関西で、お笑いは大阪、日本の歴史は京都。そして日本のジャズの発祥地は、港町神戸だと筆者は信じている。


洋館、インドレストランなどが立ち並ぶ、独特な雰囲気の神戸市中央区北野町異人館エリア。そこで今年は10月6、7日に、第31回神戸ジャズストリートが開催された。

11時から阪急電車三宮駅北側よりパレードがスタート。先頭を歩くのは、神戸市立博物館で来年の1月6日まで展示されている、フェルメールの作品から飛び出した「青いターバンの少女」! いえいえ、ヴォーカリストの辛島すみ子氏。ジャズファンのおじさま方を、ジャズの合間に軽快なトークで楽しませてくれる人でもある。

12時から17時まで、8つの会場でジャズを聴く。
一日チケットを首からぶら下げて、手にしたプログラムに精通する。お目当てのミュージシャンを見つけて、どうやって会場をはしごするか、計画を練るといいだろう。

筆者は、憧れのジャズライブハウス、「ソネ」で一日過ごすことを決めていた。神戸市中央区北野町異人館通位置する「ソネ」は、300人はゆうに入りそうなのに満員。濃厚な空気が漂う、ジャズにはもってこいの空間となっていた。

「ソネ」の名物と言えるカレーライスを食べながら、もちろんアルコールを飲みながら、楽器とボーカルセッションを聴ける。
筆者にとって、こんなにぜいたくな時間はない。

高岡正人トリオの高岡氏のピアノは、始りにふさわしく心地よいものだった。辛島すみ子氏の歌と、神戸ジャズストリート初回から出場し続けているキャッスル・ジャズ・バンドとのコラボレーションが続く。ディズニーの夢の世界へ運んでくれるようなサウンドだ。次にほれぼれしたのは青木研氏のバンジョー演奏。筆者の緊張をほぐしてくれる作用のあるバンジョーが、素晴らしいテクニックが伴って、まるで体のあちこちのコリをほぐしてくれるサウンドとなっていた。


最後は、筆者が楽しみにしていたピアニスト、パオロ・アルデリッギ氏の演奏。鈴木直樹氏とロバート・ビーン氏の管楽器と、水田欽博氏のベースのプロの音を満喫していたら、遅れて登場したのがパオロ。それまでの演奏を支えていた、何と若くてかわいらしいピアニスト、スティファニー・トリック氏と、1台のピアノで連弾を始めたのだ。面白いやら、楽しいやら、素晴らしいやら、遊び心あふれるものだった。

じつは神戸ジャズストリートに長年貢献してこられた末廣光夫氏が、直前にお亡くなりになったという不幸があった。しかし今年も神戸ジャズストリートでジャズが変わらずに奏でられた。


「悲しいですね」と筆者がいうと、末廣氏と同様、スタッフとして長年神戸ジャズストリートを支えてこられているスタッフの方が「楽しいこともあるよ」と言われた。ハッとさせられた。そうだ、熟達したミュージシャンの音がある。しかし若いミュージシャンが演奏する場所を提供し、成長してゆく姿を見、聴く証人になれるのは喜び。同様に、神戸ジャズストリートを盛り上げていくお客様の中に、若い人たちがどんどんと加わってゆくといいな、新たな神戸のジャズが生まれるだろうなと、希望する筆者である。
(W.Season/ studio woofoo)