
これは加子母村小郷の加子母大杉地蔵尊で、文覚(もんがく)上人の墓碑にはい上がるナメクジを参拝するという奇祭。サンゴの産卵と同じように、ナメクジはこの旧暦の7月9日、一年に一度この日にしか姿をあらわず、夜明けとともに姿を消すというのだ。
昨年は激しい夕立のせいか現れたなめくじは9匹。その前年は38匹、2000年は112匹。そう、この祭りでは毎年大杉地蔵尊の世話人会の方々がちゃんとなめくじをカウントしているのである。
世話人会の代表、中島重光さんに話を聞いたところ、「でたそー」という参拝客の声を合図に夜7時頃から夜中の2時頃まで何度かナメクジの数を数え、最終的に多い数をその年のナメクジの出現数にしているとのこと。
そもそも、文覚上人はどんな人かというと、平安から鎌倉初期の僧でもともとは武士。18歳の時、友人の妻・袈裟(けさ)御前に横恋慕し、恋に狂い友人を殺そうとするが、誤って御前を殺してしまった。上人は罪を償うため出家し、苦行を重ねて高僧になり死後は小郷に埋葬されたとされる。
この文覚上人が御前を殺してしまったというところもポイント。なんと這い上がってくるなめくじには背に刀傷模様があり、文覚上人の罪を許した袈裟御前が姿を変えたものと言い伝えられている。
このナメクジは畑等にいる茶色いナメクジとは明らかに別種の「ナミナメクジ」という種類。