その名は「Himagine(ヒマジン)」。
現役テレビAD、学校職員などさまざまな仕事ではたらく20代後半のメンバーたちが「職場バレを恐れながらこっそり発行している」という、その話を聞くだけでもムクムクと感じるものがあるフリーペーパーです。
「わら半紙」に印刷して発行
こちらがその最新号。使っている紙が…… わ、わら半紙!!
わら半紙といえば、小学校時代のときに先生が職員室で刷ってたお手製の学級通信とかに使っていた、めちゃめちゃやぶれやすい粗末、もとい独特な質感の、あの紙。
まさか21世紀も20年近く経とうとしているいまになって、現物のわら半紙を見るとは。
なんでまたわら半紙なんですか。いまやそこそこの紙でも安く作れるんじゃ……
「お金がないので公民館の印刷コーナーを使って刷ってるんです。印刷代が安上がりなので……。といっても部数が多いので、ちょっといい焼き肉1回分くらいのお金は使うんですけどね(笑)」(編集長・マツさん)
学校の職員室で見たことあるぞ……この機械。まだ現役だったんだ。むしろよく見つけましたね。
「とにかく読めればいいや!と思って。編集に夢中になりすぎちゃって、なかなか紙質とかまで気が回らなくて。
そうマツさんに促されて中身を開いてみると……
現役テレビADが選ぶ「“寝心地の良い床”選手権」
いきなり「テレビADが選ぶ」シリーズが続いていますが、これは……
「編集部員のなかに、某キー局の現場ではたらく現役のテレビADがいるんですよ。世間的なイメージ通り、ADって壮絶な仕事ですからね。徹夜で作業しても、きちんとしたベッドで寝られるような場所もないんです。
でも人って、生きるためには寝ないとダメじゃないですか。怖いディレクターの怒号からも逃れて安息をはかれる場所を探していたら、局の床(ゆか)がすごい良かったらしいんです」(マツさん)
そんな渾身の記事がこちら。「ADが選ぶ、寝心地のいい床選手権」。同じ現場ではたらく同僚たちに向けての配慮なのか、具体的なフロアや場所まで写真つきで掲載されています。
記事ではモザイクかけましたけど、これ見る人が見たらモロ具体的な場所じゃないですか。地名とか、編集室の机の下とか……
「ご配慮ありがとうございます。地獄のなかでも足を伸ばして寝られる場所を見つけられた喜びをみんなに伝えたくて……。ちなみにいちばん良かったのは、鬼ディレクターがいるフロアの脇にある非常階段ですね。近すぎると逆に気づかれにくいみたいです。灯台下暗し、ということわざの意味を社会人になって実感しました」
メイドカフェに行きたいけど行けないので「自作自演」した
さらに強烈だったのが「DIYメイドカフェ」と題された記事。メイドカフェでメイドたちに「おかえりなさいませ!」と迎えてもらいたいけど、秋葉原まで行けないような僻地に住んでいるので自分たちで想像しながら自作自演した模様をつづったドキュメント。
ちょっと何言ってるかわかんない。
「想像力をフル稼働させながら、ドンキで買った衣装を買って『俺らの考える最強のメイドカフェ』をつくったんです。いざ始めると内装やサービスにもこだわりたくなって……。結局、普通に上京してメイドカフェ行ったほうが全然安くつきました」
憎き「ウェイ系」に正面から戦いを挑んでみた、が……
「僕らがわら半紙でフリーペーパー刷ってるのは、ある種ウェイ系の奴らへのカウンター的なところもありますね。最近じゃイケてる大学生たちが学生団体でいい紙使ってキラッキラなフリーペーパー作ってたりするんですよね。俺らはその波には乗らないぞ、と」
そんな並ならぬルサンチマンを抱えたHimagine編集部のみなさん。過去にもいちど、真正面からウェイ系に戦いを挑んだことがあるそうで……
「『居酒屋で、ウェイ系まっただなかの友人を論破する』という企画を立てて実行したことがあったんです。僕らの思い描いていたのは、ウェイ系が『なんだよぉ〜みんな暗ぇよー』とか、『なんで飲まないの?人生損してない?』とかあおってきて、それに僕らが渾身のカウンターを放つという流れだったんですが……。
でも実際に会ってみると、めちゃめちゃ大人なんですよ。このウェイ系の彼が。
『お酒飲むだけが飲み会じゃないからさ。気の合う人がいて、好きな話で盛り上がるのがいちばんだよ』とか、『俺らのノリに無理に合わせることなんてないよ。騒ぐのが苦手な人もいるし、温度の合った人たちで楽しくおしゃべりができればいいよね』とか、あげくの果てには『俺らは、飲むことが会話みたいになっちゃってるからさ……それ以外に方法が思いつかないんだ。
もうウェイ系に謝られちゃったら、こっちも拳のおろしどころがないじゃないですか。懐が小さいのは俺らのほうじゃないか、って……。」
うーーーーんどこまでも下から目線!!!
ウェイ系大学生にチェリー軍団が一矢報いる、みたいなエピソードもあればスッキリするもかもしれませんが、世の中の正解はひとつではないみたいです。
下は下なりにオモシロがある
「でもやっぱり、こんなにうまくいかないことだらけの俺らですけど、日常にはなにかしらオモシロが落ちてたりするんですよ。ウェイ系もチェリーボーイも、やっぱりふとしたところにオモシロがあるんです。それをなにかカタチに残したいなと思って。それが僕らがフリーペーパーを作るいちばんの動機かもしれないですね」(マツさん)
何気ない、と切り捨ててしまうのは簡単かもしれないけれど、日常のなかで立ち止まり、ちょっとしたオモシロを積み重ねていくことで、もっと人生は楽しく輝いていくのかもしれない── Himagine編集部のみなさんからは、大切なことを教わった気がします。
フリーペーパー「Himagine」は、東京・中目黒のフリーペーパー専門店「ONLY FREE PAPER TOKYO」をはじめ、全国数か所でこっそり配布中。気になる方はぜひゲットしてみてください。
ちなみに最新号、イチオシの記事は?
「これです!」
うわーーー どこまでもブレない!
Himagine公式Twitter
(天谷窓大)