幸運だという。
「由伸が同級生にいたことは、幸運だと思いますよ。
牧にとって山本はどんな存在か? そう質問を振ると牧らしいユニークな答えが返ってきた。
「『学校の仲良しグループのなかにいる欠かせない一人』ですかね(笑)。由伸とはしのぎを削るライバルだったこともないし、同じチームで切磋琢磨した盟友といえるような存在でもない。でもたまたま同級生だったことで仲良くなって、いろんな話もするようになって、刺激を受けて、学ぶことも多いですから」
これまで二人の対戦は、シーズン前のオープン戦にかぎられていた。ともに日本でプレーしていた3年間、交流戦やオールスターなどシーズン中に、二人が相まみえる機会は、一度も訪れなかった。
「公式戦でちゃんと対戦したことがないんですよ。だから1回は真剣勝負で対戦してみたい。本気の由伸の球を、打席で体感してみたいというのはあります。それがメジャーの舞台なのか、どういう形になるのかはわかりませんけど。とにかく一人の打者として、世界一の右腕に挑んでみたいという思いは常に持っています」
メジャーの舞台で戦い続ける友へメッセージをお願いすると、牧は少し照れくさそうに、しかし力強い言葉を紡いだ。
「同級生の鑑として、これからも先頭に立って戦い抜いてほしい。
取材・文/石川哲也
『証言 山本由伸』(宝島社)
牧秀悟、工藤公康、 井口資仁、 五十嵐亮太、金子千尋、西村徳文、高山郁夫、入来祐作、星野伸之、能見篤史、増井浩俊、矢田修ほか

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