「サメ=人を襲うもの」というイメージが強いが、実はそうでもないらしい。
「そうでもない」というのは、あくまで数字上の話ではあるのだけど。


国際サンシャインシティ水族館のコミュニケーション部によると、
「サメのなかで実際に人を襲うのは、細かい種類の数は断定できませんが、全体のなかではホホジロザメやイタチザメ、オオメジロザメなど、ほんの一部だけ」
とのこと。

なぜサメが人を襲うイメージがあるのかについては、
「サメの種類としては、襲われる確率は少ないとはいえ、現実として襲われたことがあるということ、それが漁師さんなどによる口伝えで広まったのではないかというのが一つにあります。また、やはり映画『ジョーズ』のイメージが大きいのではないでしょうか」
ちなみに、『小学館の図鑑NEO 魚』によると、水面から頭を出してえものを襲うことができるのは、ホホジロザメだけだとか。

サメが頭を出してガブッとくるイメージが強いだけに、これはちょっと意外である。さらに疑問なのは、サメの口がずいぶん奥まったところにあること。
鼻(というか顔)は出っ張っているのに、ずいぶん口が奥にある。
これではずいぶん不便そうで、どうやって噛み付いているのか不思議だったのだが、いろいろ調べてみると、『おもしろくてためになる魚の雑学事典』(日本実業出版社)のなかに、こんな記述があった。
「獲物に襲いかかるときは顎が自在に外へ飛び出す仕掛けになっている。顎骨は短いが力学的には優れており、クラドセラケの顎がハサミだとすれば、現生種の大部分は針金が切れるペンチにたとえられるほど、発揮できる力が異なっているのだ」
自在に飛び出すとは、ずいぶん便利な顎だが、それでも人を襲い放題というわけではない。

ちなみに、ハチも「人を刺す」というイメージがあるが、実際に刺すハチとして気をつけなければならないのは、世界中で10万種以上もいるといわれるハチのなかで、スズメバチ・アシナガバチなどのごく一部の種類だけ。
これらもよく知られた話ではある。

サメもハチも、実際に事故がときどき起こっているだけに、「そんなに人を襲わない」と確率の問題だけで片付けることはできないけれど、それでも偏見はけっこうあるみたいです。

(田幸和歌子)