「かゆいところありませんか?」に迫る
場合によっては足や背中を掻いてくれる美容師さんもいるようです(ただし、店や人によります)。
美容室に行くたび、必ず聞かれる「おかゆいところはございませんか」のフレーズ。
毎度思うのだが、そんなにみんな、何かしらかゆいのか。
仮にかゆくとも、「かゆい」って、なんとなく言いにくいし。実際に、聞くことに何か意味はあるのか。

そんな疑問を美容師さんにぶつけると、
「若い人はほとんど言いませんけど、50代以上の女の人はかなりの割合で『かゆい』って言いますよ」
と意外な答えが返ってきた。かゆい場所は、
「たいてい頭のセンター(中心線=クラウン)か、襟足ですね。センターはいちばん鈍いところだから、頭皮のマッサージが物足りなく感じるから」と言う。実は、「かゆい=物足りない」で、
「本来は『物足りないところはございませんか』という意味で聞くんですが、『物足りない』という言葉は接客業ではマイナスなので、あまり使わないんです」。

頭を洗うことで、血行がよくなり、刺激されてかゆくなるということもあるが、それよりも「隅々まで配慮している」というアピールもあるそうだ。

ところで、「かゆい」と言ったら、どこまで何をしてくれるのかと聞くと
「当然、かゆい部分を洗い直します。頭以外? ふざけて『背中』とか言う女の子もたま〜にいますけど、『頭』について聞いてるのが大前提ですよ!」

この「かゆいところ」のセリフは、美容師さんの組合や協会、美容師学校などで定められているのだろうか。
日本美容師専門学校に聞いてみると、「特にシステムということではありませんが、お客様に聞くように、授業の中で指導はしています。人によって感覚は異なりますので、お湯の温度が熱くないか、クロスがきつくないかを聞くのと同様に、かゆいところも聞くんです」と広報担当者の女性が説明してくれた。
ただし、このセリフはずいぶん昔からあるようで、「今の人はマメに髪を洗いますけど、昔は一週間に一回ぐらいだったようです。
だから、髪を洗っているうちに、刺激されて、自然にかゆくなる人が多かったようですよ」
時代とともに、セリフのニュアンス自体変わってきているのかもしれない。

ここでも、「かゆい」ところが頭以外、たとえば足などの場合は、どうするのか聞いてみると、
「そうですねぇ……(笑)。手に泡がついていますので『少々お待ちください』と言って、掻いてさしあげることになるかと思います」とのこと。
特に規則もないので、店や美容師さんによって対応は異なるわけですが、だからといってセクハラまがいに、みだりに「かゆい」と言うのは厳禁です!
(田幸和歌子)