増加する高齢者による運転事故・政府が対策強化へ 97歳一遍上人の免許返還も話題に

増加する高齢者による運転事故・政府が対策強化へ 97歳一遍上人の免許返還も話題に

15日、高齢ドライバーの交通事故が増加していることを受け、安倍首相は事故防止に向けた対策を進めていくよう関係閣僚に指示をした。相次ぐ事故に心を痛めた97歳の一遍上人が免許を自主返納したことなども話題になっているが、一歩間違えれば大事故に繋がってしまう「高齢ドライバー問題」についてまとめてみた。

高齢ドライバー事故増加 政府が対策強化へ

15日、各地で相次いでいる高齢ドライバーの事故を受け、政府は関係閣僚会議を開き、来年3月に施行される認知症対策を強化した改正道路交通法に万全を期すとともに、事故防止に向けた対策を強化する方針を固めた。

安倍総理大臣は「大変痛ましい事故を防止するため、来年3月、認知症対策を強化した改正道路交通法を施行することにしている。まずは円滑な施行に万全を期すとともに、自動車の運転に不安を感じる高齢者の移動手段の確保など、社会全体で高齢者の生活を支える体制の整備を着実に進めていく」と述べました。
首相 高齢ドライバーの相次ぐ事故受け対策を指示‐NHK NEWS WEB

すでに来春3月に施行される改正道路交通法では、75歳以上のドライバーが交通違反をした場合には認知症の検査が義務付けられることが決定。臨時検査で前回の検査結果よりも認知機能が低下していた場合には、臨時講習を受ける必要が生じる。

また、認知症の恐れがあるとされれば、医師の診察を受けることも義務化。認知症ならば免許取り消しか停止となり、臨時検査や診察を受けない場合も免許取り消しとなる。
現在の道路交通法では、75歳以上のドライバーは3年ごとの免許更新時に認知機能検査を受けることになっているが、改正法では免許の更新時以外にも信号無視や一時不停止などの交通違反をした場合、臨時の検査が義務づけられる。
改正道路交通法、来年3月12日に施行へ‐日テレNEWS24

高齢者の暴走運転で小1男児が死亡も……痛ましい事故が相次ぐ

10月27日、横浜市で集団登校中の小学生の列に、87歳の高齢ドライバーが運転する軽トラックが突っ込み、小学1年生の男児が死亡した痛ましい事故が発生。

事故を起こした合田容疑者は、一晩中車を走らせていたものの、その間の記憶があやふやだという。取り調べについても意思の疎通が困難で、認知症の疑いがあるようだ。

合田容疑者は10月27日朝、ごみを荷台に積んだ軽トラックで横浜市磯子区の自宅を出発後、神奈川県内や東京都内で高速道路を出たり入ったりしていた。翌28日朝に事故を起こすまで断続的に走り続け、自宅周辺を何度も通り過ぎていたという。事故では男児1人が死亡したほか、児童4人と軽乗用車に乗っていた2人の計6人がけがをした。
高齢ドライバーの事故どう防ぐ 「認知機能診断」に課題‐朝日新聞DIGITAL

12日にも、東京都立川市の病院駐車場で83歳の女性が運転する乗用車が暴走して車道に突っ込み、30代の男女がはねられて死亡した。83歳の女性は認知症の症状は確認されていなかったようだが、誤ってアクセルを踏んでしまったようだ。
車を運転していたのは東京都国分寺市東戸倉1丁目の上江洲(うえず)幸子さん(83)で、敷地内の駐車場から出るとき、料金所の開閉式のバーを押しのけてそのまま直進。車道と植え込みを突っ切って歩道に乗り上げた。車の運転席には小銭が散らばっており、署は、料金を投入しようとした際、誤ってアクセルを踏んだ可能性があるとみている。
83歳の車暴走、男女2人死亡 東京・立川の病院敷地内‐朝日新聞デジタル

また、14日にも茨城県つくば市で、軽トラックと軽自動車が衝突。別の方向から来たワンボックスカーも巻き込まれる事故が発生した。この事故で軽自動車を運転していた64歳の男性が亡くなった。軽トラックを運転していた77歳の男性、ワンボックスカーを運転していた79歳の男性らもけがをして病院に搬送された。
茨城県つくば市の田んぼに囲まれた十字路で、軽トラックと軽自動車が出合い頭に衝突した。ぶつかった軽自動車は反対車線に横転し、さらに別の方向から来たワンボックスカーと衝突した。

 この事故で、横転した軽自動車を運転していた会社員・黒川一さん(64)が搬送先の病院で死亡した。また、軽トラックを運転していたのは77歳の男性、同乗者は70歳の男性、ワンボックスカーの運転手は79歳の男性、同乗者は67歳の男性だったが、いずれもケガをして搬送されている。

過信が原因か? 高齢ドライバー事故が後を絶たないワケ

なぜ、高齢ドライバーの事故が後を絶たないのだろうか。75歳以上のドライバーによる死亡事故は、2004年には全体の6.2%だったのに対し、2014年には12.9%に増加しているという。

