〈2週間停戦も〉トランプの対イラン戦略は「ヨーヨー状態」…圧倒的軍事力を持つアメリカの“迷走の本質”
〈2週間停戦も〉トランプの対イラン戦略は「ヨーヨー状態」…圧倒的軍事力を持つアメリカの“迷走の本質”

ホルムズ海峡の開放を条件に「2週間の攻撃停止」――。トランプ米大統領は突如、対イラン軍事作戦の一時停止に同意した。

だが、その強硬と融和を行き来する姿勢に、米主要メディアは厳しい視線を向け続けた。CNNはその戦略を「ヨーヨー」と酷評。なぜ世界最強の軍事国家が“出口なき戦争”に陥ったのか。

CNNに「まるでヨーヨー」と揶揄されるトランプ

対イラン軍事作戦を巡り、トランプ米大統領は米東部時間7日夜(日本時間8日午前)、イランが事実上の封鎖を続けてきた原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の開放を条件に、2週間の攻撃停止に同意すると明らかにした。イラン側も応戦しないと表明し、2週間は「安全な通過が可能になる」と説明した。

だが、アメリカの主要メディアは、ここまで明確な出口戦略を持たずに強硬姿勢ばかりを誇示し続けたトランプ大統領の姿を、冷ややかに分析している。

CNNは「Epic flurry: How Trump has shifted his stances on Iran repeatedly」(3月25日配信)と題した詳細な検証記事のなかで、政権トップの矛盾した姿勢を「ヨーヨー」という言葉を使って痛烈に揶揄した。記事には次のように記されている。

勝利宣言の直後に、戦いは終わっていないと前言を翻す

「イランへの最初の米国攻撃からほぼ1ヶ月が経過した中で、ドナルド・トランプ大統領は『無条件降伏』を要求する立場から、可能なデタント(緊張緩和)をほのめかす立場へとヨーヨーのように行ったり来たりした」

「3週間の間に、大統領は米国が勝利を達成したと繰り返し主張する一方で、戦争は続いている、『十分に勝っていない』、まだ『仕事を仕上げる』必要があるとも述べた」

ヨーヨーという表現は、現在の状況を的確に描写している。手元から離れては戻ってくるおもちゃのように、大統領の発言は強硬と融和の間を激しく往復し、着地点を見出せていない。

ある日は敵国の無条件降伏を声高に叫び、別の日は急に対話や交渉の可能性をちらつかせる。勝利宣言の直後に、戦いは終わっていないと前言を翻す。大国を率いる指導者として弱気を見せることは、国内政治において致命傷になりかねない。

圧倒的な軍事力を持つアメリカが、なぜ無様な迷走を

ゆえに、ひたすら強い言葉を並べ立てて自らを鼓舞する必要がある。

結果として、強がりと現状への不満が複雑に絡み合い、同盟国にも敵国にも意図が伝わらない、支離滅裂なメッセージが発信され続ける事態に陥ることとなった。

発言がブレ続けることは、前線の将兵や外交実務者にとっても計り知れない混乱をもたらす要因となっている。

なぜ、圧倒的な国力と軍事力を持つアメリカが、ここまで無様な迷走を重ねたのか。最大の原因は、戦争の目標自体が常に変化し、一貫した国家戦略が存在しない点にある。

到達すべきゴールが毎日動くようでは、いかに優れた軍隊であっても作戦を完遂することは不可能に近い。CNNは「The Trump team’s ever-changing list of 4 goals in Iran」(3月31日配信)という別の記事において、政権内部の深刻な機能不全を次のように指摘している。

「しかし、目標が正確に何であるかに関して、政権は著しく一貫性を欠いている。当局者は定期的に4つの目標を挙げてきたが、日付や誰が提供するかによって頻繁に変わっている」「政権が4つの目標さえ一貫したリストとして提示できない場合、戦争努力の成功を測定するのは非常に困難になる」

