鳥取では獅子が舞わずに麒麟が舞う
麒麟獅子の頭を見ると、目をつむっているが、これも特徴のひとつで、「眠り獅子」と呼ばれている。
「麒麟です」。←単に使ってみたかった。

ところで、おめでたい「獅子舞」。ご存知のように、ピーヒャラ、テンツクと舞うのは普通は獅子の頭なのだが、鳥取地方で舞うのは、伝説の動物、「麒麟です」。
舞うのが麒麟だからといって、「麒麟舞」とは呼ばれず、名称は「麒麟獅子舞」。
はたしてどんなものなのか。見せてもらえるというので、鳥取へ。

この麒麟獅子舞、見られるのは鳥取とその周辺などわずかな地域に限られているが、年間54日あるという鳥取でのお祭りでは必ず見られるという。
それなのにあまり知られていない。なぜか。
「地元では珍しくもなんともない、当たり前のものすぎて、他の地方に発信されなかったんです」
麒麟獅子舞を広めようと活動する「キリノロジークラブ」代表の山本雅明さんがいう。山本さんによれば、
「砂丘、二十世紀梨、松葉ガニに続く、『鳥取の顔』にしていこう」
というねらいのもと、日々麒麟獅子の普及につとめているそうだ。

さて具体的にはどんなものなのか。麒麟獅子舞は、頭と後ろの胴体部分で構成されている。
このへんは普通の獅子舞と同じだが、顔が「麒麟」なのである。頭は金色で口は真っ赤、胴体も赤い。頭部に一本の角をもつ一角獣で、この角に「神を宿す」そう。

約140あるという麒麟獅子、ひとつひとつの顔、舞い、お囃子などがそれぞれ全部違うとのこと。今回登場するのは、椎谷神社の麒麟獅子。
「非常にレベルの高いチームでございます。普段は主に、酒ばかり飲んでるんですけどね(笑)」
頭と胴体で2名、さらに、神をおろして獅子を先導する役割をもつ、「猩猩(しょうじょう)」と呼ばれる役が1名。そして、鐘、太鼓、笛の神楽を担当する人物が3名、この6名の構成が基本セットとなる。
もっとも、人数ももっと多いところもあり、十数名で構成される獅子舞もあるとのことだが、その場合は、
「基本的には笛の人数が増えていきます」

実際に舞ってもらった。
舞いの流れは、神がおりてくる→おりた神により、獅子が舞い遊ぶ→神を送るというもの。
神楽囃子にのって、麒麟獅子が華麗に舞う。テンツクテンツクした普通の獅子舞に比べると、プイ〜、ピヨ〜ンといった笛の音にのり、動きも音楽も荘厳なというか、ゆるやかに舞う。


普通の獅子舞と同じように、麒麟獅子舞も、噛んでもらうと、元気で賢い子になれるという。昨年公開の映画『妖怪大戦争』で、神木隆之介くんの頭を噛んでいたのも麒麟獅子だ。
5月には全国の獅子舞が一同に会するイベント、「全国獅子舞フェスティバル」が開催されるのだが、今回の開催地は鳥取。当然、目玉は麒麟獅子舞、一気に全国区だ。

「『鳥取の顔』といえば?」「麒麟(獅子)です」というやりとり、流行るか?
さらには、漫才コンビの麒麟に、親善大使とかやってもらうというセン、どうか。
(太田サトル)
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