除夜の鐘の108回の数え方
ゴーン、ゴーン。やはりこの音を聞くと、新年を迎える気分、一気に盛り上がってきます。ハッピーニューイヤー。
大晦日。夜も更け、いよいよ新年が近づいてくる時間。
どこかから聞こえてくるゴーン、ゴーンという除夜の鐘の音。
静かな夜に響くこの音が聞こえてくると、やっぱり去り行く年を振り返って、しみじみしたりもするわけで。

この除夜の鐘、つくことでゆく年の煩悩をはらい、来る年が幸福であることを願うためにつくもの。そして、煩悩の数といわれる108回つくということは、ご存知だとは思う。
それにしても、お寺では108回、どうやって数を管理しているのだろう。
せっかく数えていたのに、「ゴーン……シーン……あれっ、104つで終わり?」「ゴーン、111回。
ゴーン112回……いつまでついとんじゃ!」みたいなこと、ないのだろうか。律儀に僧侶が指折ったり、正の字書いたりしてるのだろうか。

高校時代の同級生の実家がお寺で、大晦日にそこで鐘をつかせてもらったことが何度かあった。たしかそいつの寺では、鐘つき堂の脇に箱に入った飴やチョコなどのお菓子が、がさっと入れてあり、ついたらひとつそれを持っていく、というシステムを採用していた。
お菓子の数は108個。これが空っぽになったら終了、分かりやすい。


他のお寺ではどうなのか。たずねてみた。
「うちでは整理券を配るんですが、あとはあの、カチカチってするカウンター(交通量調査などで使う、金属製のアレ)で数えてますね」(京都・天龍寺)
「ひもに通した、番号の入った108枚の札がありまして、それを一枚ずつめくっていくんです」(京都・壬生寺)
煩悩の数ぶん、数え間違いのないよう、お寺ごとにいろんな数え方があるよう。

2年参りの参拝客でごったがえすお寺も多いだろう、京都では他に誓願寺、建立寺、南禅寺など、混乱なきよう整理券を配布するお寺が多い。
なかには厄払い札授与(京都・本満寺)や、住職手書きの干支の色紙を授与(京都・浄蓮華院)と、何かを人数ぶん配布するというお寺もある。

とはいえ、108回にこだわらないお寺も中にはある。

「お参りに来ていただいた方のぶん、何回でもついていただけます」(東京・天龍寺)
回数にこだわらず、参拝する気持ち優先ということだ。調べてみたところ、他にも正受院(東京)、大覚寺、相国寺、(いずれも京都)なども、特に回数を制限していないお寺はいくつもあるようだ。なので、キッチリ108回じゃなかったからと、野暮なツッコミは入れないよう。

とりあえず、05年も煩悩にまみれて暮れていきました。きれいな気持ちになって新年を迎えようと、先の同級生に久しぶりに連絡してみた。
「ところであのお菓子って、今でも置いてる?」
「おう、置いてるよ。
1回にひとつだけな」
月日が流れても、おそらく何も変わってなさそうで、ちょっと嬉しい。真冬のはりつめた寒い空気の中、鐘をついてからなめた飴の甘さまで、なんとなく思いだしてきた。

久しぶりに、つきに行く約束。
みなさま、よき新年を迎えられますよう。
(太田サトル)