見ない・読まない・考えない? 人が何かを「パッと買う」ときの複雑で単純な行動原理とは?
見ない・読まない・考えない? 人が何かを「パッと買う」ときの複雑で単純な行動原理とは?

ある店が値段の表示を「税抜」から「税込」に変えただけで、客足が遠のいてしまったという。合理的に考えれば何も変わっていないはずなのに、なぜこのような現象が起きるのか? 人の購買行動が「複雑で単純」といわれる、その真意とは?

 

本記事は書籍『13歳からのマーケティング』から抜粋・再構成したものです。

人はきっちりしていないことの方が多い

人の気持ちや行動を明らかにすることは、どんなビジネスにとっても大切です。「こういうとき、人はこうなる」というルールをたくさん見つけておけば、商品・サービスをヒットさせやすくなります。

でも、気をつけておきたいのは、人の気持ちや行動のルールは変わりやすいということです。合理的に考えたら「こうすれば、必ずこうなるはず」といった理屈が、いつでも人に当てはまるわけではありません。楽しさやストレス発散を求めて、合理的ではないムダづかいをしたい人や場面があるように、理屈が通じないことは少なくないでしょう。

人は直感や感覚でモノを選びがち

例えば、人は売り場も、商品も、広告も、そんなによく見ません。広告の小さな文章や、パッケージの裏面の情報まで、ちゃんと読む人はほとんどいません。

会社からすると、「ちゃんと書いているのに」「もっとよく読んでよ」と思いたくなるかもしれませんが、消費者の1人になって考えてみれば、自分もそんなによく読んでいないことが多いはずです。

よく見ずに、ちゃんと読まずに、第一印象やイメージでパっと決めて、商品・サービスを選ぶことの方が多いです。その結果、会社は「良い商品をつくったのに、なぜか売れない」「広告で情報を発信しているのに、どうして伝わらないんだろう」と頭を悩ませることになりがちです。人は、いつでもどこでも、きっちりしているわけではないのです。

あるお店で、商品の値段の表示を「税抜」から「税込」に変えました。もとの税抜の表示でも、レジで買うときには、もちろん税込で計算されます。だから、最初から税込で表示した方が、お客にとってわかりやすいだろうと考えたのです。

ところが、「税込」表示にしたとたん、その店を利用することをやめて、他の店に行くお客が増えてしまったといいます。それは、よく見ずに、パッと見で「あれ、値上げしてる」と勘違いした人がたくさん出たためでした。それくらい、お客はきっちりしていないのです。

人の買い方は複雑で単純

人は合理的じゃないことの方が多くて、決まった通りに動くとはかぎらない。その事実をわかったうえで、合理的じゃない部分まで人の行動と気持ちを明らかにすればいいのです。

人の買い方は複雑で、単純です。

いろいろな買い方がある、という意味では複雑です。そして、多くの人が簡単な買い方を選びやすい、という意味では単純です。

多くの場面で、多くの人が、商品・サービスを簡単に選べる方法を好みます。例えば、イヤホンがほしいと思って家電量販店に行ってみると、多すぎるほどの種類のイヤホンがずらっと並んでいます。そのすべての選択肢について、どれほど優れた音質で、どれくらいの重さと形で、どんなイメージのブランドなのか、などを細かくチェックして、すべてを入念に検討してから買う人はとても少ないはずです。

簡単に選ぶ方法を好む

もっと簡単に、早く、パパッと商品を選びたいから、私たち消費者は、経験や記憶、価格、ブランド、そして他の人の行動などの情報を頼りにしやすいのです。

「前もこれを買ったから、今回も同じブランドのもので」「広告で見たことがあるものにしておこう」「値段が高い方が良いモノのはず」「有名なブランドにしておけば安心」などと考えて、よく調べず、よく見ずに選んだりするでしょう。自分が詳しくないジャンルや商品であれば、なおさらです。

他の人の行動、という情報も頼りにされやすいものです。「みんな」が買っていて、人気で、高評価しているものを、自分も買おうと思いやすいわけです。

在庫の残りが少ない、長い行列ができている、クチコミの数が多い、といった情報は、「人気」の手がかりになりますね。特に、SNSのクチコミの影響は大きく、自分1人で考えているつもりでも、無意識のうちにSNSの目立った情報に流されて、考えたり動いたりすることは増えています。

文/永井竜之介

マーケティング用語と解説

【サイエンス/アート】
人やビジネスについて考えるとき、データをもとに理屈で合理的に考えることを「サイエンス」、感覚や勘をもとに理屈を超えて非合理的に考えることを「アート」と呼びます。サイエンスとアートはどちらも大切です。

【データドリブン・マーケティング】
いろいろなデータを集め、分析したうえで進める、データ重視のマーケティング。

【消費者行動モデル】
合理的に考えたとき、人はこう動くだろう、という基本のルールになる考え方。人が商品やサービスに対して、注目し、興味を持ち、情報を調べて、買い、その後にクチコミを広める。こうした動く順序のモデルがいろいろと考えられています。

【ヒューリスティック】
経験・記憶・価格・ブランド、あるいは他の人の行動などの情報を使うことで、簡単に早く、パパッと選んだり買ったりすること。

人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング

永井 竜之介
見ない・読まない・考えない? 人が何かを「パッと買う」ときの複雑で単純な行動原理とは?
人の“行動”と“心理”が見えてくる 13歳からのマーケティング
2026/1/261,650円(税込)236ページ978-4868380306

「つい買っちゃうってどういうこと?」
「スマホを見ていると、どうしてこんなに広告が流れてくるの?」

みんなが商品を買ってしまう行動、逆に商品を買わせる戦略、そしてそれらを含めた大きなビジネスの仕組み=“マーケティング”をやさしく、わかりやく、イラストと事例を交えて紹介しているのが本書です。


「どうしてポケモンは親子でハマるのか?」「考察で盛り上がり視聴率や売り上げが伸びるドラマやマンガの仕掛け」「安さよりも楽しさでお金を使う心理」など、言われてみると気になる人や世の中のカラクリが見えてきます。
子どもも大人も知っておきたい、ビジネスにも使えるお金・欲求・面白さにまつわる人の行動と心理の話が満載です。

【目次】
第1章 マーケティングってなんだろう?
第2章 ビジネスの種をつくろう
第3章 商品を売るために何をする?
第4章 商品はどうやって広める?
第5章 ブランドはどうして大事なの?
第6章 人の「つい買っちゃう」心理を知ろう

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