「参政党か、れいわか」生活苦に直面する有権者の間で、そんな選択が語られる時期があった。しかし、第51回衆院選で結果は大きく分かれる。
壊滅的な数字と、二つの致命的な原因
「消費税を撤廃すると言っている参政党かれいわを考えている。どちらかというと、外国人が増えて治安が悪くなっているから『日本人ファースト』の参政党かな」
――こんな衝撃的なインタビューが掲載されたのは、後述するが、去年の東京新聞誌面である。今日現在のれいわの苦境を暗示しているかのようである。
2月8日に投開票された第51回衆議院議員総選挙において、れいわ新選組は歴史的な大敗を喫した。同党は公示前の8議席からわずか1議席へと激減。
小選挙区(定数289)には18人を擁立したものの全敗に終わり、比例代表(定数176)に擁立した13人のうち、南関東ブロックの山本ジョージ氏のみが唯一の当選者となった。
得票数の減少も極めて深刻である。総務省のデータによると、比例代表の得票数は1,672,499票(得票率2.92%)にとどまり、前回の3,805,060票(得票率6.98%)から約56%も減少し、半分以下に落ち込んだ。 この壊滅的な数字は、党の勢いが完全に失われたことを明確に示すものである。
その背景には大きく分けて二つの致命的な原因が存在する。
まず、両党がどのような人々を主なターゲットにしていたかを確認する必要がある。長引く経済の停滞と急激な物価高により、日本の多くの有権者が深刻な生活苦を感じていた。
特に、バブル経済崩壊後の就職氷河期に社会に出た「ロスジェネ(失われた世代)」と呼ばれる40代から50代の人々は、国や社会に対して強い不信感と怒りを抱いていた。
なぜ「れいわ」か「参政党」なのか…支持者のパイを奪い合う
彼らは、まじめに義務教育を受け社会に出たにもかかわらず、正社員になれず、低い収入で重い税金や社会保険料を負担させられている。将来の年金への不安も大きく、「既存の政治は自分たちを見捨てた」という絶望感を抱えていた。
れいわ新選組と参政党は、ともに「消費税の廃止(または減税)」や「積極的な財政出動」を政策の柱として掲げ、この苦しむ層に向けて強くアピールを行った。つまり、両党は最初から同じ支持者のパイを奪い合う激しいライバル関係にあったのである。
同じような経済政策を掲げていたにもかかわらず、有権者の心をつかむ手法には決定的な違いがあった。有権者が両党をどのように比較して投票先を決めていたかを示す、街頭でのリアルな声がある。
「なぜ、れいわ新選組と参政党なのか。ケイスケさんは記者の問いにこう答えた。
「生活がこれだけ苦しいのに減税しないのはおかしい。消費税を撤廃すると言っている参政党かれいわを考えている。どちらかというと、外国人が増えて治安が悪くなっているから『日本人ファースト』の参政党かな」(東京新聞『「参政党か、れいわに入れます」なぜ?その2択を口にする人が増えている…悩める「ロスジェネ」の判断材料』2025年7月13日)
実現が遠く感じる理想論
この記事の有権者の声からわかるのは、政治に関心を持つ入り口は「消費税廃止」という毎日の生活に直結する部分であったが、最終的な決め手は「わかりやすい敵」の存在だったということだ。
れいわ新選組が「弱者救済」という広い理想や正論を語ったのに対し、参政党は「外国人の増加」や「既存メディアの嘘」といったわかりやすい問題を提示し、「日本人ファースト」という排他的だが強い本音の感情に訴えかけた。
生活に余裕がなく、心も疲れ切っている人々にとって、実現が遠く感じる理想論よりも、自分の抱える怒りや不安を直接的に、そして過激に代弁してくれる参政党の主張のほうが、心に響きやすかったのである。
さらに、組織の作り方にも明確な差があった。
れいわ新選組は内部からも自壊していった
参政党は地方議員を地道に増やし、全国各地に足腰の強い組織を作り上げた。そこにYouTubeやSNSを使った情報発信を組み合わせることで、効率的かつ組織的に支持を広げたのである。
対するれいわ新選組は、確固たる党員制度を持たず、個人の熱意と不安定な寄付に頼る組織であった。地方組織からの安定した集票力を持つ参政党に対し、れいわ新選組は熱狂に頼るしかなく、この「組織力の差」が選挙戦での大きな敗因となったのかもしれない。
外部から参政党に票を奪われただけでなく、れいわ新選組は内部からも自壊していった。
1月21日、山本太郎代表は多発性骨髄腫(血液がんの一種)の前段階であると診断され、議員辞職と無期限の活動休止を発表した。時事ドットコム(2026年1月21日)の報道によれば、山本氏は「過度なストレスが原因」と説明している。
国立がん研究センターなどの公的な医療情報において、過労やストレスと多発性骨髄腫の直接的な因果関係を医学的に完全に証明することはできないが、党のあらゆる活動と意思決定が、山本氏個人の多大な負担の上に成り立っていたことは紛れもない事実である。
圧倒的な発信力を持つリーダーを失ったことで、党は前へ進むためのエンジンを失ってしまった。
一部の熱狂的な支持者が選挙の敗北を素直に認めず、「不正選挙だ」
また、党の姿勢が極端になりすぎたことは、自壊の大きな原因である。大石晃子共同代表を党の顔にして選挙戦に挑んだが、党の勢いが落ちていく中で、本来であれば他党と柔軟に協力し、現実的な路線を探るべきであった。しかし、れいわ新選組は独自の純粋さを求めすぎた。
一部の熱狂的な支持者が選挙の敗北を素直に認めず、「不正選挙だ」と主張するなど、陰謀論に走る傾向すら見られた。党としても「妥協は悪である」というゼロか百かの極端な思考から抜け出すことができず、穏健な普通の有権者をさらに遠ざけてしまった。
資金も組織力も足りない中で、孤立無援のまま戦略的な選挙戦を行うことができず、結果として自らの手で議席を失うことになったのである。
れいわ新選組の崩壊は、決して一つの不運な出来事がもたらしたものではない。
「外部からの侵食」と「内部からの崩壊」
不満を抱える有権者の心を、「外国人排除」などのわかりやすい本音で刺激し、強い組織力で取り込んだ参政党に支持者を奪われたこと。
理想を語るだけでは政治の現実に勝てず、組織としての強さを持たなければ政党は生き残れないということを、この崩壊劇は示している。
経済的困窮層の怒りを代弁することで勢力を拡大したが、組織としての足腰を鍛えることを怠り、内実が伴わないまま「純化」という名の排他性に突き進んでしまった。より過激な言説と強固な組織を備えた参政党に支持層を奪われ、象徴を失うことで自壊したその姿は、熱狂にのみ依拠するポピュリズムがいかに脆いかを物語っている。
地に足のついた組織論と、理想を現実化するための柔軟な戦略を持たない勢力は、どれほど高邁な理想を掲げようとも、政治の荒波の中で淘汰される運命にある。
文/小倉健一 写真/集英社オンライン

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