小学生の時、修学旅行で初めて京都を訪れた。そこでバスガイドさんが、「京都のマクドナルドは赤と黄ではなく、街並に合うように落ち着いた色になっているんですよ」と教えてくれた。
それ以来、京都へ行ってマクドナルドを見ると、その時の思い出がよみがえる。

世界中に店舗展開しているマクドナルドは、各国に合わせた特徴を持っていることで有名だ。例えばフランスのように、ハンバーガーのバンズにフランスパン(バゲット)を使うといったようなメニューの違いであったり、タイで見られる合掌しているドナルドだったりする。

その中でもシンガポールにあるマクドナルドは、とにかくエコロジカルだ。これは記者の先入観だが、ファーストフードとエコという2つの言葉は、あまり馴染みがなさそうに思える。しかし西部、広さ80ヘクタールのジュロン・セントラルパークに建つマクドナルドは、とってもエコだ。何がエコなのか。それはこのマクドナルドの外観に注目してほしい。

まずは写真をどうぞ。同店舗は店全体が緑に包まれまくっている。なぜこのような形のマクドナルドになったのか。同店をデザインしたシンガポールの設計会社ONG&ONGに聞いてみたところ、公園内の環境と調和させるため、レストランを青々と茂った草木にくるむデザインにしたそうだ。
特筆すべきはキノコ型の屋根で、緑の屋根は屋上表面を保護するだけでなく、乾期には植物の生育に必要な雨水と栄養素を蓄えるという。

同デザインは公園内の景観への配慮だけではない。緑が植えられることにより、建物周辺の温度は下がり、強烈な太陽にさらされても屋内は涼しく保たれる。シンガポールはとにかく暑い国のためエアコンは必須だ。建物全体の緑化により、室内のエアコン消費量を下げ、ヒートアイランド現象も和らげる。このユニークなデザインと環境への親和性により、同店舗はシンガポール建築建設局(BCA)からグリーンマーク・プラチナ賞を贈られた。

同店に限らずシンガポール政府は、国全体の緑化政策を押し進めてきた。今では「ガーデンシティ」と呼ばれるほど、街中の緑はシンガポールのイメージとなり、同国に人々を引きつける魅力になった。今回のマクドナルド以外にも、壁面を立体緑化させるデザインの建築物は世界的に増えている。シンガポールは都市のあり方に、1つの提案を常に先進的に投げかけてくれる国だ。

しかし、こんなことを小難しく考えなくても、まずは身体で体感してみよう。やはり緑の中で食べるご飯は、いつもよりおいしい! 緑に囲まれるって本当に素敵なことなのだ。

(加藤亨延)
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