
ふと目が覚めると、東京は銀世界の朝だった。
東京大手町で19cm、近郊では30cmにも達する積雪となり、都電(当時は路面電車がたくさん都内を走り廻っていた)には何とラッセル車が出動して、1時間に1本、通勤帰りの足を確保したという。
その8日後……。11日朝に台湾付近に低気圧が発生したのを受けて、気象庁は「明日は関東地方は大雪」と強気の予想を発表した。「雪で都内の積雪は10〜15cmになるでしょう。」その予報はみごと的中した。
東京大手町では30cm、近郊では40cm以上の積雪となった。都内の電車はついに全部ストップし、都心のサラリーマンは何と線路の上を歩いて家路へと向かったのだ。私は当時小学生だったが、西武新宿線の線路の上(40cmぐらいの積雪で線路は見えなかった)を歩く人々に混じって、少し歩いてみた。長靴に雪が入り込んでとても冷たかった。ある人は銀座から中野まで3時間かけて歩いたという。地下鉄は人がごったがえし、ガラスが割れたりしたようだ。屋根の雪下ろしでケガ人が出たが、最近のように、道路歩行中すべって転んで救急車で運ばれたという人は当時は殆どいなかったと思う。
1986年3月23日、首都圏は暴風雪となった。大雪でブレーキが利かず、電車同士が衝突した事故もあった。
歴史の上でも3月の大雪は存在する。桜田門外の変(1860)では、大雪の中、江戸城の桜田門の外で井伊大老が暗殺されたが、新暦では3月24日である。3月は意外な大雪に見舞われることは少なくない。東シナ海に低気圧が現れたとき、注意が必要だ。(真夜中の予報士)