「カプセルホテル」が誕生したのは今から25年前。1979年2月1日、第一号として大阪・梅田に「カプセルイン大阪」がオープンした。
驚くなかれ、このカプセルホテルの設計をしたのは日本が世界に誇る建築家・黒川紀章である。

今では誰でも知っているカプセルホテルだが、当時はそんな言葉もなく、小さなカプセル型の個室の空間に冷暖房はもちろんのこと、テレビ、ラジオを完備した新しい概念のホテルに世間はびっくり。テレビ、ラジオ各局が取材に訪れ「カプセルホテル」オープンのニュースはあっという間に日本中に広まったという。

このカプセルホテルを考案したのはサウナや飲食店を経営するニュージャパン観光株式会社。当時の開発スタッフの一人、加納礼二さんは「カプセルホテルはサウナと同じ低価格の料金でホテル並のサービスを目差した結果生まれたものだった」と言う。
経済成長の時代にあった70年代後半、サウナは連日仕事帰りのサラリーマンたちで満杯。
ロビーや階段で一夜を過ごし会社に行く、という人が多くそんなお客さんたちを何とかゆっくり休んでもらえる方法はないか……。そんな時スタッフの脳裏に黒川紀章の名前が浮かんだ。彼は1970年の大阪万博で近未来住宅の可能性としてカプセル住宅を提唱。1972年には東京・銀座に「中銀カプセルタワービル」でその実用化を果たしていた。加納さんたちの依頼に黒川氏は快諾。そして日本にカプセルホテルという新しい文化が誕生したのだった。


このカプセルホテル、ドイツやアメリカからの視察もあったそうだが、やってきたのは軍関係や船舶関係の人々だったとか。それだけカプセルホテルは画期的なものだったのだ。そして、現在。カプセルホテルは日本全国に広まり、女性専用フロアーができたり、エステ、マッサージ、レストランなどの他、大浴場やプール、サウナ、などの施設が利用できたりと新しいくつろぎの場所として様々に進化し続けている。(こや)