ズワイガニの「ズワイ」って何だ
こちらは「タラバガニ」。タラのいる場所にいるのです。
カニ、うまいよなあ。
この冬にも食べた方、きっと多いことでしょう。


高級ガニの代表といえば、ズワイガニとタラバガニ。何気なく、うまいうまいと食べてはいるが、はたと思う。
“毛ガニ”は分かる。見たまんまだ。“花咲ガニ”もだいたい見た目だろうし、水族館でよく見る“タカアシガニ”や、“モクズガニ”もそうだろう。
そうなると、一層この2つのカニの名前の謎が、深まってくる。

なんだ、“ズワイ”って? たとえば、「ズワイガニ」→「ツワイガニ」→「ツヴァイガニ」。ドイツかよ。
じゃあタラバは? 「タラバ!」→「たわば!」……北斗神拳でやられた人になっちゃった。

気になり始めると、せっかくのカニ料理もじゅうぶん堪能できないような気もしてくる。教えてもらうことにした。

葛西臨海水族園にたずねてみると、
「タラバガニの“タラバ”は、魚のタラ(鱈)がとれる場所、『鱈場』からきているみたいです。
鱈場でよくとれるカニ、ということですね。ズワイガニについては、分からないですね」

「ズワイ」の謎だけ残ってしまった。
ズワイガニを「松葉ガニ」の名称で呼んで親しんでいる鳥取で聞いてみた。鳥取市内にある、カニを中心に展示する水族館「鳥取県立とっとり賀露かにっこ館」に聞いてみた。すると、
「“楚”という感じがあるのですが、これを“スワエ”と読むんです。細く伸びた小枝を意味する言葉で、つまり、このカニの長い足が、枝のようなイメージだというところから“スワエガニ”、すなわち“ズワイガニ”になったとされています」
木の枝のような足のカニ、ということだったんだ。

そう言われて辞書で確認してみると、たしかに、
<ずわい スワエの訛>
<すわえ 木の枝や幹から細く長くのびた若い小枝>(『広辞苑 第四版』)
と書いてあった。

いっぽうで、別のこんな説もあるらしい。
「“ズワイ”の“ズ”が“頭”の『ズ』、つまり、カニの王様という意味からきているという説もあります」(かにっこ館)

越前ガニ、松葉ガニの名称もあるズワイガニだが、この「松葉」についても、諸説あるようで、ズワイのように細く長い足が松の葉みたいだからかと思いきや、
「殻をはいで、冷たい水にさらしたときに肉が開く様子が松の葉のようだからという説と、穫ってから、漁師さんたちが、松葉を材料にして焼いて食べたからという説もありますね」
とのこと。

謎が解けたら、ますますカニ喰いたくなりました。
(太田サトル)