温泉に行くと、「せっかくだから」とつい欲張って何度も入浴。そして帰る頃には体調が優れずにグッタリ……なんて経験はありませんか? そんなときには「湯あたり」という言葉が思い浮かびがちですが、そもそも温泉に来て「湯にあたる」ってどうゆうこと!? そんな疑問を解決するため、温泉療法医・医学博士の植田理彦先生に取材しました。


すると第一声に「現代の人がいう湯あたりは『湯疲れ』のことだよ」と、なんとも意外な返答。では「湯あたり」と「湯疲れ」はどう違うの? と思いますよね。

そこで、さらに疑問をぶつけてみると
「『湯あたり』とは温泉の成分にあたり、中毒をおこす浴用反応のことをいい、湯治の習慣があったころによく見られました。一般的には食欲不振、下痢、発熱、嘔吐、湿疹などが主な症状です。ときには、完治したはずの古傷が疼くなんてこともあるんですよ」

そんなことを聞いてしまったら、なんだか温泉に入るのが恐ろしくなってしまいますが、そこはご安心を。なぜならこれは、1カ月間の湯治で毎日3回以上の入浴を続けた湯治客に現れた症状だから。
つまり、私たちの1泊や2泊の温泉旅行とはレベルが違うんです。

そんな「湯あたり」はいったいどうして起こるのか。一説には酸性泉、硫黄泉、放射能泉などの刺激が強い泉質で起こりやすいことから、温泉水が刺激となり自律神経系、ホルモン分泌系、免疫系が防衛反応を起こすためと考えられていますが、真実はいまだ解明はされていないんだそう。

では、もしも実際に「湯あたり」の症状が現れたらどうすればよいのでしょう?
「そんなときには入浴を休むか、回数を減らせば、2、3日で嘘のようによくなりますよ」という先生のお言葉に安堵。せっかくの温泉で、体調不良が長引くなんて最悪だものー!

さてさてここで、気になる「湯疲れ」の症状についても伺うと
「湯疲れは42℃以上の湯に長時間、もしくは何回も浸かれば、誰でもすぐになります」
どうやら「湯疲れ」は単純に湯に浸かり過ぎて疲れること。つまり温泉ではなく、家庭のお風呂でも十分に起こりうる症状だったのです。


植田先生によれば、湯治の習慣がない人が「湯あたり」になるのはめずらしいことで、温泉地で見かけるグッタリしている人は「湯あたり」より「湯疲れ」であることのほうが多いとか。どうやら、私が認識していた「湯あたり」の症状は「湯疲れ」だったようです……。とほほ。

とにもかくにも、せっかくきた温泉で「湯あたり」や「湯疲れ」になるのはもったいないこと。そこで植田先生に上手な入浴法を教えてもらいました!

その1
入浴は1日3回まで。65歳以上は2回まで。


その2
1回の入浴は、汗ばむ程度に湯に浸かる→湯から上がって体を冷ます。
この“出たり入ったり”を3回繰り返す。

以上の入浴法であれば、その温泉の効能が十分に生かされ、気分もリフレッシュ! 日頃の疲れやストレスからも開放されること間違いなしです。
でも、温泉好きの私にとって、1日3回は少ない気がしてしまうのがちょっぴり心残りかも!?
(勝浦阿津希/プロップ・アイ)