なぜだか不思議なのだが、職場で作業中に咳き込むことが多い。ダストが舞っているのか、変な菌でもあるのか。

その対策として、空気清浄機を自分のデスクに置きながら仕事する同僚も。しかも「これ、イオンのやつだから!」と得意満面なのだ。そして、その空気清浄機の恩恵にあずかる私たち。

……と安心していたのも束の間、少し気になるテーマの記者発表会が開催された。10月18日、都内某所で行われたのは「今の空気清浄機は、本当に空気を清浄にしているか?」と題されたメディアセミナー。
何という、グッドタイミングか。今、最も気になるテーマの一つじゃないですか! というわけで、ここに行って専門家の話を聞いてきました。

実はこのセミナーは、有識者の協力によって8月に設立された「室内空気向上委員会」の主催によるもの。当日は、同団体による空気清浄機への見解が発表されている。
その中でも興味深かったのは、日本大学理工学部建築学科教授である池田耕一工学博士の講演であった。

まず、前提として「換気は室内環境維持の万能薬」ということは踏まえていただきたい。しかし、換気にも弱点があるのだ。
例えば、屋外の空気が汚れている場合。もしくは、屋外が暑かったり寒かったりする場合(冷暖房によるエネルギー消費が大きくなってしまう)。そんな時に活躍するのが、我らが空気清浄機。
しかし、空気清浄機も多種多様。一般的に考えられるのは、ファンでフィルターに空気を導いてろ過し、空気中に浮く粉塵を除去するタイプであろう。この清浄機に効果があるのは、明らかだ。

問題は、フィルタータイプ以外の空気清浄機。「活性炭を通すと、空気の化学物質が取れる」、「イオンやオゾンを飛ばして、空気中に浮いている微生物を殺す」と謳う空気清浄機について、池田博士は疑問を呈している。
「高濃度のイオンを飛ばして、目的とするものにうまく当たれば死ぬかもしれないです。だけど、部屋の中にたくさんいる微生物に全部当てるほど多くのイオンやオゾンを出した場合、人間も死んでしまうのではないか。『人間が死なない程度にしか出さないのであれば、効果は無いんじゃないか』と考えられます」(池田博士)

続いて、粉塵の大きさについて。
「大きな粒子の方が空気を汚して気持ち悪い気がするんですが、そういうのはあっという間に落ちていくんですね。
ところが、小さいものは空気と同じように挙動します。これらを吸い込んで肺の中に取り入れるから、具合が悪くなるわけです。細かい粒子こそ、空気清浄機で取る必要があります」(池田博士)
そしてフィルタータイプの空気清浄機ならば、粒子の大小問わずに空気をキレイにする効果はあり、それらはデータで示されているという。

そして、一人暮らしの男性にとっては気になる“ダニ”について。ダニには、刺すタイプの「ツメダニ」と、塵になる「チリダニ」があるのだが、ツメダニの方はアレルギーとはあまり関係がないという。厄介なのはチリダニの方。このダニが出す糞や死体が舞い散り、それをアレルギー患者が吸い取ると問題になるのだ。
ただ、これらもフィルターの付いた空気清浄機で簡単に除去できる。反面、こういった粉塵にイオンやオゾンをぶつけても消えるわけではないそうだ。「効果がある」と謳っている物もあるが、そのようなデータは出ていない。

そして、池田博士は「空気清浄機」という呼び名に対しても苦言を呈している。
「この呼び名だと、いかにも空気がきれいになる気がしますけど、本当は『粉塵ろ過機』と言った方がいいと思います。
その位の方が、正しい理解をしていただけるはずです」
そういう意味で言うと、抗菌剤やオゾン、イオン、光触媒を使ったものは“ろ過機”ではないだろう。そして、それらのタイプの効果を示すデータはほとんど出ていないそうだ。

まず、「マイナス空気イオン」や「空気中へのビタミンC付加」と謳う空気清浄機の効果について、池田博士はバッサリだった。
「ラドンやオゾンを、昔から日本人はありがたがっておりました。しかし、これらに効果があるというデータは、今までほとんど発表されておりません」(池田博士)

そして、「空気中への酸素付加」について。
「これは、高地トレーニングと逆のことをしているわけです。酸素濃度を高くすれば、確かに気持ち良くて元気になった気がしますが、普通の環境に来ると息切れすることになります。」(池田博士)
酸素カプセルについては、「どうしても疲労を早く回復しなければいけない」という人(アスリートなど)が、医者の監督の元に使うのなら意味があるという。“癒し系”という軽い気持ちで、エステ感覚で使うべきものではない、とのこと。

かなり、考え方を改めさせられた一日であった。一つの参考にしていただきたい。
(寺西ジャジューカ)
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