「人気があるのになぜ終わる?」テレビ番組打ち切りの裏側 『人間研究所』最終回SPが暴いたテレビ局の事情
「人気があるのになぜ終わる?」テレビ番組打ち切りの裏側 『人間研究所』最終回SPが暴いたテレビ局の事情

テレビはまだまだトガっている。心に“刺さった”番組を語るリレー連載「今週のトガりテレビ」。

今回は、テレビウォッチャーの戸部田誠(てれびのスキマ)が、支持を集めながらも終了する個性的な番組の裏側と、テレビ局の「編成」と「制作」の思惑について語る。

個性的なテレビ番組が続々と終了へ

『ボクらの時代』(フジテレビ系)や『クレイジージャーニー』(TBS系)といった、他ではなかなか見られない個性的な番組の終了が正式に発表された。

誰しも、毎週楽しみにしていた大好きな番組が終わってしまった経験があるのではないか。むしろ、自分がその時期にいちばん楽しみにしていた番組ほど、短命に終わってしまう傾向さえ感じる。

このたび終了が発表された『人間研究所』(中京テレビ/日本テレビ)も、そんな番組のひとつだ。

動物が人間=「ホモサピ」の生態を観察するという体裁で、MCはニホンザルのリュウとブルドッグのヒカル、そして毎回もう一匹の研究員がゲスト出演する。

リュウとヒカルの声を担当するのは、秋山竜次(ロバート)と伊集院光という豪華布陣。さらにホモサピ側から数人のゲストが加わる。以前、佐久間宣行が出演した際も「コンセプトの割にはキャスティングが良すぎる」と語っていた。

MC陣は、自分が動物であることを隠れみのに、「交尾」やら「ぶち殺すぞ」など言いたい放題。企画もバカバカしく、かつ過激なものが多く、昨年始まった番組の中でも飛び抜けて“イカれた”存在だった。

だが、番組は約1年で終了することになってしまったのだ。

「番組終了、反対ー!」「『人間研究所』を返せー!」「ホモサピはアニマルに対して細かく状況を説明しろー!」「もっと終わるべき番組あるだろー!」

最終回を翌週に控えた3月4日放送回の冒頭、リュウとヒカル、そしてマイクロブタのリョウチャン(声:鬼越トマホーク・良ちゃん)のシュプレヒコールが、スタジオにこだまする。

そこで「最終回SP第一夜」と銘打ち、そもそも“番組終了”はどのように決まるのか、実際の証言をもとに徹底研究する「番組改編の真実」と題されたVTRが流された。

第1章は「制作スタッフの言い分」。総合演出が「最近、動物MCだからこその個性が世間に伝わってきている気がします。下半期はより一層、他番組にはない唯一無二の内容にこだわっていきましょう」などと語る定例会議の様子などが、“教習所で流れるビデオ”のようなトーンの再現ドラマとして描かれる。

本人に絶妙に似ている役者が演じているのも可笑しい。

なぜ支持されている人気番組が打ち切られるのか

ここで明かされたのは、近年、TVerやSNSなどの視聴率以外の評価軸が多様化してきたことにより、ゴールデンだけにこだわらず、特定の視聴者層に強く支持される「カルト的番組」への憧れを持つ制作スタッフが増加している、という実情だ。

この番組の制作陣も、最優先事項として掲げていたのが、「他番組にはできない、動物MCだからこそのオリジナリティ」だったという。

実際、SNSでは高い支持を得て、TVerでもランキング入り。制作陣が目標としていた視聴率も達成した。その“成功”によって、番組はより「深夜らしい」方向へと舵を切っていく。しかし、それこそが“落とし穴”だった。

VTRは次第に、不穏な犯罪ドキュメンタリー風味になっていき、第2章「編成の言い分」へと移る。

編成部は、全番組を管理し、どの時間帯にどの番組を放送するのかを決める、いわばテレビ局の指令塔。

改編期に番組継続の可否を判断するのも編成である。その編成側が『人間研究所』の課題として指摘した部分こそ、制作が大事にしていた「深夜感」だというのだ。

「GP帯を狙うには、もっと広い世代の視聴者を獲得しないと」と。

GP(ゴールデン・プライム)帯とは、19時から23時。この時間帯では「全世代に愛される番組」かどうかが重視される傾向にある。そのため近年では、親子で楽しめるゲームやクイズバラエティ、結末が気になるチャレンジ企画などが重宝されるという。

そこで編成は制作側に「深夜っぽさを少し薄められないか」と提案する。しかし制作側は、「この番組の個性、わかってる?」と取り合わない。番組をどう作るかは制作スタッフの領分であり、基本的に編成側から番組内容へ直接介入することは難しい。

ここで「専門家」として佐久間宣行が登場し、こう証言する。

「番組の評価基準が、編成の担当者によって違ったりするのもある。そうすると、制作陣が思っている『いい番組』っていう評価基準と、編成のその担当者が考える評価基準っていうのが違うことは今の時代ままある。

そこを常にレベル合わせしておかないと、制作が『番組の調子が良い』と思っているのに、編成からは『底が見えた』と思われることもある」

こうして「いい番組」の解釈が食い違っていった結果、『人間研究所』は終了することになったのだ。

テレビ局とって深夜番組の役割は…

「最終回、やけくそになってない?」「一般の視聴者に見せるVTRじゃない」出演者たちがそうツッコむほど、ディープでリアルなテレビの内幕を描いたVTRだった。

時間帯に合った面白さを追求する制作スタッフ。
より多くの視聴者に届く番組を育てたい編成スタッフ。
どちらも決して間違っていない。その故に難しい。

かつて深夜は、テレビの“実験場”だった。だからこそ多様な番組が生まれ、テレビ文化は活性化していた。しかし、いつしか深夜は、GP帯の“予備軍”になった。GP帯に昇格できる番組か、マネタイズできる番組以外は終わってしまう。そこに、どうしても閉塞感を覚えてしまう。

世帯視聴率から個人視聴率への移行や、配信再生数といった新しい評価基準によって、状況は多少好転したようにも見えた。

しかし個性的な番組が生き残り難い根本的な構造は、まだ大きく変わっていないようだ。

もちろん、GP帯を目指す番組があってもいい。けれど、深夜枠に“深夜らしい面白さ”を持つ番組が存在すること——つまり「編成枠」という概念があること——こそが、時間帯など関係のないプラットフォームが乱立する配信時代において、テレビの強みになるはずではないか。そんなことを考えてしまうVTRだった。

ところで、これは「最終回SP第一夜」。赤裸々に内幕を晒して“焼け野原”になったような状態で迎える、本当の最終回である「第二夜」は、果たしてどんな“イカれた”幕の引き方をするのか、見ものだ。

文/戸部田誠(てれびのスキマ)

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