インターネットやフリーペーパーの台頭により、「紙の未来は厳しい」などと言われて久しい昨今。
雑誌が売れない状況で、休刊・廃刊になる雑誌も多く、かかわる人間にとっても、ギャラが下がるなど、厳しい状況が続いている。


だが、その一方で、創刊される雑誌も多いことに、驚かされることしばしば。
続々と廃刊・休刊していくのに、それでもどんどん創刊される理由って、どんなことだろう?

出版科学研究所によると、今年の1月から5月末までに廃刊・休刊された雑誌は、75誌。一方、創刊された雑誌は79誌という。
「雑誌の創刊数は、2007年が182点、2005年が201点と、常に増減しています。そのなかでも、近年の傾向としては、女性誌の創刊が多いこと、コミックやアダルト大衆誌が多いことが挙げられますね」
と担当者。

特に近年、創刊雑誌が増えているというわけではないようだが、次々に創刊される理由は……。

「やはり出版社が経営していくうえで、売上を伸ばすためには、新しいモノを出さないと難しいことがあります」
と、予想通りのご回答。

では、廃刊・休刊になることで、雑誌を管理する識別コード「雑誌コード」が空いてしまい、それを埋めるためなんて事情もあったりする?
「それもありますね。雑誌コードは、一度『廃刊』になってしまうと、10年ぐらい間を置いて使うことになるため、とりあえず『休刊』とし、復刊の際に同じコードを引き続き使う場合が多いです」
そもそも、「雑誌コード」をとるのが難しいからとよく聞くけど、なぜそんなにも難しいんでしょう?
「取次会社などで、雑誌の将来性、部数の目処など、様々な条件をクリアしなければならず、雑誌に新規参入の場合は、かなり実績を積まないと難しいということがありますね」
そのため、近年、多いのは、「独立創刊」というパターンだとか。
「ムックなどを出している会社で、定期刊行物の雑誌が1冊しかない場合、それが廃刊となると、新たに雑誌コードをとるのが難しくなります。そこで、ムックの別冊、増刊などから、『独立創刊』というかたちで定期化するケースが多いんですよ」

さらに、ある編集者はこんな説明をしてくれた。
「ファッション誌などが次々に創刊されるのは、売れなくても広告収入があれば成立するから。
むしろ広告だけもらって、1冊も刷らないほうが利益率は高いという雑誌もあるくらいです」

また、休刊しても雑誌を出し続ける理由は、
「コードの関係もあるだろうけど、やっぱりみんな一発逆転の夢を見ちゃうんだろうな、と思いますよ。かつての雑誌の部数を知っている人ほどそうなのでは?」
とのこと。

なかなか売れない厳しい状況でも、やっぱり新たに出さないことには何も始まらない。雑誌も書籍も、その他の多くの商品と同様に、赤字覚悟で一発逆転を目指しているのかも。
(田幸和歌子)