片山大臣もショック「NISA貧乏」が話題、将来のために今を犠牲にする若者たち「本当は税金・社会保険料貧乏じゃないの?」の声も
片山大臣もショック「NISA貧乏」が話題、将来のために今を犠牲にする若者たち「本当は税金・社会保険料貧乏じゃないの?」の声も

新NISAの普及で若い世代の投資熱が高まるなか、生活費や交際費を削ってまで積み立てを優先する「NISA貧乏」が話題になっている。国会では片山さつき金融担当相が「積み立て自体の目的化は意図していない」と述べた一方、Xでは「本当に苦しいのは社会保険料や税金が重いからではないか」との声も広がった。

将来への備えと、今を生きるためのお金の使い方。そのバランスをめぐる議論が熱を帯びている。

片山さつき財務大臣「ショックを受けた」

「NISA貧乏」という言葉が、単なるネットスラングでは済まされない重みを帯び始めている。この言葉は20代、30代の若年層が、将来不安から新NISAへの投資を優先するあまり、お金がなくて苦しんでいる状況を指す。

10日の衆院財務金融委員会で国民民主党の田中健議員が「NISA貧乏」についての認識を片山さつき財務大臣に質問した。これに対し片山大臣は「(このような状況があることに)ショックを受けた」とし、「積み立て自体の目的化はまったく意図していない」と回答した。

さらに、最適な資産運用だけでなく、毎年・毎月の収入をどう使うかも金融教育に含まれるべきだと述べ、金融経済教育の必要性を訴えた。

新NISAは本来、家計の安定的な資産形成を後押しするための制度であり、長期・積立・分散投資を通じて、少額から無理なく資産形成を始めることを念頭に置いている。ところが現実には、「非課税枠を埋めないと損をする」「将来に備えるには今を削るしかない」との心理が先行し、生活費や交際費、趣味、学びに使うお金まで切り詰めて積み立てを優先する人が出てきた。これが「NISA貧乏」と呼ばれる状態だ。

ただ、制度の建て付けを冷静に見れば、順番は本来逆である。金融庁のNISA特設ウェブサイトは、資産形成の基本として、まず「家計管理とライフプランニング」を挙げ、その上で「長期・積立・分散投資」の考え方を示している。つまりNISAは、生活を壊してまで優先するものではなく、家計を整えたうえで使う手段のはずだ。

片山氏の答弁は、この制度の原点をあらためて言い直したものともいえる。

なぜ若者が今の生活を犠牲にしてまで「投資」に駆り立てられるのか。そこには年金をはじめとする社会保障制度への不安や、深刻化するインフレがある。「老後2000万円問題」が話題になって久しいが、インフレ時代に突入した今、若者にとって「老後2000万円で済むのか問題」となりつつあるのだ。

「20歳の100万と80歳の1億円は同じくらい価値ではないか」

一方で、X上では「若いうちにしか引き出せない価値」を重視する声も強い。人にもよるが、年を取るにつれ、旅行の楽しさや美味しいものを食べたときの感動などが薄れていくことから、今の生活を犠牲にすることに疑問の声が相次いだ。X上には、

「投資は手段。人生の全てじゃない」

「お金から価値を引き出せる能力も若い頃の方が高いとしみじみ思う。20歳の100万と80歳の1億が同じくらいの価値ではないか」

「今も少しは生活を楽しまないと」

などの声がみられた。

また、金融商品への投資より、そのお金を自己投資し、自分の市場価値を高めたほうが30代以降の回収は大きい、という意見も目立った。

ここで言われているのは、単純な「投資か浪費か」という二択ではない。旅行、交友、学び、健康、挑戦といった支出は、将来の所得や幸福度に跳ね返る「自己投資」でもある、という感覚だ。

若い世代ほど、お金を使って得られる経験の密度が高いという実感が、「今を削って老後に回すこと」への違和感につながっている。

さらに、より本質的な反発もある。Xでは「NISA貧乏ではなく、社会保険料貧乏、税金貧乏ではないか」という投稿も見られた。

背景には、そもそも積み立てに回せる余力の乏しさがある。国税庁の2023年分民間給与実態統計調査では、25~29歳の平均給与は約394万円。この水準の平均手取り額は、条件によって変わるが、概算で約315万程度とされる。

しかも財務省資料では、勤労者世帯の税・社会保険料負担率は平成以降の35年間で5ポイント強上昇し、その増加の大半は社会保険料負担によるものだという。さらにこの4月からは、「子ども・子育て支援金制度」が始まり、会社員や公務員の場合、26年度は平均月額500円程度、負担が増える。

若者から見れば、「投資しないから将来が不安なのではなく、手元に残るお金が少ないから今も将来も不安だ」というのが、率直な実感だろう。

もちろん、NISAそのものが悪いわけではない。長期・積立・分散を非課税で後押しする制度としての意義は大きい。だが、制度の普及が若年層の生活不安の上に成り立つなら、それは金融政策の成功でも、家計の健全化でもない。

政治が本当に向き合うべきなのは、「もっと積み立てろ」と呼びかけることではなく、若者が今を壊さず、将来にも備えられるだけの可処分所得、賃金、社会保障の見通しをどう作るかという問題だ。「NISA貧乏」という言葉がここまで流行したのは、投資への反感が強いからではない。安心して使い、安心して貯められる社会が、まだ十分には見えていないからである。

取材・文/集英社オンライン編集部

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