2026年北中米ワールドカップを巡り、イラン代表が大会参加を見送る可能性が強いとの報道が広がっている。イランのアフマド・ドニャマリ・スポーツ大臣は国営テレビで「いかなる状況でも参加できない」との趣旨を表明した。
イランはすでに本大会出場を決めており、グループGでベルギー、エジプト、ニュージーランドと対戦予定で、3試合すべてがアメリカ国内での開催となっていた。
罰金だけでは終わらないイランが受ける重い処分
現時点でFIFA(国際サッカー連盟)への正式な辞退が確認されたわけではなく、あくまで政府高官による強い不参加表明である。
しかし、仮にイランが正式に撤退すれば、FIFAの処分は相当に重い。2026年大会規定の第6条は、出場国に対し「敗退するまで全試合を戦う」義務を課している。そのうえで、開幕30日前までの辞退でも最低25万スイスフラン(約5000万円)、開幕30日未満での辞退なら最低50万スイスフラン(約1億円)の罰金を科すとしている。
さらに、すでに受け取ったチーム準備金や大会関連の拠出金は返還義務が生じる。大会開始後に辞退、あるいは不参加によって試合が成立しなかった場合には、FIFAや現地法人、他の参加協会に生じた費用や損害の補償を命じられる可能性があり、FIFAからの金銭的分配を受ける権利も失い得る。
しかも問題は罰金だけで終わらない。規定上、FIFA懲戒委員会は追加的な懲戒措置を科すことができ、将来のFIFA開催大会からの排除まで選択肢に入る。サッカー関係者の間でも、「イランが一方的に撤退した場合には将来大会への出場停止を含む制裁の可能性がある」といわれている。
ワールドカップのような世界最大の大会で、組み合わせ抽選後に本大会出場国が自ら退く事態はきわめて異例であり、FIFAとしても軽い処分では終わらないだろう。
では、繰り上げで出場する国はどうなるのか。ここは憶測が先行しやすいが、FIFA規定は「撤退や除外が生じた場合、FIFAが単独の裁量で必要な措置を決める」と定めるにとどまり、自動的にどの国が繰り上がるかまでは書いていない。
つまり、「アジア予選9位だから自動昇格」と機械的に決まるわけではない。もっとも、イランがアジア枠で勝ち取った出場権である以上、競技の公平性からAFC(アジアサッカー連盟)の経路で代替国が検討される可能性はあるが、規定上はFIFAの裁量で決まる。
サッカー界、スポーツ文化にとって大きな痛手
報道や分析では、アジア予選の結果を踏まえ、イラクやUAEが候補として取り沙汰されているが、現時点でFIFAが正式に代替国を決めた事実はない。さらに、もしグループリーグ途中まで問題がもつれ込めば、当該チームの試合結果を無効とする規定もあり、競技面の混乱は一段と大きくなる。
それでも、最大の損失は制度論や枠の再配分だけではない。ワールドカップは本来、政治的対立や国際的緊張を超えて、各国の代表が同じルールの下で競い合う「平和の祭典」であるはずだ。その舞台から、予選を突破した国が安全保障や外交情勢を理由に姿を消すとなれば、それは当該国だけでなく大会全体にとって大きな痛手になる。
代替出場国が決まり大会が開催されたとしても、不完全な形であり開催期間中のテロや暴動などの不安がつきまとう。世界最高峰の大会に求められるのは、華やかな演出だけではなく、参加国が安心して戦える国際舞台だ。
今年開催されたミラノ・コルティナ冬季五輪ではロシアが国としての参加が認められなかった。それに続き、同年に開催されるW杯でのイラン不参加報道は、不安定な現在の世界情勢を象徴している。
W杯という舞台だけでなく、国際的な平和と友情の象徴としての役割を担うはずのスポーツ文化が被る損失は大きい。
取材・文/集英社オンライン編集部

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