「かにぱん」には当時、仲間がいた!
(上)かにぱんとミニかにぱん (下)それぞれで作成した「ざりがに」と「とんぼ」
先日久しぶりに子供の頃に親しんだ「かにぱん」を食べた。なぜか最近年のせいか子供の頃に食べたものが無性に食べたくなるのだ。

「かにぱん」はカニの形をしたパンで、ほのかな甘味と独特の食感が郷愁をそそる。はっきり言って食事としてのパンというよりはお菓子に近い。より正確に言うなら「かにぱん」という種類の食べ物、だろうか。そして何より心をくすぐられるのが本物のカニのようにパーツの手足をバラバラにしながら食べられること。大人になった今でもついつい子供の頃のように割れ目にそってちぎりながら食べてしまう。ほんと、習性とは恐ろしい。


「この素朴な味がたまらん」と思いながら食べていて、ふとパッケージの変化に気がついた。
「かにぱんを遊びながら食べよう!」というキャッチとともに「かにぱん」が色んな形に変化するイラストが書かれているではないか。
製造元の三立製菓(株)のHPを見てみると、「かにぱんを遊びながら食べよう!」というコーナーが! 覗いてみるとパッケージのとはまた違った様々な形が紹介されている。「かにぱん」を検索すると「かにぱん」ファンも多いらしく、ブログなどに「かにぱん」の文字が躍っている。「かにぱん」がこんなことになっているとは知らなかった。

これは話を聞かねばなるまい、と三立製菓の方に問い合わせてみた。

「かにぱんを遊びながら食べようというのは2000年頃に企画課の担当が発案しました。しかし、同時期に地方の番組でもネタとして取り上げられたようです」と企画開発部の藤本さん。
どうやら一人だけのアイデアというよりは同時多発的に「かにぱん」で遊ぶというブームが起きたようである。

「かにぱん」が誕生したのは今から32年前の1974年だが、子供向けのパンがなぜカニの形だったのだろう。この辺りも藤本さんに伺ってみた。
「発売当初はカニだけでなくタコやうさぎ、コアラ、パンダのランラン、SLやボーリングのピンなどいろいろな形のものがありました。
資料が残ってないので正確な年数は言えないのですが、発売後10年くらいは複数の種類を販売していたと聞いています。その中でカニの形が食べやすかったせいか、他の種類に比べて人気があったため、カニの形にしぼって販売するようになったんです」          
「かにぱん」に仲間がいたとは! しかもSLやボーリング、パンダのランランというのが何とも時代を感じさせてくれるではないか。
今となっては確認することはできないけれど、ボーリングのピンの割れ目はどんな風だったかちょっと気になるところではある。

ちなみに「かにぱん」はカットパンという名称で初めからちぎりながら食べることを想定していた商品らしい。
けれども、割れ目を入れるというカットパンは特に子供向けの遊びを意識したということで生まれたのではなく、元々あったビスケット、クッキーの製造ラインで始めたので結果的にそうなった、というのが真相のようだ。

三立製菓の創業は大正10年。
数十年に渡ってビスケット、乾パンを作り続けてきたという老舗。昭和38年には日本で初めてパイの量産化に成功したという会社で、あのロングセラー菓子「源氏パイ」のメーカーでもある。

最後になぜ「かにぱん」は賞味期限が長いのかも聞いてみた。
「衛生的に管理されたクリーンルームにて包装しているということと、水分が普通のパンよりも低いので菌の増殖を抑えられるんです。また、一般的な雑菌の生育因子である酸素を減らす工夫もしています。炭酸ガス(コーラなどと同じく食用のガス)を袋に充填し、酸素が10%以下となるようにしているため、静菌作用が発揮されて賞味期限を長くすることが可能なんです」
現在、「かにぱん」は定番商品の他にも2004年には大きさが約3分の1の「ミニかにぱん」が登場。
チョコレートコーディングされた「チョコかにぱん」、ファミリーマートのオリジナル菓子「ボクのおやつ」シリーズにもなっている。ちぎって遊びながら食べられる「かにぱん」に子供が惹かれるのは今も昔も変わらないようです。
(こや)