2025年には東京23区の新築マンションの平均分譲価格が1億3000万を超え、一部のエリア限定ではあるが「令和バブル」とも言うべき不動産価格の上昇が注目されている。だが、そんな不動産市場にまた新たな変化が訪れているという。
『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』より一部抜粋、再構成してお届けする。
※ 本書の記載内容は2026年2月現在のものであり、記載された情報に関しては、万全を期しておりますが、内容を保証するものではありません。また、本書は特定の金融商品、投資商品を推奨するものではなく、記載内容を利用したことによる、いかなる損害・損失についても出版社、著者、ならびに本書制作の関係者は一切の責任を負いません。投資の最終判断はご自身の自己責任でお願いいたします。
⼟地価格は「三極化する」
ここ数年、「二極化」が不動産市場のトレンドとして語られてきた。価格が上昇あるいは維持される地域と、無価値化に向けて下落していく地域に分かれるという二極化だ。
ところが、今やその構図は、「三極化」へと移行しつつある。
というのも、今は価格が上昇しているエリアであっても、いずれはその価値を維持できずに緩やかな下落に転じるエリアが出てくると考えられるからだ。
要するに今後の不動産市場は、「上昇あるいは価格を維持するエリア」「緩やかに下落していくエリア」「二束三文と化すエリア」という3つのカテゴリーに明確に分けられていくことになるだろう。
もともと、日本において不動産価格が上昇する要因は限られている。
日本で不動産の価値を上げられるのは「再開発が行われる地域」と「新駅が開業する地域」、そして「希少性が高い価値のある地域」だ。
それ以外の場所は、スピードに差はあっても価格は下がっていくものだ(再開発も昨今のインフレで計画見直しや遅延が相次いでいるため、案件ごとに精査する必要がある)。
そのような状況下で、六本木や麻布など、誰もが知る超一等地に開発されている1戸20億円~、最も高い物件で300億円を超えるという超富裕層向けの高額不動産は、今後も価格が維持される筆頭格だ。
その理由は供給が限られ、希少性が保たれている限り、その価値は下がらないからだ。
そもそも日本で20億円を超えるような住宅は、実質的に麻布台ヒルズのアマンレジデンス 東京、渋谷の松濤や表参道、青山など、ごく一部にしか存在しない。
それでも、このクラスの物件を探す顧客は常に一定数存在し、需要は尽きない。さすがに20億円の物件が量産されることはないので、希少性という点で価値の下落は考えにくい。
しかし、その一方で、地方ではすでに「家余り」の現象が起こっており、相続手続きが未了のまま登記がされずに放置される空き家が急増している。
世田谷でも例外ではない“住宅価格下落”の現実
2024年から不動産の所有者が亡くなった際には相続人に名義変更の登記が義務づけられたが、それ以前に何年も放置されてきた土地や住宅はごまんとある。
価値のない不動産であっても登記するには費用がかかり、固定資産税まで課されるのだから、当然といえば当然だ。
2050年を迎えるころには、価格が維持されるごく一部の地域と、緩やかに下落していくエリア以外の大半が、無価値化するだろう。
すでに山林や過疎地などは二束三文になっているが、いずれは、現時点では人が住んでいるが今後減少していくエリアにまで無価値化は波及していくはずだ。
東京都内の住宅地として人気エリアである世田谷区でさえ、沿線にもよるが、駅徒歩圏外の交通の利便性が良くないエリアでは、確実に価格が下がっていくだろう。
日本の中でも屈指の人口集積地である世田谷でさえそうなのだから、他の地域がどうなるかは想像に難くない。
住宅価格が大きく下がれば、安く家を持てると喜ぶ人もいるだろう。もちろん、安くなれば買いたいと考える層が一定数現れて、それなりに買い手がついて価格が下げ止まるタイミングが到来してもおかしくはない。
しかし、安い価格で手に入れた住宅であっても、維持費は確実にかかってくる。
住宅の維持には、外壁の再塗装や屋根の修理、防水工事、水回りのリフォーム、除草など庭の管理、害獣対策などさまざまなコストが建物を保有する以上永続的にかかる。
特に安い価格で手に入れた住宅の場合は、購入よりもメンテナンスにはるかに費用がかかるということもあるだろう。
しかし、高齢化や人手不足により、こうした工事を依頼できる業者を探すのも大変で、その費用は上がることはあっても下がる材料は見当たらない。
そうなると結局、「持たないほうが得だ」という考えに至る人が増え、「賃貸派」が再び幅を利かせてくる可能性も十分ある。そう考える人が増えれば、住宅価格は再び下落していくことになる。
住宅に対する考え方も二極化していく
住宅を所有する意味が問われる中で、人々の価値観も多様化している。
たとえば、「メンテナンスが面倒」「コストを抑えたい」「都市部へのアクセスにこだわらない」という人であれば、地方の賃貸物件に移住してリモートで働きながら、娯楽はYouTubeとNetflixで済ませるというライフスタイルも十分成立する。
その一方で、「都市での生活に価値がある」と考える層も依然として存在し、レベルの高い飲食店やショッピング、エンターテインメントなどの体験を求めて都心に住み続ける人もいる。
要するに、住宅に対する考え方も二極化していくということだ。
賃貸で十分という層と、とんでもないお金を住宅にかける層に分かれ、ちょっと背伸びをして住宅ローンを組んで一生かけて返済していくという昔ながらの主流派は少数派に追いやられる可能性もある。
住宅というモノの価値そのものが大きく変わり、「家はそこら中にあるもの」「買う必要などないもの」という感覚が一般化するかもしれない。
この変化は特定の地域に限らず、全国で起きている。
もちろん、この変化は一夜にして起こるものではない。
2025年問題がそうであるように、これは始まってから初めて認識できるタイプの変化であり、これからもじわじわと進行し、ある一定のタイミングを境に加速していくだろう。
文/小林大祐
2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略
小林 大祐
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