高くて複雑な日本の携帯料金プラン イタリアならこんなに安い

NTTドコモは2018年10月31日の記者会見で「携帯電話の通信料金を2019年4月〜6月に2~4割引き下げる」と発表した。吉沢和弘社長はこの値下げの理由を「新規参入で市場環境が変化する。
先んじて競争力を強化する」と説明しており、2019年秋に参入する楽天の競争力を意識したものとしている。

もともと、このNTTドコモの発表は菅義偉官房長官が2018年8月に発言した「わが国の携帯電話料金は、今より4割程度下げる余地がある」という言葉に端を発している。この発言、当初は「現実的に可能なのか」と賛否を巻き起こしたので記憶に残っている人も多いだろう。
しかし、同9月に総務省が「電気通信サービスに係る内外価格差調査」という報告書を発表し、日本の携帯電話料金は世界中の他の主要国に比べて割高であることが知られるようになった。吉沢和弘社長は言葉にこそ出さなかったが、今回のNTTドコモの値下げ発表は携帯電話料金が高額であることへの批判を受けたものであることは想像に難くない。

イタリアの携帯料金は月7〜10ユーロ


ところで日本の携帯電話料金って、具体的にどのくらい高いのだろうか。総務省が発表した「電気通信サービスに係る内外価格差調査」ではニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ソウルが比較対象になっていたが、ここでは筆者が住むイタリアの例を取り上げてみたい。


高くて複雑な日本の携帯料金プラン イタリアならこんなに安い


上記はイタリアの代表的な4つのキャリアとその料金プランを表にしたもの。各社の最も安いプランを選んでみたが、通話時間やインターネットのギガ数(パケット)を見る限り、通常の使い方なら不満は出ないように感じる。
日本のように通話とインターネットを別々に選択することはできず、「使った分だけ」従量課金されるプランもない。そのため、少し柔軟性に欠ける点は否定できない。ただ、そのぶんシンプルでわかりやすいとも言える。

なにより特筆するべきはその料金だ。
例えば表の一番上にあるティム(TIM)はイタリア最大手のキャリアで、日本で言うところのNTTドコモに相当する。田舎でもカバーしているエリアが広く、料金は他の会社と比較すると少し割高な傾向にある。それでも月々10ユーロ(1300円)。国による物価の差はあれど、それでも相当安いと言っていいのではないだろうか。

ちなみにここで紹介した料金プランは他社からの乗り換え(MNP)もしくは新規契約者のみ契約できるものもあるため、そのぶん優遇されているケースもある。
ただ、イタリアでは日本のような2年縛りもなく、「・・・@docomo.ne.jp」といったキャリアメールもない。
そのため乗り換えに対するハードルは低く、料金プランを変更するくらいの感覚でキャリアを変えられる。こういった選択の自由さも魅力のひとつと言えるだろう。

日本の携帯料金が高い理由は?


そもそも日本の携帯料金は、なぜ高いのだろか?

よく言われるのは、他国とはそもそも収益構造が違うという点だ。日本はもともと、携帯端末を安く利用者に提供して利用料金でペイするやり方が一般的だった。ただこの場合、端末代金はキャリアが負担することになるため、そのぶん通信料金が割高になってしまう。
これに対して、海外では通信料金と端末代金ははっきりと分かれていることが多い。
利用者は電気店などで携帯端末を購入しないといけないが、そのぶん月々の通信量は安く使える。

もう一つ、携帯電話の利用料金は値下げしにくいことも理由としてあげられる。携帯電話はすでに浸透しきっており、今後大きく利用者が増えることは考えにくい。しかし、スマートフォンの普及や技術の進歩によりデータの通信量は増加し、多くの設備投資が必要になってくる。マーケットは大きくならないのに設備投資は増えることを考えると、各社とも値下げに踏み切るのは難しいという事情もある。

携帯料金の高さに悩まされてきた人にとって、今回のNTTドコモの発表はひとまず朗報と言えるだろう。
auやソフトバンクは今回のNTTドコモの値下げに追従しない方針を打ち出しているが、将来的に料金の見直しを行う可能性は十分にあるだろう。高くて分かりにくいと言われてきた日本の携帯料金プランの転換期となるだろうか、今後も注目が集まる。

(鈴木圭)