定まらない「トランプが戦争を始めた理由」

目標が定まらない軍事作戦ほど悲惨な結末を迎えるものはない。成功の基準が曖昧なままでは撤退の決断を下すことができない。明確な戦果がないからこそ、過激な攻撃オプションに手を出さざるを得なくなる。

ホワイトハウスの主は自ら始めた戦争が泥沼化するなかで、後戻りも前進もできない板挟みの状態に陥っていた。CNNは「Why Trump can’t explain the start — or the endgame — of the war in Iran」(3月10日配信)において、八方塞がりの現実を次のように表現している。

「開戦から10日目、トランプはなぜ戦争を始めたのかについて一貫した理由をまだ定めていない。今、大統領は和平が間もなく訪れるかもしれないとほのめかしている一方で、側近たちと共に戦闘が激化し長期化する可能性を同時に警告している」

苦境の根源は、国内政治の厳しい視線と国際社会における孤立にある。

常に「強い指導者」として振る舞うことを政治的な生命線としてきた。弱腰を見せれば強硬派から激しい反発を招く。

撤退すれば敗北の烙印を押され、攻撃を激化させれば戦争犯罪のリスク

しかし民間インフラを爆撃し、電力施設や橋梁を破壊すれば、国際法違反の戦争犯罪として世界中から糾弾される。同盟国でさえ距離を置き始める。軍事力を際限なく行使する選択肢は完全に封じられている。

さらにイラン側は強靭な忍耐力を見せた。制裁や空爆を受けても体制崩壊の兆しは見えず、なかなか海峡封鎖を解く要求には応じなかった。

時間が経過するほど、ガソリン価格高騰によるアメリカ市民の不満が蓄積していく。戦争の継続は国内経済を圧迫し、有権者の怒りは確実に政権へと向かう。

撤退すれば敗北の烙印を押され、攻撃を激化させれば戦争犯罪のリスクと戦火拡大という破滅的な結果を招く。どちらに転んでも歴史的な汚点となる危険性が高い。政治的遺産を築くはずだった軍事作戦が、今や首を真綿で絞める足枷となっているのである。

強硬な言葉を連発し、方針を揺れ動かしているのは、打開策を見出せない焦りと恐怖の裏返しに他ならない。

出口のない迷路の中で時間を空費し、威信を削り続けている。事態の深刻さは、トップが現実から目を背けている点にある。

CNN「戦争を主導する人物が詳細について十分に把握していない」

CNNは「Trump has crafted his own alternate reality on the Iran war」(3月17日配信)において、最高司令官の姿勢を痛烈に批判した。

「イラン戦争の戦略的・道義的賢明さについてどう思うにせよ、トランプ大統領のコメントが混乱し、一貫性がなく矛盾していることは否定できない。戦争を主導する人物が詳細について十分に把握しておらず、興味もないように見えることが多い」

現場の兵士たちが命の危険に晒され、世界経済が危機的な状況に陥っているにもかかわらず、指導者は具体的な戦略を描こうとしなかった。結果、思いつきの言葉を繰り返し、強がりを見せるだけのパフォーマンスが続くこととなった。

「弱気は見せられない、誇るべき戦果も挙げられない」という板挟みの状況は、指導者の資質にとどまらず、国家戦略の不在がもたらす悲劇である。武力を誇示するだけでは平和は構築できず、行き当たりばったりの発言は同盟国の信頼も損なう。一貫性のない戦争指導は深刻な遺産を後世に残す。敵国の核開発を温存させ、世界経済を不安定化させ、中東に深い憎悪を植え付ける。

権力を誇示する言葉は、事態をコントロールできていない無力さの証明に過ぎない。言葉が軽くなるほど戦場の命や市場のダメージは重みを増す。

停戦の期限は2週間。ヨーヨーの糸が絡まり誰の手にも負えなくなる前に、冷酷な現実を直視した再構築が求められている。

文/小倉健一

 

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