「タイミーやめた」の声続出…スキマバイト求人に“資格必須の募集”が増加? スポットワーク業界の現在地
「タイミーやめた」の声続出…スキマバイト求人に“資格必須の募集”が増加? スポットワーク業界の現在地

スキマ時間を利用して気軽に働くことができるスポットワーク。業界トップのシェアを獲得し、現在もユーザー数を伸ばす「タイミー」だが、最近は美容師や保育士など資格必須の求人が多く、応募のハードルが高くなっているとも。

人材サービス事業に20年以上従事し、雇用労働関連の研究を行うワークスタイル研究家の川上敬太郎氏にそのワケを解説してもらった。

「資格職ばかりでタイミーやめた」求人募集のハードルが高くなっている?

先日Xでは、スポットワークサービスのタイミーに関する以下のポストが話題となった。

『久しぶりにタイミーで近所の求人を探してみたんですけど、
・保育士の資格がある人
・理容師の資格がある人
・ペットトリマーの経験がある人
・自動車整備士の資格がある人
・フォークリフトの免許がある人
っていう求人ばっかりなので「いやあるわけねーだろ!!!!!」と思わず叫んでしまった』

誰でも飛び入りで働ける手軽さが人気となっていたタイミーだが、現在は保育士や理容師、自動車整備士などいわゆる“資格職”の求人であふれているというのだ。

これにはコメントで共感の声が集まっており、「ほんとこれ過ぎてタイミーやめた」「久しぶりタイミー覗いたらほんと資格者限定しかなくて無理だった」など、特にここ1年ほどで資格職の求人が増えてきているとのこと。

川上氏はこうした掲載求人の変化についてこう推測する。

「飲食店などの特別な資格がなくても働ける人気の求人は、リストの上位に浮かんですぐ人員が埋まることから“フロー求人”と言え、逆に資格が必要で応募のハードルが高く、なかなか人員が埋まらずに残ってしまう求人は“ストック求人”だと言えます。

そしてこれはタイミーに限らず、どの求人サイトにもみられる傾向なのですが、ストック求人はどうしても残り続けてしまうことが多いために、全体的に見ると資格必須の求人ばかりに見えてしまうという現象があります。

また現在タイミーは、介護士資格を要する介護福祉系の職や、フォークリフト運転資格などを要する物流系の職など、人手不足の業界の求人を積極的に掲載しているという流れもあって、求職者からすると最近はより資格職の求人が増えているように感じるといったことも考えられます」(川上氏)

資格保有者限定の求人、実際に人は集まっているのか?

またXでは「そもそも有資格者がタイミーで仕事探すのかな」といった疑問の声もみられた。人員確保が難しい傾向にある “ストック求人”、実際にタイミーで人は集まっているのだろうか。

「たしかに有資格者の場合は、すでに常勤のアルバイトやフルタイムの正社員として働いているケースが多いため、スポットワークだと採用難易度が高いことは事実だと思います。しかし例外的なケースも考えられます。

例えば、資格は持っているけれど、長年その職から離れて専業主婦をされていた方などが、手ならしに最初に短期仕事で復帰をするといったことは割とよくあることだと思います」(川上氏)

さらに2024年からタイミーでは新規事業として「タイミーキャリアプラス」というサービスを開始している。

これは資格職の有無にかかわらず、ワーカーが挑戦したい仕事ができる機会を提供するもので、タイミーを利用した際の勤務実績や取得したスキルなどを可視化し、タイミーから正社員求人を紹介してもらうことができるというサービスだ。

川上氏は、資格職の求人がワーカーを長期就業へと繋げる場にもなっていると指摘する。

「先ほど例として挙げたケースのように、資格職を持っていても何らかの理由で長年その職から離れていた人にとって、資格職の求人の場は長期就業に繋げていくための第一歩として挑戦しやすい場なのです。

タイミーは、短時間で手軽に働けるということで人気を集めたわけですが、それだけにとどまらず、使い方次第で多様なキャリアを築くことができるツールでもあると思います」(川上氏)

責任が伴う資格職、今後スポットワーク採用を規制する方向性はある?

タイミーでは保育士の求人も多く見られるが、昨年の2月14日、こども家庭庁から「保育所等におけるスポットワーク(いわゆるスキマバイト)により採用された保育士の取扱いについて」という通知が発表されており、今年になってXでも話題になった。

この通知には、スポットワークで採用された保育士を、保育士配置基準における最低基準上の保育士定数の一部として充てること、そして、子どもとの安定的・継続的なつながりが重要であるという職業の性質上、短期の雇用を長期的に繰り返すことは望ましくないとの内容が記されている。

これらは保育所におけるスポットワーク採用が、実質“制限”されていく可能性があると捉えることもできる。

このように、安全面や品質面での責任が伴う資格職を今後スポットワークで採用することに何らかの規制が加わる可能性もあるのだろうか。

「こども家庭庁が発表した通知に関しては、スポットワークの制限にまでは言及しておらず、あくまで資格職は相応の責任やリスクを伴うものであるということを、改めて警告として明文化したものであると考えます。

また事業者や雇用側には、ただスポットワークで雇う方が“便利で楽だから”という気軽な理由で積極的に採用すべきではないということ、スポットワークの人を雇う場合は必要性に応じて慎重に判断すべきだということを周知しているのだと思われます。

スポットワークの資格職求人で重大なトラブルが出れば規制の方向性も当然出てくるでしょうけれど、現時点ではすぐにという話ではないと思います」

“資格職ばかり”だと一部ユーザーから不満を買っているタイミーだが、今後スポットワーク業界において一強であるタイミーが凋落していく可能性はあるのだろうか。

「資格職ばかりだという理由でサービスとしての人気が落ちていくということはあまり考えられないと思います。

タイミーはスポットワーク事業のみならず、そこから発展して長期就業支援のサービスを開始するなど、さまざまな取り組みをしていますので、多様な活用法が期待できるという意味では、ユーザーに今後も幅広く支持されるでしょう。

“資格職が多い”といった求人の質が問題であるというよりも、求人と雇用でそれぞれ責任の所在が別であることによって生じるトラブルこそがスポットワーク業界の課題といえるでしょう。

例えばタイミーの場合は、かつて出勤時に募集先企業と被雇用者の労働契約が成立するとしていたため、出勤前日や出勤直前に企業側の都合で出勤予定がキャンセルになるといったケースで、被雇用者から訴訟が相次ぎました。

求人を企業が直接掲載すれば、応募の段階から企業に責任が問われるので、このようなトラブルは起こらないはずですが、求人のみを担うタイミーの場合は、こうした特殊な労働トラブルが起こりやすいのです。

スポットワークがはらむこうしたビジネスリスクに、いかに先手を打って対応していけるのかが、タイミー含むスポットワーク業界全体の成長を左右すると思います」

――“資格職ばかり”という不満の声の裏には、タイミーの規模拡大による求人数の増加、またフロー求人・ストック求人といった求人内容による性質の違いなど、さまざまな要因が絡んでいた。

スポットワークのあり方が変化するなかで、利用者と事業者双方にとって最適な形が問われている。

取材・文/瑠璃光丸凪(A4studio) サムネイル/PhotoAC

編集部おすすめ