事実、75歳以上のドライバーによる死亡事故は年々増え続け、2014年は全体の12.9%にあたる471件起きている。
 他人を巻き込む重大事故が頻発する状況は、もはや「不注意」では済まされない。ネット上では高齢者の運転免許を取り上げろと叫ぶこんな声が溢れている。
高齢ドライバーの事故頻発 乗るならMT車の義務付けどうか‐NEWSポストセブン

一方で、2015年の時点で運転免許証を保有している高齢者は1710万人いるが、自主返納者は65万人に留まっている。
誰しも自分の老いを認めたくない気持ちや、「まさか自分が」という思いがあるのだろう。また、長年運転しているがゆえに自信があることなども、免許返納率の低さ、および事故多発の一因ではないだろうか。
 駐車場事業やカーシェア事業を手がけるパーク24は、「クルマの運転は、ご自身で上手いと思いますか?」という質問に対し、免許取得年数が30年以上の人は4割が自分の運転が上手いと感じ、逆に下手だと感じている人は6%しかいない、という調査結果を2015年5月、発表しました。
原因は身体能力ではなく過信? 増加する高齢者ドライバーの事故‐乗りものニュース

加齢による判断力の低下や注意力の低下が指摘されている中、「事故を回避する自信がある」と答える高齢者の比率は高い。
番組では加齢によって注意力や判断能力が低下したり、視野が狭くなる傾向があるということが紹介されているのだが、一方アンケート調査では「事故を回避する自信がある」と答えた人の割合が60代後半以降で大きく上昇しており(10代から40代は10~15%程度だったのに対し、60代後半は30%近く、70代で45%程度、75歳以上で50%以上)、過度の自信も事故の原因になっている模様。
高齢ドライバーは「自分は事故を回避できる」と思っている傾向がある

原因は身体能力ではなく過信? 増加する高齢者ドライバーの事故

高齢ドライバーの事故を防ぐには 政府や地方自治体の対策が必須

高齢ドライバーの事故が相次いでいるとはいえ、簡単に「運転免許返納」といっても難しいのが現実だ。高齢者にとって車は足そのもの。特に交通の不便な地方では必要不可欠なのである。

そうなると、やはり国や地方を上げて、高齢ドライバーの事故防止に取り組むことが必須だ。

政府は今年、今後5年間の交通安全に関する基本計画案の中で、自動ブレーキの普及を促進するなどの対策を促進することなどを発表している。

2.車両の安全対策の「4つの柱」
 [1] 子供・高齢者の事故への対応 <交通事故件数の大幅低減に寄与>
  ‐ チャイルドシートの機能向上、オートライトの義務化、踏み間違い防止装置の普及促進等  
 [2] 歩行者・自転車乗員の安全対策 <交通事故件数の大幅低減に寄与>
  ‐ 対歩行者自動ブレーキの開発・普及の促進、灯火器技術の高度化等 
国土交通省‐今後の自動車の安全対策の方向について
(交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会技術安全WGとりまとめ)

また、高齢者ドライバーの免許返上を促す独自の取り組みを行う地方自治体も出てきた。

富山県富山市では、65歳以上の運転免許証返納者に対し、公共交通機関の1年分の乗車券を支給。福井県では市民バスの無料乗車県を交付しているという。
富山県富山市は「高齢者運転免許自主返納支援事業」を06年4月1日から導入した。運転免許を自主返納した65歳以上の人に、車に代わる公共交通機関の1年間分の乗車券(約2万円相当)を支給するというもので、それまで年間40人前後だった自主返納者が06年度で507人にまで増加。07年度も380人程度の高齢者が運転免許の自主返納をする見込みという。
運転免許返上が10倍増! 自治体が高齢対策に乗り出す‐Jcastニュース

福井県越前市でも07年10月1日から、高齢ドライバーの運転免許の自主返納者に対し、運転免許有効期限まで市民バスを無料で利用できる乗車券を交付し始めた。
運転免許返上が10倍増! 自治体が高齢対策に乗り出す‐Jcastニュース

74代目・一遍上人97歳、運転免許証の自主返納が話題に

神奈川県藤沢市に総本山・清浄光寺をかまえる時宗。その開祖である一遍上人から数えて74代目の法主・他阿真円(たあしんえん)上人(97)が、相次ぐ高齢ドライバーの交通事故に胸を痛め、藤沢署に運転免許証を自主返納したことが話題になった。

他阿上人は1919(大正8)年生まれで、時宗の開祖・一遍上人から数えて74代目の法主(ほっす)。90歳を超えてからは運転をやめたが、「100歳までは免許を持っていたい」と思っていた。だが、10月に横浜市内で80代が運転するトラックが児童の列に突っ込み、1人が亡くなる事故が起き、返納を決めたという。
100歳まで免許持ちたかった… 97歳上人、返納決断-朝日新聞DIGITAL

これを受け、「著名な人がこうした行動を起こすと、一般の意識も変化するのでは」と賞賛の声が聞こえてくる。一方で、「90歳を過ぎても免許を持っていることに驚き」という意見もあるが、何かきっかけがなければ、運転の恐ろしさに気づくのはなかなか難しいことだ。

他阿上人の今回の行動が、高齢者ドライバーが自身の運転について考えを巡らす新たなきっかけとなり、事故防止に繋がると良いのではないだろうか。





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